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アイドルブームって終わったの?

こんばんは。服飾大学で出会った「みっぽ」と「キキ」がサブカル的な態度でコンテンツについて対談形式で語る「サブカル女子って呼ばないで」です。

今回は、昨今の音楽シーンの多様化などから、”終わったのでは”とも語られている「アイドルブーム」をコンテンツとして見てみたいと思います。

■3.11からのアイドルブーム

キキ 今回このテーマを選んだのは「日本語見直そうキャンペーン〜YO!と言わないラップ音楽〜」という記事を書いたときに「アイドル」という存在について少し話したことがそもそものきっかけなんだよね。

みっぽ そうね。あの対談をする中で、こんな会話があったんだよね。

みっぽ じゃあ具体的に日本語見直そうキャンペーンってどこから始まったのかっていうと、3.11からのアイドルブームがずっとあったけれど、今その揺り戻しとしてフリースタイルダンジョンブームがきているんじゃないかっていうのはちょこちょこ聞く話よね。
キキ それ、しっくりくるなぁ。3.11から数年と今とでは明らかに世間の空気感って変わっていて。
みっぽ 3.11直後の空気感にはTHE アイドル音楽みたいな手放しで自分を応援してくれる存在が重要だったと思うのね。でも今はその空気感は薄れていて、「主張」としての音楽がじわじわと戻ってきている感覚。

キキ そうそう。実はこのときに「アイドルブームってそもそも本当に終わったの?」っていう話もしてたんだよね。

みっぽ でもそれ言い出すと日本語ラップの対談が進まなくなるから割愛したっていう。笑

キキ だから今回はここをちょっと深掘りしていきたいね。

■IDOL=偶像

みっぽ アイドルブームが終わったというより、アイドルっていう今までの固定概念を覆して、多様化してきたっていうイメージ。アイドルの数自体は増えてるんじゃ…?

キキ うんうん。アイドルってそもそも何よって話をすると、その語源は「IDOL=偶像」で、「崇拝する対象」だったんだよね。それが多様化して、偶像ではなく時には生々しさも帯びながら、その偶像としての輪郭を失っているのが今の状況なんじゃないかな。

みっぽ アイドルが今までの崇拝される対象からかなり近くなったのはここ数年の大きな動きだよね。

キキ インフルエンサーの登場も影響しているように思うな。
過去にも読者モデルとかみたいに「身近だけど憧れる存在」はいたじゃん。でも、それらとアイドルとは、戦っている土俵が違った。

みっぽ 読者モデルはあくまでも読者モデルという枠組みの中で戦っていたよね。

キキ でも今は、インフルエンサーとアイドルの境目がぼんやりしてない?SNSっていう同じ土俵の中で戦ってる。アイドルがインフルエンサーと同じような仕事だってしている。

みっぽ アイドルをアイドルたらしめるものがなんなのか、多様化すると同時に今までの「偶像」としての定義よりも言葉の持つ範囲が広がって見えなくなってしまっているよね。

キキ その状態が、アイドルの数自体は増えているのにも関わらず「アイドルブームは終わった」という言われ方に繋がっているのかもね。

■アイドルを見守る距離

キキ アイドルがSNSを通じて他のインフルエンサーと同じ土俵に立つケースは本当に増えているよね。

みっぽ 男性アイドルになるけど、ジャニーズのYouTube進出、デジタル媒体の解禁は大きかったね。

キキ 「身近な存在に」ということの分かりやすい例だよね。

みっぽ 日本のアイドルシーンの特徴として「育てていく感覚で見守る」っていうのがあると思うんだけど、「見守る距離」は確実に近くなったよね。

キキ そこだけ聞くとアイドルシーンが盛り上がっているように聞こえなくもないんだけど、実際は「アイドルとそれ以外の境目があやふやに」なっている側面の方が大きいから「アイドルブームは終わった」という言説に繋がるのか。

■アイドルをアイドルたらしめるものとは

みっぽ そうやってアイドルとその他のインフルエンサーやなんかとの境目があやふやになった時に、本来ならアイドルとしての立ち位置を確立するのに必要だったのが「アイドルらしさ」という輪郭の部分になるはずだったんだよね。

キキ でも今はアイドル自身が多様化しているから、対インフルエンサーだけでなく、アイドル間でも輪郭がぼやけている。

みっぽ そうね〜。例えば所謂アイドルらしさ全開で展開していたAKBグループから、欅坂46の新しい見せ方とそれが受け入れられた状態ってその象徴なんじゃないかな?

