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インターナショナルスクール一貫校のジレンマ

【学校作り日誌】が書き進まないまま、なんと産休に入りました
しかも、切迫早産で入院中です。
いやー計算外って起きるもんですね!
妊娠出産で計算通りにいったことほぼ無いですけど!まあ、やはりねって!笑

そんなわけで寝ているのも飽きてきたし、私の代わりに今子どもたちを支えてくれている、とある先生(A先生)に伺ったお話です。
(あくまでも個人の意見、個人の感想、個人の経験によるものです)


一貫校だろうが、老舗だろうが

結局「会社組織」

仕事してると、同じ業界の違う会社ってぶっちゃけどうなのか気になりますよね・・・(´∀`*)ウフフ

A先生は教員として多様な教育現場でのご経験をお持ちの方で、それぞれの現場で大変だったこと、楽しかったこと、勉強になったことなどいろいろ聞くことができました。
その中で印象が残っている話題が「会社の経営陣や管理職によって学校は変わる」ということです。

ご存じの方も多いと思いますが、インターナショナルスクールの運営会社のほとんどが「株式会社」。たまーに「○○法人」や外国の教育省庁が母体の民族学校。
もっと言うと、日本で「学校」と法的に認められる「学校法人」が運営しているのはほんの一握り、いやひとつまみの学校です。

「学校法人」と決定的に違うのは、文部科学省の定めた学習指導要領に準拠することが求められていないこと、つまりカリキュラムの設定は各校の裁量に任されているわけです。
だから、インターは独自の教育が提供できるわけですね。

ゆえに、インターのカリキュラムは正直安定感に欠けるところがあります。
法律に解釈があるのとおなじで、カリキュラムやプログラムにも個々人の解釈が加わるので、改善されたり、改悪されたと感じることがあったりするのもまた事実です。

そして一番影響が大きいのが、経営陣や管理職レベルの人たちの解釈だといえるでしょう。
だって私たちのボスなんだもん←

さきほど、運営母体のほとんどが株式会社と言いました。
ちなみに株式会社なので、営利団体です。
資金集めて儲けを出さないと運営できないのです。
なので、学校の盛衰によっては方針をがらりと変えたり、なんなら経営陣ががらりと変わったり、校長がすぐ変わったり、そんなことも起こりやすいのです。
それもこれも、学校として運営をつづけるため。
所属する社員たち、顧客であり所属員でもある生徒たちを守るため。

結局、学校と名がついていても「会社組織」なんですね。

こうした変化が起きた時に教師として何が困るって、自分のカリキュラム解釈や指導方針と、学校の解釈や方針にずれが生じることです。
我々、プロ意識を持って教育に携わる者として信念を持って就職先に応募するわけですから、採用当時には想定し得なかった学校の変化も起きるわけです。

大なり小なり、あるいは多かれ少なかれ、どんな学校でもこうしたジレンマは起きているというのはとても参考になりました。

一貫校なのに!?

一時期インターが乱立した時期には、プリスクール(幼児教育)やアフタースクールがたくさんできていました。
結果として、幼児教育と中高等部にあたる学校が増え、最近はその間を繋ぐように小学部ができて一貫校が増えた印象です。(統計はとってませんが、印象です)

A先生は老舗の一貫校インターに所属されていたご経験もあったので、「やっぱり老舗でカリキュラムも統一されている一貫校の内部進学生たちって教育成果を感じますか?」と思い切って聞いてみました。その返事は、

「うーん、なぜか小学部から高等部までいかない子が多いから、その判断は難しいかも」

なぜか小学部 から高等部まで行かない。
高等部に既存生徒はほとんど残らない。

これは私の勤務校(新参ではないが中堅)で同じ現象が起きているので、とても意外でした。
駐在員等で移動が多い家庭が生徒の大多数なら理解ができるのです。
でも、昨今のインターは日本人家庭や海外移住予定なしの家庭の生徒が多いのが実状。
そこで、「なぜか」を深掘りしてみたら以下のような理由が挙がってきました。

・もともと特性として移動の多い施設ではある(親の海外赴任など)
→インターナショナルスクールとは、こうしたご家族がもともとのターゲットの教育施設です。絶対数も多くありません。なので、正直一貫校でなくても成り立っていたと言えます。インターナショナルスクールが増えたり、一貫校が求められるようになったのは、現代の日本のニーズの変化と言えます。ただ、下記のような現状が日本語教師として特に引っかかる現状です。

「うちのこもバイリンガルに!」と早期英語教育を決める
→社会で「グローバル化」「世界で活躍する人材」というのが求められるようになりました。こうした社会の潮流のせいでもあるので、あまり言いたくないのですが、自分が英語で苦労したからとか子どもをバイリンガルにしたいからと、【安易に】バイリンガル環境を選択されるご家庭が増えています。私たちが【安易に】と厳しく言うのには次の現象が起きるからです。

・10歳前後になると、親が子どもの日本語力に焦り始める
→特に日本人家庭、日本人マジョリティーのコミュニティに属しているご家庭に多いのですが、ご自身の育ってきた経験や、公立のモノリンガル環境で過ごす子どもたちに影響を受けて、文部科学省の学習指導要領「国語」=基準に足りてない!うちの子日本語が全然できない!と焦る方が多いのです。特に、10歳前後は文科省認定教科書の内容も抽象語彙が増えたり、漢字漢語の量も公立生徒でもアップアップするほどのものになります。そこに「中学受験」というワードが聞こえ始めてくるので、教育方針に変更が起きたり、保護者が目指す先が変わったりしやすい時期でもあるのです。これを経て、次の現象がおきます。

日本の私立中学校や私立高校の国際コースへ
→「英語は十分に身についた。将来日本の大学への進学も視野に入れてるし、日本語が今のままではまずいから、やはり日本の私立へ。インター生だから英語受験で国際コースに」と、こうなります。

こうした状況はIB校でもあるらしく、IB教育を幼少期から一貫して受けて育った子の実例はまだまだ少ないのでは、ということもA先生は教えてくださいました。

現役教師はどう考える?

