中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に…

中田満帆

1984/07/03 兵庫県西脇市生まれ、神戸市出身在住。 詩人・童話作家=森忠明に師事。 文藝、写真、絵、音。  HP https://mitzho84.wixsite.com/ampp Blog https://mitzho84.hatenablog.com/

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記事一覧

猫──あるいはイギリスの夏

 レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、  来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、  図らずも、bambooからwater fallへと変身…

中田満帆
3日前
6

a son of subhuman

まえの土曜のツイキャス配信から、 Youtubeの投稿動画のアイデアに繋がった、 おれと歌誌「帆」広報の三浦果実氏とトーク番組を始めるということだ いまさらYoutuberと…

中田満帆
10日前
3

呼び声 04/26

   *    夏妊む幹のやさしさなどを識るかたわれもない存在のなか  いつわりのわが家わが妻遠ざかる水のなかにて自己見失なば  ひたさわぐ葉桜通り指をもて16ビ…

中田満帆
12日前
8

拳闘士の休息《無修正版》

 試合開始はいつも午前3時だった  父にアメリカ産の安ウォトカを奪われたそのとき  無職のおれはやつを罵りながら  追いまわし  眼鏡をしたつらの左側をぶん撲った …

中田満帆
2週間前
1

voice of a familiyless man

    *父という帽子を探す一輪の花などあらぬ野にたちながら  きのう、歌誌『帆』の広報担当の三浦果実氏がわたしの父と話した。録音を聴いた。当たり障りのある話じ…

中田満帆
2週間前
1

かの女たちにはわからない

   *  秋声のうちにおのれを閉じ込めてつぎのよるべの夜を占う  道を失う ひとの姿をした夜を突き飛ばしてまた朝が来る  なぜだろう どうしてだろう わからな…

中田満帆
2週間前
1

おれの徒然〈12〉「人生浮上作戦」篇

   *  以前にPDFで電子書籍を入稿したのだけれど、「読めない」というクレームがついて出版停止にしていた。いろいろと験したものの、PDFをEPUBにはできなかった。と…

中田満帆
2週間前
1

things for nothing

★ 幻冬舎ルネッサンスの人間と喋った 送った本について話す予定だった おれは長篇小説を以前、 講評してもらい、 その完成版を送ったんだ ついでに詩集と掌篇集、歌…

中田満帆
3週間前
7

窓のある風景

 叫びのない窓が額装されるまでに  まずは県民会館で  エッチングとして公表された  田舎者たちにかこまれ、  曝された色彩が  夜ごとかれらのなかで這入って  やが…

中田満帆
3週間前
3

Alone Again Or

 折れた、  夏草の茎の  尖端から  滴る汁、  突然静かになった水場  あのひとが愛の、  愛の在処をわかっていると誤解したままで  おれは死ぬのか  麦を主語に従…

中田満帆
3週間前
5

the burn out dreams

   ★  どっかで「書くことによってじぶんを傷つけている」とブコウスキーは書いてる  そうとも、多くの作家志望はそんなありさまだ  文芸は長期的に見ると、とて…

中田満帆
3週間前
10

もう、いやだよ

   *  希死念慮がぶり返している。春になるといつも、どうにも心身の安定がむつかしい。一昨日、届いたフィルムをさっそくだめにしてしまった。おれの手はあまりにも…

中田満帆
3週間前
4

歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》

 4/10より歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》をだしました。本来の予定では去年の冬号としてだすことになっていましたが、執筆者の欠員などが重なった上、そもそものテー…

中田満帆
3週間前
7

I wating until the next dawn

★ 歌誌はなかなか完成しない 来る予定の原稿がまだ来ない 正直、不安だ きょうはなにもやってない 今月は工賃で¥16,000以上も入った ¥6800ほど電気代で逝ってしま…

中田満帆
1か月前
4

からっぽの札入れとからっぽのお喋り

   *  雑役仕事と金が尽きて、もうしばらくになる。おかしなもので足りないときほどしたくなるものだ。創作や自涜、どちらも空想と実感を一致させてゆくという点でよ…

中田満帆
1か月前
3

you gonna take me to haven

★ 創作表現講座というものを開くことになった。 べつにおれが偉くなったわけじゃない。 相手から頼まれてそうなった。 おれに教えられることなんかあるのかとおもいな…

