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私世界の構築

「独りで出掛けるなんてありえない!! もったいな!! 」
 飲み会のときに、まあまあ言われるセリフ。

 でも、私はこれに異議を申し立てたい!

 だって、独りの気楽さって何物にも代えがたいんだもの。誰のペースでもなく、自分の思うように街を歩いていくのはとても爽快だ。耳元には大好きな映画のサウンドトラックをガンガン鳴らして、リズムに合わせて足を出す。その瞬間、世界には私しかいなくなるのだ。音楽に合わせて、足取りも軽くなって思わずメロディが口からもれる。最高に上機嫌の私が出来上がる。
 何も予定の入っていない土曜日は、月に1回はある。使い慣れたアプリで上映している映画のなかで気になるものをピックアップ。自分だけのタイムスケジュールを組んでいく。それぞれの映画館の距離なんかを考慮して、ランチや空き時間に回るショップにも思いを馳せる。

 あくまで、その日の主人公は自分だけ。自分を喜ばせることはすごく簡単な気がするのに、なんだかんだ一番難しいと思う。普段の優柔不断っぷりも邪魔をして、ランチのお店は決まらないし、そもそも食べたい!という気力すら湧かないときもある。

 欲しいものは溢れかえっているけれど、どれも手にしたら必要のないものの気がしてならない。ショッピングはケータイの画面で見てるときが一番楽しい、とも思う。
 独りのいいところは、遅刻という概念が消えるというところにもある。前日に夜遊びをして午前中を睡眠で潰しても大丈夫。

 相手がいなければ、謝る必要もないのだ。自分のペースで納得のいくまで服を選んで、いつもは乗せないアイシャドウで彩る。靴でもしばし悩んで、休みの日にしか使えない小さめのポシェットに文庫本と財布とケータイをパンパンに詰め込んで家を出る。もうこれだけでワクワクなのだ。
 知らない通りを歩いてみるのもいい。誰に謝ることもないと思うと、ちょっとくらい迷ってもいいかという謎の勇気が背中を押してくれる。知らない道には知らないお店があって、連れてきたい人が思い浮かぶ。疲れたら適当なカフェに入って持参した文庫本を読みながらのんびりする。これほどゆったりとした時間は普段の生活のなかではなかなか手に出来ない。そのときの私は、自分のためだけにオシャレをしているわけで。そう考えると、結構贅沢をしているなと思えるのだ。
 独りの土曜日は、大体映画館で過ごす。前日に予約したチケットを片手に売店でビールとつまみを買うのが楽しい。なにより昼間から飲むビールの背徳感は興奮を倍増させるし、大きなスクリーンに映し出される映像は私を未知の世界に連れて行ってくれる。音響ももちろん最高で、私は作品の中に入り込んでいつもは隠している感情を洗いざらい吐き出す。

 泣いて笑って、イライラすることもあるけれど、私が選ぶ作品は大体がハッピーエンド。良かったなぁ~と涙を拭きながら劇場を後にするのは、ストレス解消にぴったりだ。昨日までぐるぐるしていた悩み事も半分くらいに減っているし、次に来たときは何を観ようかなという楽しみも出来る。

 1日を自分のためだけに使う、という事実が私は好きなのだろうと思う。誰かと一緒に居るのも、もちろん好き。でも、誰かと一緒にいると私は主人公にはなれない。隣にいる誰かが笑っているかが気になるし、相手が本当に楽しんでいるかのが心配になるから。
 つまり、他人に関して大変神経質なのである。自分をおざなりにする癖が当然のようについている。それが、他人からは自己中に見えても、私にとっては世界が私を中心には回っていない。……これには、私を知っている人たちは反論を唱えてきそうだな。でも、そんな自分はあまり好ましくない気がするし、滅入ってしまうから、目に見える形で自分に自分が時間を使っている証拠が欲しくなってしまう。一時期はまっていたネイルアートも同じ理由で好きだった。なんとも精神的に不安定な理由が浮き彫りになってしまうのが、私の悲しい性といえそうだ。
 独りで街を歩いていると、色々な発見がある。(キャッチ以外)誰とも目が合わなかったり、同じように“オヒトリサマ”で歩いている可愛い女の子の顔がすっごく生き生きしていたり。素敵なスカートを身につけているお姉さんもいるし、スタイルがいいお兄さんに目を奪われたりもする。

 そして、誰も私に興味がないことが分かって、なんとなくホッとすることもある。
 誰にも気取らなくていいから、感情を思い切り出すということも出来る。ずっと糸がたゆんだ状態だから相当間抜けな顔をしているだろうと情けなく思わないことはないが、この気楽さには代えられない。気になっていたお店に足を踏み入れてみるのも、冒険をしているようで足元がおぼつかなくなって、不思議なドキドキが味わえる。
 みんなにとってはあり得ないらしい、独り映画にショッピング。私にとっては心のデトックスであり、ちょっとした冒険でもあり、気づきの時間だ。

 この時間は誰になんと言われようと、失くせそうにはない。

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作品更新情報やひとりごとつぶやいています!小説だけでなくイラストやデザインも盛りだくさん!→@mishika_3_2

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