経営側でもない、管理職でも、マジョリティとなる英語の先生方とも違う、日本語教師として日本のインター事情を加味するとこの現状をどう思うのか。

言語習得にかかる負担と時間

バイリンガル・マルチリンガルの子どもたちを約10年見てきた日本語教師として、教員サイドも保護者の方にも絶対に忘れないでほしいことは
1人の子どもに二言語以上突っ込もうとしてるんだから、そら習得には時間かかるよ!
ということです。

ここはきちんと研究データを示しながら話したいところなのですが、確かに「小さいうちから英語に触れさせた方が発音がよくなる」というのはあるかもしれません。
「小さい頃から英語で育てたら、英語が話せるようになる」も間違ってはいないと思います。

でも、2歳くらいで話せる英語は大人の期待する話せると道義なのでしょうか?
英語で教えているその言葉を、日本語で学ぶのはいつでしょうか?
子どもたちが日本語で二語文(ワンワン きた等)を言えるようになるまでに2年近くかかっているのを覚えていますか。

子どもは習得が早いとは言うものの、所詮は人間の脳です。
成長中なだけであって、大人の何倍も容量があるわけではありません。

子どもたちに二言語以上を学ばせるのであれば、それ相応の時間がかかることや、子どもの脳にも限界があること、子どもの認知発達に順序があることを忘れずに、【その子が息詰まろうとも】気長に根気強く寄り添いサポートし続けていく絶対的な覚悟が必要です。

学校や習い事任せておけば安心ということは絶対に、絶対にありませんし、逆に家でサポートさえしてくれれば短期で効果が出るということも絶対にありません

ちなみにこういう話をすると、「何年生まで頑張ればいいですか」「受験までに間に合わせるためには、どんなサポートをしたらいいですか?」と聞かれることが多いのですが、どこまで待つのか、どんな教育を続ければ良いのかは基本的に答えがありません
子どもの得手不得手、趣味趣向、家庭での会話量、会話言語、家族以外のサポート環境や人間関係など、言語習得に関わる要因は多種多様で、例え兄弟児であろうとも同じ育て方で同じように育つことはまずありません。
昨今では「○○になる10の方法」「これだけやれば大丈夫!子どもが○○になる方法」なんて銘打つ書籍やSNS投稿が目立ちますが、そんなもので攻略できるなら、とっくに全世界で実証され、誰も悩むことはないでしょう。
子供の数だけ悩み、手探りをしなければならないのです。
(それを学校という社会でプロとして向き合っているのが我々教員です。)

多言語話者になるのは子ども自身。保護者じゃない

では、保護者が上記のことを肝に銘じて根気強く頑張りつづければ「日本語も英語もペラペラ」になれますか。

答えはNOです
そもそも「ペラペラ」ってなんですか?
ネイティブレベルってやつですか?
ネイティブならみんなペラペラで、大学合格したり資格取れたり希通りの就職ができたりするのですか?違いますよね。

そういう理想に向けて保護者がどんなに頑張っても、
その人生を歩むのはその子自身です。

前項の終わりでも書いたように、子供の個性や趣味趣向の数だけ多様な方法論があります。
そして、子どもの趣味趣向の数だけ、人生の道も多様にあるのです。
保護者の方が望む未来に共感する子もいれば、反発する子もいる、保護者の方が望む理想に近づきたいのにうまくいかないと悩む子もいる。

だからこそ、保護者の方にはできるだけたくさん、子どもたちとコミュニケーションをとって欲しいと思うのです。
難しいことはする必要はなくて、週末にみんなででかけるとか、3食のうち1回は一緒にごはんを食べるとか、一緒にゲームをするとか、何でもいいと思います。とにかく対等に会話をする時間を持ってほしいと思っています。

コミュニケーションから見つけて欲しいのは、目の前の子が何に夢中で何に困難を抱えをているのかということ。そして、困難にぶちあたってぶちあたっているなら、この子に今必要なサポートは何か、この子が今欲していることは何かを見極め、共に解決策を見つけることです。これは一朝一夕のコミュニケーションでは見極めることはできません。

親はつい、子どもに対して上から物を言いがちです。
指図や指摘ばかりする上司や教師に、好きなことや悩み事を話したいですか?
子どもも同じです。

人生の主人公であるその子が、どんな世界で生きたいのか。
バイリンガルや多言語話者になるというのは、あくまでも物語を生きるための手段の1つでしかありません
保護者や教師ができることは、その手段や知識を得る機会を得るサポートに過ぎないのです。

学校選びの際は、こんな感じでご家庭の方針や子どもの意志、子どもとの相性を踏まえて選んでいけたらいいですね。

まとめ

つらつらと長くなってしましたが、「老舗一貫校インターでのジレンマ」を発端に、日本のインターにおける課題や現状を日本語教師目線であぶりだし、保護者の方やインターで働いてみたい日本語教師の方の参考になればいいなと思いました。

インターは学校運営そのものが柔軟性が高いだけに不安定な一面もあったり、将来を考えたら途中で「なんか違うかも?」と思うことがでてきたり。ゆえに、日本の学校とは性質の異なる困難がインターには山ほどあると思います。(保護者としても、生徒としても、教師としても)
でもその分、多様な選択肢が出てきたということでもあるので、世の中一般的に、ぜひ学校について柔軟に考えていってほしいなと思います。

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