横山ミィ子

一級知的財産管理技能士(コンテンツ)/特許事務/G・オーウェル研究/少年画報社「思い出…

横山ミィ子

一級知的財産管理技能士(コンテンツ)/特許事務/G・オーウェル研究/少年画報社「思い出食堂」シリーズ(時々)/長澤唯史先生著『70年代ロックとアメリカの風景: 音楽で闘うということ』イラスト/ HP http://kobutachan.jp/インスタMiko YOKOYAMA

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クラシックギタリストから見るフラメンコ 菅沼聖隆サロンコンサート

「大御所」とか「重鎮」という敬称は、経験年数が長い人に与えられることがあって、真っ当に育った才能ある若者のそれには及ぶべくもない実力の人も混じっている――そんなことを考えたのはこの若きギタリスト・菅沼聖隆氏の演奏に出逢ったからだろう。プロフィールや活動内容に村治昇氏、福田進一氏など日本トップのギタリストのお名前が登場して目を引かれるが、もはやそのビッグネームを引き合いに出すまでもない、確固たる技術とパフォーマンスを持っていた。 コンサートは2部形式。1部はクラシック、2部は

    • 金の卵を産むガチョウを殺すのは

      漫画家、芦原妃名子先生が、ご自身の漫画『セクシー田中さん』のドラマ版にあたり、トラブルが起こっていると知ったのは1/28頃だった。その翌日だったか、たまたま開いたXのタイムラインに何かしら不穏なものを感じた。死亡。自殺。一瞬周囲から色彩が失せた思いがした。Xのアカウントを消したというのはその前に聞いていた。トラブルの告白をしたことで、より辛い思いをされているのだろうとは思っていたが、このような結末になるとは思っていなかった。ダムなんて、怖くて一人では行けない場所だ。どれほど絶

      • Speech Leafー 鈴木アツト作・演出、舞台作品『みえないくに』

        本作品からは、「翻訳という仕事を通じて世界と人をつなげること」「世間(ことにSNS)で叩かれていることに抗うこと」「利益追求と意義あるものを生み出すことのジレンマ」「素晴らしい農産物や資源があり、文化と言葉があるのにも関わらず、大国に搾取されている小国」そして「言葉への希望」など、問題意識が目一杯詰め込まれているのが感じられた。 ロシアのウクライナ侵攻が始まった時の、日本での反応もモチーフの一つになっている。私は侵攻の前からロシアのアニメーション作品にとても興味を持つように

        • 否、やめない。漫画描くのは辞めない。

        クラシックギタリストから見るフラメンコ 菅沼聖隆サロンコンサート

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        • 書籍レヴュー
          13本
        • 映画レヴュー
          10本
        • 著作権
          8本
        • ジョージ・オーウェル
          3本

        記事

          漫画描くのやめようかな、と思ったり…

          漫画描くのやめようかな、と思ったり…

          詩や短歌、小説といった文字だけで編まれる文学というものに、ときおり畏怖する。私は絵や漫画を描くが、文学作品にはとてもかなわないと思う時がある。谷川俊太郎氏は「詩はいつもメロディに恋している」と言う。自分の世界におごらず、他の世界に憧れを持てばこそ、磨かれるものもあるかもしれない。

          詩や短歌、小説といった文字だけで編まれる文学というものに、ときおり畏怖する。私は絵や漫画を描くが、文学作品にはとてもかなわないと思う時がある。谷川俊太郎氏は「詩はいつもメロディに恋している」と言う。自分の世界におごらず、他の世界に憧れを持てばこそ、磨かれるものもあるかもしれない。

          「二次創作やめて」はワガママではない(2)

          時間が経ってしまったが、以下の記事を読んでショックを受けた。 この記事を読んで映画『フィールズ・グッド・マン』を思い出した。自分の描いたキャラクターが、世の中で勝手に使われるようになり、人種差別的なイメージとともにキャラクターを拡散し、最終的にヘイトシンボルとして名誉毀損防止同盟という団体に認定されてしまったというものだ。引用ばかりになって恐縮だが、以下は映画について書いた記事である。 もちろん日本の同人誌業界での二次創作問題とは異なるものだが、「他人に自分のキャラクター

          「二次創作やめて」はワガママではない(2)

          問わず語り 横山ミィ子『蛤天丼』

          2023年9月19日発売の少年画報社コンビニコミック『思い出食堂 Bランチ ナポリタン編』に、10ページの読み切り漫画作品『蛤天丼』を掲載して頂いた。どうぞよろしくお願いします。 小学生の女の子二人が主人公だが、描きたかったのは彼女たちの周りにいる大人たちだった。子どもたちを見つめ、きちんと向き合い、言葉でもって説得できる大人たちを登場させたかった。大人というのは、別に子供たちのことを二の次で好き勝手しているのではなく、やむを得ない事情もあるものだ、という側面である。またそ

          問わず語り 横山ミィ子『蛤天丼』

          岡和田晃さんの評に興味を惹かれ、藤本紘士さん『鳥の餌を盗む』を読みました。文学という文字が織りなす世界の底力を、改めて感じています。残酷な現実を描きつつも、思い出すたびに胸が締め付けられるような、光ある余韻を与えてくれる作品です。 https://www.keikousyaweb.com/おしらせ-1/図書新聞に載りました/

