食べ跡をアートにすることでコロナ禍でも需要が生まれた
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今日は、次の展覧会で展示する作品をつくっていました。2月に静岡県の富士市という地域で、わたしの他に3名の作家さんたちと展覧会に参加します。
制作といっても、今回は料理を提供するわけではありません。既に撮ってあるパーティーの食後写真を切り貼りして、レイアウト、そして、印刷を発注していました。
色々、印刷会社を試した結果、海外の会社に発注をしているのですが、制作費が値上がりしてしまって…痛いところです。
今回は5点ほどつくっています。
食後アートとは?
食後アートとは、わたしの創った料理をお客様に召し上がっていただいた後のアクリル板を写真に収めて、ウォールアートや飾り皿、スマホケースに転写するというものです。
“食後”というと、生ゴミのように受けとられる方もいらっしゃるかもしれませんが、カラフルなソースが絵の具のようで、抽象画のように見えます。少なくともわたしには、そんな風に見えています。
なので、部屋に飾っていてもカッコいい。
というのも、基本的には、お皿に盛り付けた料理の食後は作品にはしないのです。
食後アートの制作過程
わたしのパーティーの名物は、ライブペインティングのようにお客様の目の前で料理の仕上げをするというものです。
テーブル一面にアクリル板を敷いて、その下にコンセプトに合った紙や着物、他にも色々、飾ります。そして、その上にコラージュするように、料理を仕上げていきます。その料理の由来や物語をお話ししながら仕上げていきます。食材やその土地のこと、コンセプトや関わってくれた人たちのことを代弁者として、それぞれの想いをプレゼンテーションする感覚です。
そして、それをお客様に召し上がっていただくことで、作品が創られます。
食事の際には、「よかったら、子供みたいに手で食べて見てください。」とお伝えします。その方が、楽しいし、食べ物の食感をダイレクトに感じることができるからです。
すると、最初はお淑やかに食べていた方も、だんだん、色々なソースを試したくなって、あちこち満遍なく食べてくれます。
それは紛れもない、食欲そのものです。
そのエネルギーとか空気感は、その日、その瞬間に偶然集まった方々が作り出すものです。その行為自体がとてもロマンチックな気がしていて、わたしは食後が楽しみでなりません。
そうして、食べ進めていただくとアクリル板の下に飾ったものが浮かび上がってきます。
ただ、食べた跡を写真に収めるだけではなく、ちゃんとそこには人のエネルギーが込められているっていうのが、この作風の面白さだと思ってます。
そのため、「わたしの作品は、皆さんに食べていただくことで完成します。皆さんと一緒に創るアートです。」と参加型アート体験として食事の提供をしています。
ただの食べ残しとアートの境目
撮った写真が全てアートにできるかというと、そんなことはありません。
基準がいくつかあります。
一番は、汚らしくないか。
他人の食べた食べ物は、そのままではやっぱり気持ちの良いものではありません。ましてや、部屋に飾るものですから、美しいかどうかというのは大事な基準です。
また、それを見て、何か物語を想像することができるか、ということも切り取る時の基準になっています。
何にでも言えることかもしれませんが、“心がときめくか?”というやつです。
食後アートが生まれたきっかけ
食後アートが生まれたきっかけは、元々、単に自分の記録として写真を残していただけでした。
いつも、その都度のコンセプトから発想し、一度限りのメニューを考えるというスタイルで料理の提供をしてるため、パーティーが終わってしまうと、そのメニューは跡形もなく消えてしまいます。
どんなに時間をかけたり魂を込めてつくったものも、所詮は料理です。食べてしまったら何も残りません。むしろ、食べ残したものは生ゴミとも思えちゃう。
さらに、パーティーでは、いつもより食欲が控えめになってしまう方々も一定数いらっしゃいます。用意していたものが、想定していたよりも残ることも多かったのです。
でも、それがわたしには特別で良いものに見えていました。
そうして、全てを片付ける前に時間をとって、いつも食後のアクリル板を写真に撮っていたのです。
時々インスタグラムにはあげたり。それが一年くらい続きました。
そんな風に、パーティーをして、食後の写真を眺めたり、SNSにアップするというのが自分の中でルーティーンになった頃、コロナウィルスによって、料理を提供する機会が全くなくなりました。
パーティー以外にも、料理教室も休業になってしまいました。これからという時に、灰色な時代になってしまいました。
