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ほんの小さなことでも…

まだまだ暑い日が続いていますが、朝夕に吹く風が涼しさを帯びていたり、道端で聞こえる虫の音に秋の兆しを感じ始めた今日このごろ。

春から勤め始めた児童福祉施設での日々にもだいぶ馴染んできました。


今日は子どもたちと生活を共にしている中で気づいたことや感じたことを綴ってみたいと思います。

日々欠かすことのできない食事。
時々、子どもたちと一緒に食材の買い出しに行きます。

「きょうの夕食は何が食べたい?」

「好きな物を選んでいいよ」

そう聞くと

「なんでもいいです」

「特にありません」

「んー何がいいですか?(周りの人の意見に合わせている)」

そんな返事が返ってきます。遠慮をしているのか、自分の意見を言うと否定されるかもしれない…という恐れなのか。そもそも自分の食べたいもの・好きなものがわからないのか。私との関係性もあるかもしれません。
心の中で様々な可能性が浮かびつつも、無理強いはせず、そのときは子どもが何も選ばないという選択を尊重します。

このように始めのうちは自分の気持ちを表にしない子も慣れてくるにつれ、少しずつ自分の気持ちを伝えてくれるようになりました。「あれが食べたいです」「これ、買ってもいいですか?」「それはあまり好きじゃないです…」と。

表情にも変化が現れるように思います。初めは警戒心からなのか、不安からなのか、どこか鋭い目つきをしていたのが次第に柔らかな表情、ふっくらとした目元になっていく。
また、会話をするときに伏目がちだったのが目を合わせて話をしてくれるようになる。笑顔や笑い声が増える。

生活に慣れてくると配膳や食器洗いを手伝ってくれたり、自発的な行動も増えてきます。(作ってもらっているのに申し訳ないからという気持ちで最初から手伝ってくれる子も中にはいます)

子どもたちと関わる中で嬉しいことがありました。それは私が作った料理を「おいしい」と言ってもらえたこと。入職前、業務の中の一つに食事作りがあることは聞いていましたが、いざ作るとなるとやっぱり初めは不安でした。
普段は作らない人数分のごはん。お米は何合炊いたらよいのか、汁物の量はどれくらいにしたらよいのか。もう、初めてのことづくしです。献立も各々の好き嫌いやアレルギー、食事量にも配慮しながら考えなくてはならず、きゃー、大変。
なかなか思い浮かばないときはクックパッドさんやクラシルさんにいつもお世話になっております(笑)食材名を入力するだけで色んなメニューが出てくるなんて、素晴らし過ぎます。

出来上がった料理を食卓に並べていよいよ実食のとき。
「作ってもらっているから文句は言えない」多くの子はそう思っているようで、食事中はネガティブな発言はしませんが、よーく反応を見ていると口に合わなかったかなぁということを察します。
口にしたときに眉をゆがめたり、一口しか箸を付けなかったり、その子の好物を食べているときの反応と全然違ったり・・・。その時の体調もあるかもしれません。
心の中では具体的な感想を聞いてみたい・・・と思いつつ、でもあれこれ聞くのも子どもたちの負担になるのではないかと思い、いまのところ聞くことはできずにいます。苦笑

ここにくる子たちは何かしらの事情を抱えていて、取り分け大人に対する強い不信感を持っているように感じます。

いままで
自分の気持ちを抑圧してきた
存在までもを否定された
養育自体を放棄された

その事実を目の当たりにしたとき、目の前にいる子のこれまでを思うと、自分に何ができるのだろうかと打ちのめされそうになりました。

それでも、私にできることは小さくてほんの少しかもしれないけど、そのことを模索していきたいとも思います。

「ほんの少し」

きっとそれでいいのではないかと最近は思うようになりました。なんでもでかんでもやらなきゃ、自分にできないこと、欠点は克服していかなければ・・・そんな完璧主義な考え方が長いこと自分自身の心を縛り付けていましたが、子どもたちを支える人は私だけではありません。

専門家や関係機関の方々、ボランティアで施設に来てくださる方々。色んな考え方や価値観をもつ人がいて、そしてそれぞれ得意不得意があって。自分が不得意なことを補ってくれる人はきっと誰かいるはず・・・。

それに自分が長らく欠点だと思っていたことがプラスに働くことがある、ということも知りました。会話が苦手、口数が少ない・・・そんな欠点も「沈黙する時間が苦ではない」、「無理に喋ろうとしなくてもいいと思える人」そんな風に思ってくれる人がいて、物の見方が広がりました。

私が来る前に施設にいた子どもたちの記録を読んでいると

「自分の意見を言ってもいいんだと思えた」

「自分のことを受け止めてもらえた」

「こんな自分にもやさしくしてくれた」

そんな言葉を残して次のステップへ進むこどもたちがいました。

目の前の子どもたちにとって施設にいる時間は人生の中のほんの一握りの時間でしかありません。
だからこそ、日々の中の何気ないことを大切に、これからも日々こどもたちと向きあい、その心に寄り添いながら共にいたいと思う。
子ども達の未来がより良い方向へと繋がるよう、心の中で願いながら。

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