手紙のあて先
大人になった今でも、何かの拍子に心の中に引っ掛かるものを感じることがあります。そこから繋がる記憶はどういったものなのか、そのときどんなことを感じていたのか。
出来事を覚えていても、
そのときの感情を思い出せないことがあります。
出来事を振りかえりつつ
「もしかしたらあのとき、こう感じていたんじゃないかな?」と
今の私とこどものわたしと、心の中で対話しながら、そのときの気持ちを「言葉」に結び付けるお手伝いをする。
今回は8歳ごろのわたしと向きあってみようと思います。
(文中ではこどもの自分を「わたし」、今の大人の自分を「私」と表現しています)
(最初の記事はこちら)
とある日の授業で「手紙」の学習をしていました。
実際に手紙を出すポストを見に行ったり、封筒の書き方を勉強したりして、では今度は実際に手紙を送ってみましょう!ということになり、それぞれ次回の授業までにはがき(もしくは便箋と封筒)、切手、手紙を送るひとの住所を用意してくることになりました。
わたしは誰に手紙を書こうかな…?
ん~・・・
そうだ
おばあちゃんちに書くのはどうだろう。
家に帰り、母に相談してみることに。
「あのさ・・今度、学校で手紙書くんだけど、だれに書いたらいいかな?(おばあちゃんち・・)」
心の中では祖父母へ書きたいと思いつつも、言い出すことができない。
すると
「自分に出せば?」
と、母からの返事。
・・・・・
思っていることを言えなかったことと、予想外の返事にショックを受けてしまいました。
そのときの感情を言葉にするなら
「悲しい」でしょうか。
今思えば、「学校の授業で手紙を書くから、おばあちゃんちの住所を教えてほしい」って言えていたら、母もそんな冷たい返事をしなかったと思います。
書いていて気がつきましたが、「おばあちゃんちに手紙を書きたい」という自分の気持ちを持ちつつも、母に話をするときには「だれに書いたらいいかな?」と言っているあたり、自分で決めるのではなく、母に決断を委ねていたように思いました。
自分で決めることが不安だったのか。
「自分じゃできないからやって」と母に対する甘えだったのか。
母の望むことが正しいと思っていたのか
自分の気持ちを否定されるのが恐かったのか。
手紙を書く授業の当日。
クラスメイトの中には遠い親戚に手紙を書く子もいて、自分宛てに書くことになってしまった自分がみじめで恥ずかしいような、悲しいような、そんな気持ちだったと思います。
自分に書くことなど思い浮かばないので、中身が空のままの封筒を提出するも、「中身が入っていないよ?(先生が確認するため、封はしていませんでした」と指摘され、どうしたらよいかわからず、自分の席で泣いてしまいました。
友達が心配して声をかけてくれてなんとか立ち直り、作業を再開することができました。切手の貼り方を教えてくれたり、完成するまで見守ってくれたり…やさしい友達ばかりでした。
結局、自分の家の住所しか知らなかったので、手紙は母宛てに出すことになりました。
便箋になんて書いたかは忘れてしまったけれど、手で涙を拭いながら書いていたわたしの姿の記憶があります。あと便箋と一緒に拾ったどんぐりを入れたことも。笑
後日、手紙は無事に母のもとへ届き、それを受け取った母から
「ありがとう☆」
とお礼を言ってもらえましたが、なんだかあまり心から喜ぶことができませんでした。
相手の様子を窺ってしまい、思っていることを言えない。
大人になった今でもそういうところがあります。
どうやら今に始まったことではないみたいで。
本音を言えなくてうそをついていたこともありました。例えば、具合が悪いのだけど、そう言ってしまうと母が心配してつらそうな顔になる。わたしは心が痛むような思いになってしまう。だから言えない。
その内に母から、うそをつく子はきらいです、って直接ではなく手紙だったかと思うのですが、言われてしまいました。
上記のうその例は唯一覚えてるものなので、周りを困らすようなことを言っていた可能性もあります。こういうことはちゃっかり覚えていないんですね…。
こんな風に書くと母が悪者に見えてしまいそうで、書こうか迷ったのですが…あくまでも「過去の出来事」であるだけです。
内なる自分と向き合うときは
「自分自身も含めて、だれかを責めることをしない」
ということを意識しています。
そして
そのときのわたしに、今の私なら
どんなふうに寄り添ってあげられるだろうか。
思い浮かべてみます。
わたし「・・・・(しょんぼりして今にも泣きそう)・・・手紙かくとき、お母さんに聞いたら、自分にかけば?って言われた。」
私『そっか。お母さんにそんなふうに言われちゃったんだね。』
「・・・・・うん。」
『思っていたこと、言えなくてつらかったね。』
『かなしかったね。』
「・・・・・」
『それでも、授業で最後までお手紙を書いたんだよね。よく、がんばったね。』
「そお?・・・」
『うん、がんばったんだよ』
ひっく・・ひっく・・
私は、小さなわたしの頭をそっとなでてあげました。
すると小さなわたしは堰を切ったように、泣いていました。
しばらくして、泣き止んだわたしが
「今度おばあちゃんちに手紙、書きたいな。」
『いいね!あ、住所はわかる?』
「わからない。今度はちゃんとおかあさんに、おばあちゃんちの住所教えてっていうね」
『そうだね。うん、ちゃんと教えてくれるよ』
「うん!」
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