皆さんもご存知の通り、身動きの取れない時間がしばらく続きました。
きっかけは突然のLINE
そんな時、六本木でギャラリー&カフェをやっている知人から連絡があったのです。
そのお店は、月替わりでいつも違う作家さんが作品を展示するというコンセプトがありました。
ところが、コロナの影響で、次の作家さんが展示できなくなってしまったのです。「オープン以来、展示が途絶えたことがなく、困っている。」というものでした。
そして、「急なのはわかってるんだけど、何かできない?」と連絡をくれたのです。
確か、数年前一度か二度会ったことがあるくらいで、あとはSNSでしか関わりはない知人です。そんな関係ながらも、見つけて声をかけてもらえたのは有り難かったです。
もちろん、きっとわたしだけに声をかけてくれたわけではないだろうし、よほど困っていたから、“なんかできそうな人”ならばとにかく誰でも良かったのかもしれません。
でも、「なんかできそう」って思ってもらえたことで、機会をいただくことができたのです。
やってみるしか選択肢はなかった
当時は展示なんてしたことはなかったし、アートの人というわけでもなかったので、何も作品なんてありませんでした。
でも、「これは食後写真を作品として仕上げてみるチャンスかもしれない。」と思ったのです。
ただ、そのときキャンバスに印刷する度胸はなかったです。キャンバスを使って良いのは画家さんやちゃんとした作家さんだけというような気がしていたからです。
でも、何枚かはキャンバスにしてみることにしました。
あとは、お金もかけられなかったので、カメラのキタムラでA4サイズの写真プリントをして、Amazonで手に入る額に入れてみたり。スチレンボードという厚手のボードに貼ったり。
でも、自分は写真家でも有名アーティストでもありません。それだけではお客さんには絶対に何も伝わらないと思いました。
そもそも、コロナ禍で外出自粛が徹底している中、見てくれる人なんてほとんどいないだろうし、現地に行けないので在廊もできません。
偶然見てもらえてもパッと目に入るくらいなもので、「わたし」までたどり着いてもらえないだろうと思ったのです。
そこで、全ての作品にQRコードを付けて、読み込むとブログに飛んで、その作品が元はどんな料理で、どんな物語があるのかを自宅で読んでもらえるようにキャプションをつけました。ひょっとしたら、テイクアウトを待つ間に読み込んでくれるかもしれないと僅かな希望に託しました。
あとは、キャプションに、“力強いメッセージ”ともいえる大胆なタイトルをつけました。パッと目に入ったタイトルに、ほんの少しでも何か感じてもらえれば、それでも成果だと思ったのです。
以前から書き溜めていたブログのリンクを貼ったり、大至急、改めてエッセイを書いたり。これを超短期間でやりました。
どれくらいだったかな?二週間あったかな?
うろ覚えですが、そうして即座に取り掛かって、必死に何十点かを発送しました。
この時にどのくらいの人が見てくれたかはわかりませんが、何人か見に行ったと連絡をくれた都内在住の友人もいました。SNSにあげてくれたり。
もちろん売れるわけはないので、経済的にはかなりな痛手ではありましたが、それをきっかけに「うちでも飾ってみない?」というお声をいただけるようになりました。
自分自身も食後アートを少しづつレベルアップさせていくモチベーションになりました。
そうしているうちに、現在は、食後アートありきで料理を創るいうスタイルになったのです。
まだまだ、感染症の影響がおさまったわけでもないですし、売れっ子でもないですが。自分の感性を発表できる場に恵まれて、わたしと同じかそれ以上に「いいね」って言ってくれる人もいるのが嬉しい限りです。
そして、もっと嬉しいこともありました。
楽しい発想は誰かにきっと伝わる
以前イベントに来てくださったお客様がこんなエピソードを話してくれました。
なんでもやってみるものだ、と思った瞬間でした。嬉しかったです。
次の展覧会情報
今日制作していた作品は、2023年2月10日から12日まで静岡県富士市で行われる『ギャラリーDECOさんのセレクト展」』で展示販売をいたします。
今日作った作品は、作品の制作がギリギリになってしまったので、なんとか印刷が間に合いますようにとドキドキです。
その他にも、スマホケースやメッセージカードなども新作をお披露目できるように頑張っています。
もしよかったら、ぜひ、お越しください。
ご質問やご感想、興味を持っていただいた方は、ぜひ、コメントやレターをお待ちしております。
Live, Love, Laugh, and Be…HAPPY.
2023.01.14
Mineko Koyama
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