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基幹産業肥大 Ⅰ

 時代は確かに変わりつつある。同時に代わりつつもある。将来的時代をどう見るか?どう見れるのか?目先を考えながら中長期的見解が重要な未来を決めてしまう事は明白。その来るべき時代等は、誰にもわかるはずがないが、それをわかったフリをして組織を振り回すのが現在のトップ達の仕事でもある。手堅く行くのか、勝負するのか、一先ずは何もしない様子見なのか?程度の差はあれども、いずれにしてもなんらかの決断を下す必要に迫られるのも、トップ達の重く苦しい責任でもある。彼らには胃薬と霊媒師達が必要であるのかも知れない。

 世界でも基幹産業となった、自動車製造販売会社は、製造に関する多くの選択肢、販売に関する多くの選択肢、会社存続に関する多くの選択肢、まさに多岐に渡る選択の必要に迫られ、決断をじわじわと下している。誰にもわからない未来を占う様にして選択を進めて行くには、かなりの情報量が必要となるが、それを怠ると、判断を見誤る事は必至。そのリスクを最小限に抑え、欲深く収益を上げようと目論む。しかし、それが必ずしもその通りになるわけがない。未来は闇の中。手探りで、やり直しの利かない方向へ、この先、一体何に触れる事が出来るのか?幸運なのか、不運なのか?恐る恐る手先を伸ばす。

 こんな事態の中、進める事は、決まっていて、完全なる合理化。適正人件費確保への移行。それは物体である自動車構造自体が合理化される事に伴う改革と変革。商品となるものに合わせて、制作作成製造現場も合理化せざるを得ない対策を、狂信的にすすめる事。同時に、合理化によって発生する被害を最小限に抑える事。この、長期に渡る時代の流れの中で、日本人は欧米寄りの考え方に変革していったとは言え、まだまだ欧米諸国の様な、ハッキリとした労働人口施策を打ち出す事は苦手。だから、国内の場合、目立つ合理的変化を打ち出す事は、なかなかやらない場合が多い。それは密かに、しめやかに、目立たぬ様に行われなければならない。もちろん、どこの会社も人的合理化には敏感だ。だが、筐体の特別な大きさは、ほんの少しの合理化で、異常な程の収益を上げる事が可能。1円でも経費を圧縮する努力を、知恵によって絞り出す。

 まず手始めに行うのは、統合と言う合理化。物体である自動車の製造工程変更により、有り余る人員削減をしなければ、生き残れないと考えた、ある国内組織は、まず販売車種の整理から始めた。つまり車種の統合である。簡単に言えば、車種を減車する事。バリエーションが多ければ、当然、製造コストがかかってまう。それでも収益を上げる為、販売台数は確保しなければならないので、単一車種での間口、販売開口口は大きく構える。バリエーションを少なく、車種を限定したとしても、すべての販売店が、すべての車種を扱えれば、車種不足による販売量不足も、十分補える。所謂、車種別チャンネルの廃止。販売店統合を行い、車種は減らしても、販売台数そのものは、逆に伸ばそうという戦略だ。
 しかし、国内販売の窓口である末端の販売会社は、統合され合理化されてしまう。でも、そんな事は製造会社にとって気にもならない出来事。文句があるのなら、当社の製品から手を引いてもらっても構わない、という強み。この強みと自信があるからこそ、こう言った合理化を、堂々と進める事が出来ているのである。

 基本的基幹産業とまで成り上がった自動車製造会社は、確かに自ら努力する事によって、その立場と圧倒的な財力を手中に収めた。しかし、現代、この変革期にあたって、これからの世界に対し、大いなる巨人達は迷っている。一歩でも間違えば、産業そのものが肥大化しているが故、その被害は甚大であろう。あらゆる知恵を絞って、社会的、体裁的、未来的合理化をうまく取り図らなければならない。トップが舵を取ると同時に、トップはその責任をも受け取らなければならない。基幹産業である自動車製造販売組織は、これから益々、未来エネルギーの選択に迫られ、統合化され、合理化の道を辿るに違いない。その時、何が正解なのか、その模索で、更に国内外を問わず、各メーカーは、胃薬を横にして、あがき続ける事になるだろう。しかも、そうやって出た結論に、自信を持てる企業が、これからどれくらい生き残る事が出来るのだろうか。

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