一番大切な仕事

ある日、産後間もない母親から問い合わせがあった。家庭の事情ですぐにでも働かなければならず、子どもを定期的に預けたいとのことだった。

新規の利用は預ける理由を問わず歓迎したいところだけれど、歓迎するには気がかりな点があった。

経験上、切迫している母親からはメールや電話でのコミュニケーションだけでも様々な兆候が感じられる。

まわりに頼れる人も適切な機関に繋がるための情報もない母親は、藁にもすがる気持ちで問い合わせしてきたのだと思う。何度か電話やメールでやり取りをするうちに困っていることや実情をぽろっと打ち明けてくれた。

私は仕事柄、どこに相談をすべきでどんな行政サービスを受けられそうか新米お母さんよりは情報を持っている。すぐに母子の居住地の自治体や関係機関とも連携を取り、母子を繋がるべきところに繋げることができた。
会社としては1円にもならなかったけれど、今年一年の中で最も重要な仕事ができたと感じた。

ベビーシッターサービスなので子どもを預からないと売上が立たないのだけど、子どもの最善の利益を考えて、時には預からない選択もするし大切だと思っている。

必要としてくれるひとりでも多くの人たちの役に立ちたいと思う。だけど、"多くの" に引っ張られると、個々の顔が見えなくなる。それは、子どもの命を預かる事業者として致命的なことだと思っている。

当たり前だけれど、日々お預かりしている子どもたちの命はひとりひとり決して替えがきかないし、大人や経営の事情で子どもに不利益を負わせることは絶対にあってはならない。ずっと肝に銘じ続けている。



問い合わせしてくれたお母さんと赤ちゃん、お会いすることはなかったけれど元気にしているかな… すくすくと成長した赤ちゃんとお母さんが幸せな気持ちで新年を迎えられますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?