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妊婦の転職活動

私は北欧ノルウェーで、ITスタートアップのプロダクトマネージャー(PM)をしています。いわゆるワーママというものに分類され、旦那さんともうすぐ3歳になる子どもと生活しているわけですが、ただいま妊娠中でもうすぐ4人家族になります :D

今回のNote記事には、年末あたりに行った転職活動について書き留めることにしました。
妊婦中後期の妊婦が転職活動した話は、日本ではあまりないでしょうし、ノルウェーでもほとんど聞かないので、自分のための記録はもちろんですが、誰かの参考になれば幸いです。

さて、まずは、自分がおなかの大きな妊婦であるということは、ひとまず置いておき、、

転職活動をするに至った背景

さらっと今回転職活動に至った背景をかいておきたいとおもいます。

PMの具体的な仕事内容については、以前のnoteに書いてみたわけですが、私自身その後さまざま社内外で知識や経験を得て、新しい成長の機会を求めるようになりました。成長の機会を求めるにあたって、まずは社内を検討するわけですが、社内では難しいように感じられたのが主に以下の理由です。

  • 今の勤め先であるスタートアップでは、社内にPMのポジションが私のポジションのみであり、PMとしてのスキルをもつメンターのような人は不在

  • ずばり組織体制及び組織文化がPMの成長機会を阻害する

手当たりしだい、とにかくPMとは何かを学んで実践することに2年間注力してきた私にとって、具体的なフィードバックが得られる環境に身を置くことこそが、今後のキャリアのためには最重要だと考えました。

そんなわけで、転職活動をするにあたって、自分の今までのキャリアと思考をマッピングしました。
(自分のことって案外わからないものですよね。。)
今までどんなスキルや経験を身につけてきて、何にワクワクして、これからどうなっていきたいんだろうか、などなどと書き出して考える機会を持ちました。
そもそもPMの職種なのか、もっと絞った専門性が欲しいのか、人のマネージメントをしたいのか。。などなど、などなど、、

そして、ある程度興味のある分野が明確になって、今の自分の弱みや強みも理解した状態で、重い腰を上げました。

妊婦としての転職活動

ノルウェーでの法律や権利

ノルウェーでは、妊婦であることで採用プロセスが不利になってはいけないことが法律上で明記されていますし、もちろん妊娠を理由にした採用取り消しも違法です。
妊娠している候補者が採用されなかった場合は、その候補者は応募先の会社に理由を求めることができますし、採用されたほかの候補者の職務履歴書の開示請求をして比較し、説明を求めることもできます。(あくまで権利です。)
また、妊婦である候補者は、妊娠していることを採用過程で話す義務はなく、契約上の雇用の4週間前までに妊娠を伝える必要があることになっているようです。
つまり、ノルウェーで一般的な雇用契約の解約期間が3か月なので以下のようなことが起きます。

雇用者側が採用通知を12月末に出したならば、4月からその候補者が働いてくれるものと思って会社やチームの予定を組むわけです。
しかし、その候補者は4月に出産予定であるとします。
3月末まで妊娠や出産のことを雇用者側に伝えなくてよいわけです。
実際に産休育休から復帰するのが一年後なんかになってしまうわけで、雇用者側が4月から働いていくれるものと思っていたら、なんと一年後になってしまうという。

どうでしょう。

さすがに妊婦の候補者にこんな権利があっても、雇用者にここまで迷惑をかけてしまったら、育休明けから新しい会社でうまく働けるか、チームに冷ややかな目で見られないかと不安になるものじゃないでしょうか。

私は仕事が大好きなので、自分のキャリアのこのタイミングで「妊婦である」という事実が、なんとも複雑に思いました。
家族が増えるのは嬉しく、望んでいたことで、大変ありがたいこと。こればかりは予定しても努力しても思い通りにいかない難しいことだと思っているので、子どもを無事に出産して育てるのがキャリアより優先したいというのが私の今の考え方です。
ただ、女性のライフステージとキャリアや自分の成長の組み合わせで悩まされるのは、当たり前のようだけど、当たり前なのか?という複雑な気持ち。
この当たり前に対する疑問は、男女平等や女性の社会的な立場や権利を尊重するノルウェーで、ある程度生活したからこそ芽生えたのかもしれません。