中田満帆
1か月前
1

猫──あるいはイギリスの夏

 レイモンド・チャンドラーの猫はタケというなまえだったのだが、
 来訪するアメリカ人たちの発音によってタキとゆがめられ、
 図らずも、bambooからwater fallへと変身した
 われわれはなにかを誤解すること、
 おもいちがうことによって、
 世界というものの真に近づくのである

 イギリスの夏は遠い
 手のひらが熱くなる午後の港
 たったいま交わした約束がでたらめだったと
 吐きすてるこ

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a son of subhuman

まえの土曜のツイキャス配信から、

Youtubeの投稿動画のアイデアに繋がった、

おれと歌誌「帆」広報の三浦果実氏とトーク番組を始めるということだ

いまさらYoutuberとは古いのだけれど、

ひとと話すことは最近愉しい

というわけで、

きょうはOP曲、ED曲、ジングルをつくった

ガットギター、カシオ・トーンバンク、Volca Beats+tarariraで。

ジングルには声も入れ

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呼び声 04/26

   *

 
 夏妊む幹のやさしさなどを識るかたわれもない存在のなか

 いつわりのわが家わが妻遠ざかる水のなかにて自己見失なば

 ひたさわぐ葉桜通り指をもて16ビートを刻むゆうまぐれ

 まぎれてもなお叫ぶ死者あり書物とは祝祭の一形態なり

 破戒することのよろこび絶えぬなか射撃音すら愛しくおもう

 わかもののふりして晩熟嗤いたるおとこのようなかぜが吹いてる

 なきにせよ 残されたものを

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拳闘士の休息《無修正版》

 試合開始はいつも午前3時だった
 父にアメリカ産の安ウォトカを奪われたそのとき
 無職のおれはやつを罵りながら
 追いまわし
 眼鏡をしたつらの左側をぶん撲った
 おれの拳で眼鏡が毀れ
 おれの拳は眼鏡の縁で切れ、血がシャーツに滴り、
 おれはまた親父を罵った
 返せ!
 酒を返せ!
 おれの人生を返せ!
 おまえが勝手に棄てたおれの絵を、おれの本を、おれのギターを!
 凋れた草のような母たちが

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voice of a familiyless man

    *父という帽子を探す一輪の花などあらぬ野にたちながら

 きのう、歌誌『帆』の広報担当の三浦果実氏がわたしの父と話した。録音を聴いた。当たり障りのある話じゃない。気になったのは三浦氏が使った《父に対する恨み》という辞で、おれ自身はいまや恨んではいない。ただ《嫌悪》とか、《痼り》を感じるぐらいだ。おれの友人を自称するのなら、そこらへん気をつけて欲しかったとおもう。

 でも、まあなんというか

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かの女たちにはわからない

   *

 秋声のうちにおのれを閉じ込めてつぎのよるべの夜を占う

 道を失う ひとの姿をした夜を突き飛ばしてまた朝が来る

 なぜだろう どうしてだろう わからない蟻の巣穴に零す砂糖よ

 みながみなわれを蔑して去ってゆくこの方程式の解とはなんぞ

 旅を夢想する儚さよただわが両手に林檎がひとつ

 あいまいな嘘ばかりなり駅名をひとつ飛び越すわれの贖罪

 鶏卵の高騰 われは斜に見て商店過ぎぬ

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おれの徒然〈12〉「人生浮上作戦」篇

   *

 以前にPDFで電子書籍を入稿したのだけれど、「読めない」というクレームがついて出版停止にしていた。いろいろと験したものの、PDFをEPUBにはできなかった。ところが「一太郎 EPUB エラー」で検索すると、固定ではなく、リフロー設定であれば数秒でできるということがわかった。さっそくデータをつくって入稿。ビューアで確認もしたが、やや構成がずれてしまうものの読める代物になった。たぶん、あ

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things for nothing



幻冬舎ルネッサンスの人間と喋った

送った本について話す予定だった

おれは長篇小説を以前、

講評してもらい、

その完成版を送ったんだ

ついでに詩集と掌篇集、歌誌も送った

日村勇紀の女版みたいな担当者と話した(以前の講評者はもういなかった)

