Restore … what?(何を復元しているの?):『ガラスの花と壊す世界』の玉種

〈目次〉

《目次》
0 (はじめに)   
1 透明なガラスの輪郭
2 ガラスの物語   
3 ガラスの世界の玉種
4 ガラスの屈折   
注記         
【おことわり】
 このエントリーは、『ガラスの花と壊す世界』本編の内容(ならびに核心部分)について触れています。ネタバレを好まない方は視聴後にどうぞ。
 また、内容について触れますが、あらすじや感想をまとめているものではありません。観賞された方、ならびに視聴にあたってポイントを予習したい方などに向けられたものとなっています。悪しからずご了承下さい。

0 (はじめに)

 ガラスの器を作るとき、細い管からふーっ、と息を吹き込んで膨らませる工程があることはよく知られているだろう。このとき、管の先にとられている熱され赤く溶けたガラスのことを玉種を言うそうだ。この玉種に息が吹き込まれ、回転しながら手を加えられているうち、いつの間にか玉種とはまるで違う、美しい色や形となっていく。こういったガラスづくりの工程を扱ったアニメもある(※)一方で、アニメそれ自体の作られ方をこの工程に模して考えることもできるだろう。それは、全体のアイディア(=玉種)を膨らませ、そして美しい器(ストーリー)を創り上げる……といった具合だ。器の中には、きっと創り手のメッセージがあふれるほどに入っているに違いない。
 こんなイメージで、『ガラスの花と壊す世界』について考えてみたい。器の美しさ自体についてはそれぞれ観る者の受け取り方に委ねるとして、ここでは玉種と器のナカミ、すなわち、この物語の核にあるものと、そのメッセージについて見ていくことにしよう。

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