中田満帆

1984/07/03 文藝、写真、絵、音。a missing person's press主宰・発行人。詩集「終夜営業|Open 24 hours|発送受付」、「38wの紙片」。’04年より森忠明(詩人・童話作家)に師事。自閉症スペクトラム障碍。

雨季のエロイカ《今月の歌篇》



 雨に煙れる町のむこうがわで一握りの石を拾いあげるきみへ

 時折ぬかるんだ道に足をとられてきみを愛おしくおもう夕べ

 まやかしのこととおもえば少しは気が楽か英雄不在の失意のなかで

 あじさいがゆれるゆれるまたゆれてやさしさなどをあざけりゆれる

 光りさすなか一輪を剪りに来て茎もてあます朝餉のあとは

 雲叫ぶようにながれゆき幼子たちのまなこに消える

 ただまっすぐにして立柩のような

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no love, no love

ビール、ベビーチーズ
 

 どうしようもなくゆうぐれて見えなくなってしまった
 もはや、ちがうなにかでしかないぼくの魂しい
 いるはずのないひとびとをおもい、
 起こり得ないことをおもうとき、
 翅のつけ根から、
 激しく傷む
 どうせきみたちはもう遠くへいってしまったんだ
 ぼくはここでずっと他者の幻影とともにして、
 夕餉にシメサバを平らげる
 こいつは淋しい

 きみにだけいうよ、どうやら

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Louie Louie

夏の匂いがする、──ぼくはつぶやく
 かの女たちにできることはもうなにもない、──ぼくはやぼやく
 母は家をでたらしい、
 姉は離婚したらしい、
 妹たちはそれぞれどっかで暮らしてる
 かの女たちがどこにいるのかなんかぼくの知ったことじゃない
 あの家のなかでぼくがずっと異分子として生きてきたように
 この町のなかででもぼくはずっと異分子として生きてる
 かの女たちのことはなにも知らないし、
 か

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青少年のための現代詩入門

できればもう少しでいいからましなものをと求め、
 なにも手に入れられないことの憐れさ
 だれもでもない、
 なにものでもないという事実、
 受け入れようと受け入れまいとそれはおなじこと
 だってきょうも郵便受けはからっぽで
 だってきょうもあしたの喰い扶持がないんだから
 できれば愛が芽生えてるところで、
 できれば永遠にそれが育ってるところで、
 暮らしてみたい
 おれがまだ若かったころ、
 姉

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河の暗いところで

きょうのためにできることの、その心許なさ
 金が減ってものが増えるだけの、うしろめたさ
 なにもないところからでて、なにもないところに帰るだけ
 ところで存在するってわるいこと?
 それとも善いことなのかを教えてくれ
 男がいる、
 河の暗いところで、
 立ってる、
 そして泣いてるように見える
 どうだっていいけれど、
 ぼくはぼくの亡霊でしかない
 叶えられない祈りのなか、ぼくはぼくの指を握り

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