たった15分で終わった

型どおりに褒められ、型どおりに商売の話

終わっておれは失望した

ほんとうに文学がわかる人間なんていないことに

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窓のある風景

 叫びのない窓が額装されるまでに
 まずは県民会館で
 エッチングとして公表された
 田舎者たちにかこまれ、
 曝された色彩が
 夜ごとかれらのなかで這入って
 やがて追放された

 叫びのない窓が額装されるまでに
 イギリスの小さな個展で
 散文藝術に複製されるかたちで
 ひとびとのまえにだされた
 ひどく脅えたガラスのなかで
 膨張するひとびと
 夜ごとかれらのなかで破裂して
 画廊ごと焼き討

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Alone Again Or

 折れた、
 夏草の茎の
 尖端から
 滴る汁、
 突然静かになった水場
 あのひとが愛の、
 愛の在処をわかっていると誤解したままで
 おれは死ぬのか
 麦を主語に従えた季節は終わって、
 世界の夏で、
 いまは微睡む
 そして無線の声
 "The less we say about it the better"
 でもちがうって気づく
 おれはあまりにも
 語りすぎたと
 いままでずっとそう、

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the burn out dreams

   ★

 どっかで「書くことによってじぶんを傷つけている」とブコウスキーは書いてる

 そうとも、多くの作家志望はそんなありさまだ

 文芸は長期的に見ると、とても不愉快だ

 毎回、じぶんが幸福でないことを確かめることなのだから。

 幸福の原感覚を持ないおれに

 いったいなにができるのかという疑問を

 いつも突きつけられている

 遠かれ近かれ、自己洞察や自己限定に接続された文学は

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もう、いやだよ

   *

 希死念慮がぶり返している。春になるといつも、どうにも心身の安定がむつかしい。一昨日、届いたフィルムをさっそくだめにしてしまった。おれの手はあまりにも不器用で、フィルムの装填さえできない。歌誌が終わって、どっと疲れたのもある。酒が切れたのもだ。夢を見た。またしてもいまの住居を喪う夢である。こういった夢はなにを意味しているのか。どうだっていい。とにかく2時には眠った。10時に電話。そして

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歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》

 4/10より歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》をだしました。本来の予定では去年の冬号としてだすことになっていましたが、執筆者の欠員などが重なった上、そもそものテーマ性の欠如、さらに原稿そのものの沈滞もあり、春に移行することになりました。今回は特に花島大輔氏との共作『短歌に於けるマニフェスト』に時間がかかりましたが、御陰様で好い作品ができたとおもっています。短歌界のジビエを味わってください

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I wating until the next dawn



歌誌はなかなか完成しない

来る予定の原稿がまだ来ない

正直、不安だ

きょうはなにもやってない

今月は工賃で¥16,000以上も入った

¥6800ほど電気代で逝ってしまった

あとCD2作、

ルルーズの『ルル』、

坂本慎太郎『まともがわからない』初回盤、

あとは味覇、

業務スーパーで燕麦や乾燥わかめ、刻み玉葱、ゴーヤー、鰯、卵を買った

なかなか体重が減らない

もうずっと7

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からっぽの札入れとからっぽのお喋り

   *

 雑役仕事と金が尽きて、もうしばらくになる。おかしなもので足りないときほどしたくなるものだ。創作や自涜、どちらも空想と実感を一致させてゆくという点でよく似ている。台所には甘味料、香辛料、油、肉などなし。あるのはしなびた野菜のいくつかと、わずかな麺類。そしてとうとうあいてしまった靴の孔――そこへ公園のベンチがこちらに近寄ってくる。
 おかしなものであまっているときはこういった苦痛について

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you gonna take me to haven



創作表現講座というものを開くことになった。

べつにおれが偉くなったわけじゃない。

相手から頼まれてそうなった。

おれに教えられることなんかあるのかとおもいながら、

それも今月分の受講料は頂いてしまったし、

来週からは本格的に教えねばならない。

しかしおれが教えられるのはおれのルートであって、

相手の最適解ではないということだ。

階段の踏み板を踏み外すような詩論を相手に押しつけ

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