          岡和田晃さんの評に興味を惹かれ、藤本紘士さん『鳥の餌を盗む』を読みました。文学という文字が織りなす世界の底力を、改めて感じています。残酷な現実を描きつつも、思い出すたびに胸が締め付けられるような、光ある余韻を与えてくれる作品です。 https://www.keikousyaweb.com/おしらせ-1/図書新聞に載りました/

          著作権について語る法律家や専門家には、ぜひ、ご自身のお好きな著作者、著作物のお話も大いにして頂きたい。クリエイターや著作物ユーザーにとって「この人の話を聞きたい」と思わせるのは、法律の知識とともに、文化活動や芸術作品への愛とか敬意とかの「まなざし」の濃さだと思う。

          著作権について語る法律家や専門家には、ぜひ、ご自身のお好きな著作者、著作物のお話も大いにして頂きたい。クリエイターや著作物ユーザーにとって「この人の話を聞きたい」と思わせるのは、法律の知識とともに、文化活動や芸術作品への愛とか敬意とかの「まなざし」の濃さだと思う。

          スペインの「発見」とフラメンコ

          マティス展が来るという、2023年の暑く熱い上野公園に足を踏み入れた。といっても目当ては国立西洋美術館の企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」である。その規模は決して小さくなく、セルバンテス『ドン・キホーテ』の挿絵、ベラスケス、ゴヤ、ドラクロワ、ピカソ(小さい作品だがど迫力!)、などスペインを代表するアーティストたちの作品が一堂に会する。私が行ったのは土曜の午後だったが、同日にかなり賑わっていた東京国立博物館の『古代メキシコ展』と比べても、穏やかに観覧でき

          スペインの「発見」とフラメンコ

          トップバイラオーラ渾身の作品 内田好美フラメンコ舞台作品『孤独生vol.2/10~対価~』

          ぐるりと扇状に設置された客席について開演を待つ。流れるのはニルヴァーナのアルバム『Never Mind』で、カート・コバーンの唯一無二のエネルギーと存在感にしばし思いを馳せる。内田好美氏のソロ舞台作品の1作目は2022年5月15日に行われた『孤独生」vol.1/10~覚醒~』であった。私が彼女に師事した2006年頃から、いくどとなく彼女のバイレ(舞踊)を観てきたが、1回目の公演では、そのバイレのレベルのあまりの飛躍に驚いた。もう彼女は日本トップのバイラオーラ(舞踊家)と言って

          トップバイラオーラ渾身の作品 内田好美フラメンコ舞台作品『孤独生vol.2/10~対価~』

          川上弘美『真鶴』を読む。主人公の周りにしか焦点が合っておらず、題名にもなっている実在の町がゆらゆらとしか描かれていないのが気になる。私が先月訪れた真鶴町では、初対面の方とよく喋った。地元のコーヒーが美味しかった。坂のきついあの町の、まだ歩いていない道を歩きにまた訪れるつもりだ。

          川上弘美『真鶴』を読む。主人公の周りにしか焦点が合っておらず、題名にもなっている実在の町がゆらゆらとしか描かれていないのが気になる。私が先月訪れた真鶴町では、初対面の方とよく喋った。地元のコーヒーが美味しかった。坂のきついあの町の、まだ歩いていない道を歩きにまた訪れるつもりだ。

          名古屋・大須の「描ける漫画喫茶」漫画空間さんにて、著作権のお話をさせて頂きます。個別のご相談はお受けできませんが、著作権の理解へのヒントをご提供できればと。 詳細はリンク先のブログをご覧ください。オンライン配信は開催時間のみです!https://ameblo.jp/mangakukan/entry-12798819262.html

          名古屋・大須の「描ける漫画喫茶」漫画空間さんにて、著作権のお話をさせて頂きます。個別のご相談はお受けできませんが、著作権の理解へのヒントをご提供できればと。 詳細はリンク先のブログをご覧ください。オンライン配信は開催時間のみです!https://ameblo.jp/mangakukan/entry-12798819262.html

          漫画という最高の表現 井上雄彦『SLAM DUNK』

          2022年12月に封切りされたという映画『THE FIRST SLAM DUNK』が、2023年4月現在でもまだ公開中である。文句なしのロングラン、大成功といえよう。私は1月に鑑賞したが、「井上先生のあの絵が動いている」という映像は強烈な体験であり、しばらく興奮冷めやらず、原作全巻に戻るに至った。 リアルタイムで読んでいたのは中学から高校時代だったが、当時ひたすら「カッコいい」「面白い」という感想しかなかった当作品も、今読み返すとその魅力の秘密に大いに気付かされている。あく

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          実演家~パフォーマー~への讃歌

          法律を勉強していると、架空の人物のことなどを「甲」「乙」と呼んだりするが、「実演家」という言い方もそれに負けず劣らず顔の見えない印象だ。著作権法において、著作者は「著作物を創作する者」とされ、実演家は「俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者」とされている。言い換えをしてみると、「役者、ダンサー、ミュージシャン、指揮者、コメディアン、噺家(はなしか)」などのパフォーマーの皆さんのことである。改めて見ると、実演家は著作権法の最初に言及されてい

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