哲学カフェで「自由って何なんでしょうね」と聞かれて、ちょっと考えてから「古代からいきますか？それとも最近の話(ここ200年ぐらい)にしておきますか？」と切り出したら、マスターから「何ですか、その満腹コースか、ちょい飲みセットみたいな話は」とツッコミが入りました。

— みねるば (@minerva_owl1) March 2, 2024

満腹セット、しかも量多めのオーダーが入りましたのでやります。古代から！でもちょっと手抜きします！

さて、西洋文明の始まりと言われる古代ギリシャにおいて、自由は最も尊い概念でした。自由に政治に参加し、自由に議論し、自由に創作を行う。それこそが人間のあるべき姿と考えました。そして、

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自由の最大の敵、それが労働でした。生存維持のための活動なんて動物だってやっている。人間の所業ではない。労働殺すべし。こうしてギリシャ人はいかに労働を少なくし、奴隷に押しつけて、自由を最大化するかを考えました。このへんは以前の労働観のお話を見てもらえれば！https://t.co/FdjE7PNChb

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しかし、そんな古代世界が崩壊すると、文明が数世紀後退し、中世になりました。

中世・近世で大事なのは王権や秩序です。市民に自由はほとんどありません。人は生まれた瞬間、自分が何者で、何をすべきで、社会でどんな役割を果たさなければならないかが、完全に決まってしまいます。何かビジネスを

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始めようとしてもギルドが「何勝手なことしてんだ！ギルドの掟に従え！」と圧をかけてきますし、仮に仕事で成功しても、王に目をつけられて「おっ、儲かってんな！増税だぁ！」と富を奪われたりします。自由とは程遠い世界です。

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こうした不自由が積もりに積もって人々はブチ切れ、フランス革命やイギリス革命が起きたりしました。邪魔なギルドを粉砕し、王を断頭台送りにしたり、憲法でギチギチに王権を制限して、近代が始まりました。

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人々は、権力者にトラウマがあります。政府や王がいるから人々の自由は制限されるのだと考えました。なので、
「政府は何もすんな！警察と軍以外は寝てろ！！」
と政府を小さくしました。この考えを自由主義と言います。人々は壮大な社会実験を行いました。その結果どうなったか？

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想像を絶する弱肉強食の世界になりました。
政府は何もしないのですから、当然年金や保険といった社会保障はありません。学校や病院も作らず、労働法もないので、労働者は使い捨てです。15時間労働などザラで、子供も炭坑送りにされて容赦なく使い捨てられました。

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しかし、政府はそれを止めません。なぜならそれが自由ですから。ブラック企業がどれだけ社畜をいたぶろうと、全ては人々の自由です。もちろん工場がどれだけ環境破壊をするのも自由です。

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こうして産業革命期には、工場の煤煙が町を覆い、川も工場排水で汚染されました。しかし、政府は水道の整備を行わないため、人々はその水を飲まざるを得ません。働かせる側にとっては天国で、過去最高益を更新し続ける一方で、労働者には地獄が訪れました。

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ちなみにこの時期のイギリスのマンチェスターの労働者の平均寿命は17歳、リヴァプールでは15歳まで急落しました。これは日本の縄文時代の平均寿命よりも遙かに短いです。子供の死亡率があまりにも高く、こうした数字になります。

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完全なる自由は人類に石器時代より過酷な世界をもたらしました。実験は悲惨な失敗に終わり、
「こんなの自由じゃない・・・」
と人々は考えるようになりました。

そして、ここから自由の意味が激変します。

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「やっぱり政府にはもっと頑張ってもらわないと。ブラック企業や悪徳財閥は圧倒的な政府のパワーで粉砕し、社会保障も政府にやってもらおう。自由は政府によって生み出されるもの。政府よ、大きくなーれ！」

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こうして自由の意味が完全に逆転しました。この思想をニューリベラリズムと言います。
そして大きくなった政府は、財閥を解体したり、労働法を可決してブラック労働撲滅キャンペーンをやったり、年金や社会保険を拡充しました。福祉国家の幕開けです。人々はようやく自由になれると安堵しました。

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しかし、しばらくすると、またしても問題が起きました。社会保障費が大きくなりすぎて、政府が財政破綻はするわ、その度に増税はするわで、社会は機能不全になり始めました。
そして、とりわけ労働者保護のために課税されていた会社側から、

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「政府邪魔だな・・・やはり政府は小さい方が自由！政府よ、小さくなーれ！」
という声が上がり、最初の自由主義に戻ろうという運動が起きました。これが昨今よく聞くネオリベラリズム、新自由主義です。またしても自由の意味が真逆になりました。

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非正規雇用の拡大や公的サービスの縮小、民営化は、こうした文脈で出てきます。
しかし、これがよくメタメタに叩かれているのは、
「またあの弱肉強食の地獄の世界に戻んのかよ・・・もう実験は失敗に終わっただろ・・・」
という根強い批判があるからです。

— みねるば (@minerva_owl1) March 2, 2024

ひとまず経済の話メインで2500年を駆け抜けましたが、もちろん自由は他にも色々な意味や側面があります。哲学カフェではカント、J・S・ミル、サルトル、老子、墨子の話にもなりましたが、こちらをやり出すと大変長くなるので、ここで終わりにしておきます。(ぜぇはぁ... )

— みねるば (@minerva_owl1) March 2, 2024