さて、妊婦であるというこの事実、
雇用者になりえる会社とのコミュニケーションにてどうするか。


私の転職活動と周りの声

(転職先候補をどのように選んだかは今回のテーマとずれるので割愛します。)

転職活動及び採用プロセスのどのタイミングで会社に妊娠を告げるか、という課題。
私自身、ノルウェーのサイトでいろいろ調べたのですが、なかなかベストプラクティスというものがないようです。労働組合にも問い合わせましたが、それでもこれが正しいということはないようです。

候補者にとって気持ちがいいのは、最初のインタビューの時点で会社側に伝えることですよね。すると会社側は初めから妊娠を知っているわけですから、候補者側が会社の雇用計画やその他計画に迷惑をかけることがなくなると、安心できるわけです。妊娠を言わずにいるのは、なんだか後ろめたさを感じてしまいます。

私は2つのパターンを取ってみました。
ちなみに、2社はどちらも採用プロセスがたまたま似通っていて、1次面接が人事面接、2次面接が応募ポジションの部長職との面接、3次面接がケーススタディとグループ面接のような流れでした。

1.2次面接の最後に伝えてみたパターン

1次面接でよい流れになり、念のためポジションの緊急性を確認したところ、すぐに入ってほしいが適性の合う人に入ってもらうことのほうが大事であるとの回答をもらい、安心。ここで、妊娠を伝えなかったのは、2次面接の面接官がHead of Productということで、PMのトップと話をする機会が得られるということ。それを逃すわけにはいかまい!と思ったからです。

そして、2次面接の連絡が来ました。
思った通り、面接を通してHead of Productが考えるPMに大切なスキルなど、学びの多い時間となりました。2次面接に行けて本当に良かった!!

2次面接の話の流れからは、面接官がそのポジションに期待している経験やスキルを私がすでに持っているということが理解でき、次のプロセスに進めそうな流れで非常に前向きでした。

次の採用プロセスはケーススタディです。
ケーススタディは内容が気になるし受けてみたい。。
が、しかし、ケーススタディを準備し評価する側(会社)の時間も、ケーススタディを受ける側(私)もたくさんの時間と労力を費やすことになります。
ということで、私は妊娠していることをあらかじめ考えていた通り、ここで伝えておこうと思いました。

そして、自分が妊婦であることを伝えたその瞬間、面接の空気が変わりました。

面接官は「おめでとう!!」と私に伝えた後、出産予定日はいつかと私に尋ね、私がそれに答えた後、2次面接終了となりました。

そして、その後しばらくしてから、ほかの候補者でそのポジションにもっと適性の合う方がいたという連絡をもらい、不採用となりました。

が、応募したそのポジションは彼らの採用サイトでその後も数か月オープンなままではありませんか。。

つまり、私は妊婦であることを理由に落とされた可能性が非常に高いわけです。さらに、妊婦であったがゆえに、採用プロセスにおいて、何が私にそのポジションのPMとして足りなかったのかさえ、具体的なフィードバックをもらえませんでした。

もやもやしますよね。

ただ、このようなことをする会社に勤めることにならなくてよかった、とも思えたので、もやもやした気持ちを消化できたように思います。

妊婦側に情報開示の権利があったとしても、実際にそれを求めて連絡するためには相当なエネルギーがいるので、そのようなことに労力を使うならば、さっさと自分が勤められる可能性のある違う会社に応募する人が多いのではないでしょうか。

2.契約書にサインしてから伝えてみたパターン

パターン1を経験してから、自分の身の回りの人(同僚、友人、家族)から妊婦の転職活動についてこんな意見を聞きました。

  • 妊婦であることを採用プロセスで言うべきではない

  • 育休で働き始めが遅れたとしても、安定した会社であれば問題なく待つことができるはず。短期の社員を採用しているわけではなく、長期で育成もかねての採用なわけだから。

  • 妊婦であることは契約書にサインしてからすぐに言うべき

  • 妊婦であるうちは転職活動すべきではない

  • (妊婦であることは)隠せ隠せ!

