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月が欠けたところに見えるもの/幸せと未来について考えた

半分欠けた月がぽっかりと浮かんでいた。

彼と2年以上同棲した家を出ていく決意をしたものの、後ろ髪惹かれる思いがある。

昨日までは、私が家を出ていくのは自分のこれから先の未来、選択肢のためだとばかり考えていた。

最近よく通っているカフェのオーナーに自分の話をした。

彼女は独身で今年50歳になるそうだ。

15歳年下の親しい男性がいるらしい。

毎日、カフェでお客さんと話すことを幸せだと話す。

私の彼は、彼女と同い年だった。

「彼だってこの先、好きな人ができて結婚することがあるかもしれない。

彼のことを大切に思っているなら、彼の人生のことも考えてね。」

雷が落ちたようだった。

私は自分のことしか考えていなかった。

互いの幸せのために、一緒にいない選択をする。

そのことの本当の意味にふれたような気がした。

彼との関係を友人何人かに相談したけれど、みな、私の考えに共感してくれた。

だから、なんとなく自分は正しくて、彼のせいで悲しい気持ちになっているとばかり思っていた。

「彼の人生」という視点に立ってみることができていなかったのだ。

彼女の言葉は、そのことに気づかせてくれた。

同棲を続けるかやめるかをずっと迷っていたけれど、今度は大丈夫。

停滞した今の状況から、私も彼も抜け出すことができる。

一時は、きっとさみしいだろう。

でも、お互いが幸せに生きていくための大切な一歩であることは間違いない。

私は店をあとにした。

彼と一緒に購入を決めた車に乗り、家路につく。

二人で何度も通った道を走る。

一緒に買い物したスーパーに立ち寄った。

彼と過ごした場所が、涙でにじんで見えた。

そこには、二人で過ごす幸せな未来を夢見ていた自分がいた。

家に帰ると、「いい時間を過ごせた?」と彼が言う。

私はうなずく。

リビングでパソコンを開くと、彼のいびきが聞こえてきた。

なぜかあたたかい気持ちになってほほえんだ。

うるさかったのに。

何気ない一つ一つのことは、実は大切なことだった。

その認識を私たちは何度くりかえすのだろう。

失うとわかると気づくなんて、本当に皮肉だ。

半分欠けた月。

欠けた部分に、これから先の未来を透かしてみた。

数か月後私が、彼が、幸せそうに笑っていた。

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