幻想

すらっと縦に伸びた三角形のグラスは、
気取った素振りを見せない凛とした姿が美しい。

アイスコーヒーの冷たさから生まれる水滴は、
自分が何者であるのか分からないまま、静かに流れ落ちてゆく。


私はコーヒーの中に
ミルクを落とす瞬間が好きだ。

深い茶色の世界に
真っ白な細い糸を垂らす。

弱々しい糸はゆっくりと、
深く行き着くところまで潜っていく。


尾ひれは彗星のように
ぱっと花を咲かせて漂う。


それは万華鏡を見ているかのように
静かに回る。


ゆっくりと、姿を変えながら、
茶色い世界に溶けてゆく。
グラスの中は少しだけ優しくなった。

こんな些細な時間の中にも、
何かが生まれては消えてゆく。


混ざり合い
新しい何かを共につくりだす。


私は贅沢な時間を一番近くで見ている。


読みに来てくださったり、お友達になっていただけると、とってもうれしいです。