好き と 価値
知らん間に東京藝大の学長になっていた日比野克彦さん。
20年前ほどに六甲ファッション美術館で日比野克彦展があり、日比野さんのWSを受けた。もんのすごく楽しかった。あまりに楽しかったので、その後の巡回展で行われた東京の目黒美術館でのWSにも参加した。
東京のWSでは美術館周辺の目黒川で参加者全員に担当の橋が分け与えられて、その橋までの間の右岸と左岸から気になったものをスケッチして、最後に橋の上に立って、そのふたつの共通点を言葉にして、そこから連想するものを絵に描くというものだった。
私はものすごく変な書体の家の表札と、タバコみたいに見える煙突が気になってスケッチをを提出した。
それぞれが提出した2枚のスケッチの間にある共通点を見つけて描く。私はそのふたつから「ひとつだけ」という言葉が出てきて、その言葉をイメージして絵を描くと、草原の中に一輪だけ咲いている赤紫色の花の絵になった。草原には同じような形の黄色やオレンジの花がいっぱい咲いてるが、でも、その花だけは赤紫色で、その一輪がパッと目に留まる。そんな絵を描いた。
そんな私の絵を見て日比野克彦さんはこんなことを話してくれた。
「煙突を見つけてスケッチする人は多いだろうし、表札を見てスケッチする人も多いかも知れない。だけど、煙突と表札のふたつをスケッチする人はだいぶ少ないし、そこから【ひとつだけ】という言葉を発する人は吉田さんだけかも知れない。ここでわかるのは、吉田さんが【ひとつだけ】と思うモノを大事にする価値観を持っていることだと思うんです。草原の中に咲いている一輪の花にハッとする価値観ね。それがわかると、これから何かしら壁にぶつかった時に、ちょっと自信になるかも知れないってことなんです」
そう教えてくれた。
日比野克彦さんの好きの究め方の記事よかった。読んでいて20年前に日比野さんが何気なく教えてくれたことを思い出せて嬉しかった。
私はたくさんの中から「ひとつだけ」って思えるものが好きで、そこに価値を見出せる才能があるんだなって思い出せた。
自分の中に力があるって思えることが私は1番教育
に必要なものだと思う。東京藝大の学長が日比野克彦さんというのは、改めて素晴らしいことだと思った。
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