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「何者でもない自分を愛する」練習法

勉強をしているとき、大抵の場合、猫は机の上にいる。スヤスヤと寝ていて、呼吸のリズムと共にお腹が少しだけ膨らんだり萎んだりしている。その光景を見た時、冗談ではなく、美しいなと感動をする。と同時に、ただ生きていることが本当に素晴らしくて、他に何も求めないからこのままずっと長生きしてほしいと、心から思う。そんな気持ちが湧いた時、ちょっとだけ自分も影響を受けて、自分が「生きている」ということだけでも、それだけで喜ぼうという気持ちになってくる。

自分という存在そのものを大切にできないと、他のことを頑張って、その穴埋めをしようとしてしまう。わたしにも経験がある。優秀でなければ、親孝行でなければ、甲斐性がなければ、みんなに好かれなければ、いつも元気でなければ、などといった条件がたくさんあった。その条件を満たさないと、自分が穴ぼこだらけに感じられて、生きる意味を感じなかった。だから、頑張って頑張って、次第に疲労が溜まり、ダウンしてしまった。(適応障害が悪化、双極性障害と診断受け、計2年ほど休職。その後、復職して1年ほど経過。現在も月一で精神科に通院中。)

その後は、「何者でもない自分を愛する」という練習が始まった。こんなことは、本来は幼少期の頃に親から学ぶべきことだと思う。しかし、肝心の親には「何者でもない自分を愛する」というスキルが無かったため、教わることができていなかった。そのまま大人になったので、前述のように苦労したが、結果的には、自分で学ぶことができたように思う。

大事なポイントは、下の3つの例のように、小さな一つ一つの行動についても「自分のため」ということを意識する、ということ。

・例1:歯磨き
×口が臭いと周りに嫌われるし、悪口を言われるかもしれないから、歯磨きをする。

◯サッパリして気持ちが良いし、虫歯になって痛い思いをしなくて済むように、歯磨きをする。

・例2:寝ること
×早く寝ないと会社に遅刻してしまうし、パフォーマンスが落ちて迷惑をかけてしまうから寝る。

◯たくさん寝た方がリラックスできて気持ちいいし、自分を癒したいから寝る。お肌にもいい。

・例3:ご飯を食べること
×もっともっと頑張るために、ご飯を食べる。働かざる者食うべからず。

◯せっかく産まれたから美味しいものを食べたいし、楽しみたい。バランスよく栄養を摂取して、体調やお肌の調子を整えたい。産まれたものは食うべき。(別に食欲ないなら食べなくてもよし)

こんな風にして、どんなことに対しても、「自分のため」「自分の人生を幸せにするため」と言うことが目的だと脳内に刷り込ませること。それが大事。それがだんだんと習慣化されていくに従い、自分を否定する回数も徐々に減っていく。また、他人から嫌われないことよりも、自分の人生を幸せにする選択肢を取れるようにもなる。自己否定する回数が減ってくれば、逆に肯定する必要もなくなる。物理の力学と同じで、台の上に物を置いて、下方向に力が加わったとき、上方向にも等しく力が加わっている。きっと、自己否定をしているときは、同じような力で、無理にでも自己肯定をしなければいけないような感覚に襲われ、そうでもしないと自分を保てなくて、体調が悪かったり、嫌いな物事でも無理して頑張ってしまう。有名にならなきゃ!とか、金持ちにならなきゃ!とか思ってしまう。ただ、そもそも下方向に何も力が加わっていないのであれば、そもそも上方向に力を加える必要がない。無重力空間をプカプカ浮いているイメージ。「何者でもない自分を愛する」とは、そんな感覚かもしれない。特に自己否定をしてないけど、「自分はすごい!偉い!」とか、そんな肯定感も無い。「どっちでもいいや」という感じ。だから、目の前で寝てる猫を見るたびに、無重力空間を一緒に漂っているような、そんな心持ちになる。

きっと「何者でもない自分を愛する」ことができていない人には、幼い頃から家庭内などで役割があったはず。例えば、優秀な子ども役、言いなり人形役、お笑い担当、愚痴聞き役、親のお世話役など。この役割を失敗したとき、あなたは親から怒られたり、不機嫌になられたり、家庭内がギスギスしたり、無視されたり、嫌味を言われたりしたのではないですか?わたしはそうです。わたしは母親の愚痴聞き役になっていた。そのときだけ母親は機嫌良かった。けど、当たり前だけど、父親の悪口を言われるのがずっと苦痛だった。無理をしていた。ただ、本格的にメンタルがダウンしてからは、母親の愚痴聞き役を降りたし、それで嫌われてもいいやと思っている。自分には自分の人生があるし、その役割を降りたからって、自分に価値がないわけじゃないからね。

それでも、やっぱり習慣って怖くて、今でもたまに、つい誰かのために、無理をしてても優しい自分を演出しないといけないような気がしてしまう。その度に「自分はそんなことをしなくても、呼吸をしているだけで100点!」と言い聞かせてる。そしたら、ちょっとだけ落ち着く。だから、やっぱり「何者でもない自分を愛する」というのは、練習が必要だし、その練習をすればするほどレベルアップをしていく。さらに、頭で思うだけではなく、実際に行動に移すこと。誰かのためではなく、自分のために、歯磨き粉を少し高いやつにしたり、マウスピースを作って睡眠の質を上げたりする。その毎日の繰り返しの中でしか、「何者でもない自分を愛する」というスキルは身につかない。実体験から、そう思う。


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