  • 妊婦であることは採用プロセスの始めで言うべき


そこで、パターン2。

パターン1同様に、人事面接の際にポジションの緊急性について確認しました。こちらも適正重視ということ、かつ、ビザのサポートなどで数か月働き始めが遅れることもよくあるという話を聞き、私の育休が大きくチームに迷惑をかけることにならないだろうと解釈し、予定通り妊娠の事実を伝えずに採用プロセスを進めることにしました。

2次面接に呼んでもらい、妊娠は告げずに面接を受けました。

結果、ケーススタディに進み、プレゼンテーションとグループ面接を経て、仮のオファーをもらいました。
私のリファレンス3名へもしっかりと電話面接があり、私の素性が明らかになったところで、正式なオファーをもらいました。

一次面接からオファーをもらうまでに話した人たち、学んだこと、プロセスはすべて素晴らしく、オファーをもらった際には、躊躇することなくサインしようと思っていました。

そこで、契約書にサイン完了。

さて、ここからどのタイミングで妊娠していて出産間近であることを伝えるか考えました。というより、悩みました。
参考にするものがないので、考えても仕方ない。果たしてどうしたものかと。すでに、とても理解のある会社だということは、採用プロセスを通してわかっていたものの、どうにか穏便に気持ちよく話を聞いてもらえないものか、と。そこで、妊婦であることを伝える文章をあらかじめ考えることにしました。

が、気持ちの準備が整う前に、将来上司となる人からウェルカムコールがあり、働き始めのプランをすでに時系列で話し始められてしまいました。

ここで言わなかったら迷惑がかかる!!

と、とっさに思った私は、とても楽しそうにプランを話している将来の上司の話を遮り、妊婦であることを事実として簡単に伝えました。

すると、一瞬明らかな沈黙がありました。

そして、いつ出産予定で、いつ育休明けの可能性があるのかと聞かれました。私がその質問に答え、妊婦であることを伝えられなかった理由を話し、理解してもらいました。そして、We can wait of course!と言ってもらい、私は心底安心。
その後、話題が妊娠から、採用過程での具体的なフィードバックに移りました。。

ウェルカムコールが終わった後、近くで電話越しに話を聞いていた旦那さんは、私に「お疲れ様!」、と。
そして、「たぶんなりうる限りでベストなコミュニケーションだったんじゃない?」と彼なりのコメントをくれました。

正解がないコミュニケーションであり、会社側の反応がどうなることやらものすごく不安だったので、無事に終えられてどっと疲れが出ました。


まとめ

妊婦であることを転職の採用プロセスで伝えると、男女平等や女性の権利が比較的尊重されている北欧ノルウェーであっても、差別的な扱いを受ける可能性があります。ただこれは、心理的にどうしても面接官に影響するのは理解できます。また、不採用が妊娠のせいだということを確証するのは簡単ではないですし、あまり自分の今後のためにもなりません。
が、契約を結んでから、妊娠を理由に無効にすることは(ノルウェーでは)違法です。

今後勤める会社に思い入れがあるほど、妊婦であるということを伝えるコミュニケーションはとっても精神的にしんどいです。しかしながら、やはりその会社でキャリアを積んで成長したいのであれば、契約書にサインし、採用が確実となってから伝えるのがよいのではと思います。

ノルウェーや日本に限らず、女性のライフステージとキャリアがなんとかうまいこといくような仕組み、文化、思想が形成されるとよいなと願います。


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ノルウェーに引越しました! 最近右が分かるようになってきて左はまだわかりません。 サポート、ありがとうございます!