キキ 欅坂の見せ方は、これまでのAKBグループとは明らかに違ったよね。

みっぽ そうそう。例えば不協和音の歌詞とか、「僕は嫌だ」って、主語が自分になって強い意志表示をしているのが印象的だった。

キキ 確かにね。「崇拝される偶像」は、こういう表現をしないかも。でも欅坂はそれをしていて、世の中の流れも「AKBから欅坂へ」向かったタイミングがあったよね。

みっぽ 今までの「可愛らしい」「守ってあげたい」ようなアイドルだけじゃなく「強いアイドル」の存在感が増してるというか。

キキ 前回の日本語ラップの対談では「手放しで応援してくれる存在としてのアイドル音楽から、主張としての音楽へ移行してるんじゃないか」って話をしたけれど、実際には主張としての音楽を取り込んだアイドルもいたわけだ。

■「THE アイドル」というキャラ

キキ THEアイドルみたいな見せ方のアイドルって今は少なくなっていて、そういう人たちは今後「そういうキャラ」として振舞っていくんだろうなと思う。

みっぽ 今までの王道・主流が、「1つのキャラ」になったということはアイドルが多様化していることの現れだよね。

キキ さっき話に出たジャニーズでも、あるグループのメンバーのうちの1人が「王子様キャラ」「アイドルキャラ」として売ってたりするじゃん?

みっぽ 「王子様」という偶像が、王道ではなくたくさんあるキャラのうちの1つになっているわけだよね。

キキ これまではアイドルらしいというベースをメンバーがみんな持ったままその上で個性を見せていたけど、今はもう、アイドルキャラは1グループに1人いれば十分で、他のメンバーは別なところで個性を発揮するのが当たり前になってるね。

■アイドルは「表現方法」に?

キキ いままでのアイドルとしての王道はキャラになったわけじゃん?その中で、主張としての音楽を展開するアイドルも増えて。

みっぽ センシティブな題材を扱うアイドルも、いままでアイドルの枠組みの中ではタブーだった煙草や裸体なんかがMVに登場するようなことも増えたよね。

キキ あとは単純に、音楽の手法としても今までのアイドル音楽とは異なるパターンも出てきてる。

みっぽ  BiSとか分かりやすい例だよね。ブレイクダウンをアイドル音楽に取り入れた。最近ではちょこちょここういう音楽手法を使うアイドルって見かける。

キキ そうそう。そんな中で、それぞれのキャラや主張やなんかを、どういうパッケージで見せるのかという段階になって「アイドル」が出てくるというか。

みっぽ 主張も音楽自体も今までのアイドルとは異なってきている中で、アイドルは表現方法として存在してるってことか。

キキ  ソロアーティストとしても活動している大森靖子さんや清竜人さんが、作った曲を個人での表現としてパッケージして世に出すのか、アイドルグループの表現としてパッケージして世に出すのか、みたいな。

みっぽ この曲、靖子ちゃんがプロデュースしていて、自身も「共犯者」と名乗って活動しているアイドルグループのZOCとして出している曲だよね。

キキ  「大森靖子」としてのソロ楽曲と同じように彼女自身が作詞作曲していて、だから主張やメッセージ性自体はかけ離れていないけれど、それをアイドルとしてパッケージして出したのがZOCの表現なわけだね。

みっぽ この曲のカップリングのチュープリっていう曲、それこそ王道のTHEアイドルソングなのよ。特にサビ部分が。

キキ family nameからするとすごい振り幅だね。

みっぽ そうなの。彼女たちって元々主張としての音楽をやっているわけじゃん?だから、アイドルなのにアイドルソングを歌うことが、「アイドルのオマージュ」になってるの。

キキ なるほどね。今まではアイドルがアイドルソングを歌うことは「当たり前」だったのに、「オマージュ」にまでなるこの現状が、アイドルが増えていて彼、彼女たちを見ている人も大勢いるのに「アイドルブームは終わった」と言われることの現れにも感じられるね。


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