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「二次創作やめて」はワガママではない

2020年11月24日の「はてなブログ」に「ファン活動としての二次創作を許容しなければならない文化と空気感を打破したい」というタイトルのブログが掲載された。私が閲覧していてまもなく記事が削除されたが、手元にPDFで保存している。かいつまんで私の理解を言えば以下のようになる。「自分の作品の二次創作はしてほしくないのに、二次創作が世間に「してもいいもの」として認知されているがゆえに、それを言ってしまうと仕事が来なくなる恐れがあるという現状がある。知られていないだけで、「自分の作品を無断で二次創作してほしくない」という漫画家や小説家はいるかもしれない、ことを考えてほしい」

私はこの意見に賛同する。よく、声を上げてくださったと感銘を受けている。法的な根拠もある。何より、自分が作ったものを、勝手に第三者に好きなように扱われる筋合いなどない。それは決してわがままや狭量ではない。当然のことだ。

著作権法との関係

まず、「はてなブログ」の記事でいうところの「二次創作」は、「ある作品の作者に無断で制作された、その作品の内容を使った同人誌(以降、「無断の同人誌」とする)」が対象であり、公式の映画化やアニメ化作品、グッズは含まれないものと考える。また、著作権法上は「二次的著作物」が該当するが、本記事では検索ワードも考慮し、「二次創作」という言葉を使用する。

「無断の同人誌」は、OKかNGか。著作権法的にはNGである。著作者には「無断で○○されない権利」があり、「無断の同人誌」は著作者の専有する「翻案権(ほんあんけん)」を侵害する可能性が高い。もしくは著作者人格権にあるところの「同一性保持権」にも抵触する可能性もある。著作権法には以下の条文がある。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

ならばなぜ、「無断の同人誌」制作者が逮捕されないか。これはもう漫画や小説の作者(著作者)、出版社(著作権者)が「黙っている」からである。逮捕、起訴されないから「無罪」ではない。違法であり罪であることに変わりはない。

はてなブログのコメントには、「訴えればいいじゃないか」という意見も散見された。それも可能だが、訴訟には相当な労力が必要である。費用もかかるし、仕事の時間も削られる。何より精神的に相当なダメージがかかる。簡単に「訴えろ」などと言うものではない。

作家を取り巻く状況

ブログの書き手は、「すべての二次創作をするな」とは言っていない(「著作権を守ってください」とは仰っているが、作者のOKさえあれば著作権法もクリアできる)。作者によっては嫌な人もいる、ということを言っているのだ。そして、「嫌だ」と言える環境を作りたい、と言っているのだ。私自身、少年画報社のコンビニコミックシリーズ『思い出食堂』シリーズを通じて、多くの漫画家さんと交流できるようになったが、わかってきたのは「作家は孤独である」ということだった。よっぽどの売れっ子さんならわからないが、トラブルがあったときに、出版社が後ろ盾になってくれるとは限らない。むしろ、独りで闘わなければならないのだ。

「匿名で言うな」という意見もあるが、すぐに書いたものが拡散され「あの先生はいいって言った」「嫌なら創作するな」という心ない意見が投げつけられるネットの世界で、実名をさらせというのは相当に酷ではないか?

現状との兼ね合い

今や「コミケ(コミックマーケット)」は巨大な一大マーケットである。方々で指摘があるように、同人誌制作を経てプロになった作家さんも多い。そのような業界に恩義を感ずる作家さん、またそこで扱われる作品を、楽しまれる作家さんも多いことだろう。自分の作品は好きに使ってもらっていい、という作家さんの権利ももちろんある。

断っておくが、私もかつて「無断の二次創作」をした。『幽遊白書』などの漫画、『サムライスピリッツ』『キングオブファイターズ』など格闘ゲームのキャラクターで「無断の同人誌」を作ったし、コミケで売った。絵やコマ割りの練習になったし、仲間もでき、自分の創作活動の礎になったと思っている。しかしこのように当たり前のように他人の作品に依拠できる環境は、特殊であると言っていい。私もおとがめから逃れたに過ぎないと、今更反省もしている。二次創作を経ない作家さんも多くいらっしゃるはずなのだ。

私と二次創作

「ファンアート」として、SNS上で、既存の作品のキャラクターを描いたイラストが投稿されることがある。最近(2020年5月頃)、『美少女戦士セーラームーン』の”うさぎちゃん”の絵を描いてTwitterやInstagramに投稿する、ということが流行ったことがあった。もちろん原則としては元となる絵についての「複製権」また「公衆送信権」の侵害となる可能性が高いが、私は「コミケで二次創作が黙認されている現状を考えるなら、この企画は問題にはならないだろう」という理屈でTwitter、Instagramに参加した(「ファンアートはどこまで許される? 『セーラームーン』の「#sailormoonredraw」について弁護士に聞いてみた」) 。ちなみに本記事の画像が私の描いたうさぎちゃんである。

この企画が問題になったという話は今のところ聞いていない。だが、それはあくまで結果の話である。正直に言って、私も人の作品を真似して描くのは好きだし、楽しい。ジブリのように、真似て描いて投稿していい作品、イラスト、漫画がもしあるのであれば、それらが明確にわかるようになればいいと思う。またそれは「空気」や「文化」でなく、あくまで作者個人の気持ちによるものであるべきだ。

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