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面白い本・好きな本|歴史と文脈の価値[白洲正子]篇

今の家に引越してから、ちょうど3年。

年末ギリギリに引越して、エアコン設置業者の稼働が正月休み開けになることに後から気づくという大失態。。

せっかくの新居で、極寒のお正月を過ごした記憶が、この時期になると蘇ってくる。。

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中古の戸建をリノベーション

今の家は築34年の木造戸建をリノベーションしたもの。

外装はすべて更新。内装は水廻りと仕上げの更新に留め、建具や造作、下地材も積極的に古いものを活用する最小限のリノベーション。何より安い。

もともとあるチークの天井や、造作の木の温かみを活かして、新しく更新する仕上はすべて黒とグレーで統一。

無彩色の空間の中に木の色が映え、34年の歴史が際立つ感じがいいなぁと。

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歴史と文脈の価値

愛着はあるけど、古いし解体しますよね?

住宅を購入するときに、もともと住んでいた方から言われたひと言。
歴史的建築物や古民家と言えるほどの伝統的日本建築でもないため、普通は解体される運命かと。

でも、せっかく愛着があるなら、改修しよう。
そして、リノベ後には、ぜひ見に来てもらおう。と、設計の方針を決める。

いいところは活かして、より住みやすく。
前住人から受け継いだ価値を、未来へつなぐ。

新しい技術や建物は簡単にコピーできるけど、蓄積された時間の重みはコピーできない。

歴史と文脈は、長く使うことでしか生まれない圧倒的な価値がある。

と、強く感じたプロジェクト。

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歴史と文脈の価値[白洲正子]篇

と、いうことで歴史と文脈の魅力を教えてくれる随筆家、白洲正子の本を3冊ご紹介。

樺山伯爵家の次女として、東京に生まれる。
夫は実業家で吉田茂の側近である白洲次郎。
戦後、小林秀雄、青山二郎と親交を結ぶ。
眼で見て、直接足を運んで執筆するスタイル。
読売文学賞二度受賞

文学骨董工藝歴史風土文化の世界に浸かり、各地を旅する紀行文は、どれも最高に面白い。

旅が好きな人に、ぜひ読んでほしい。
そしてモノをつくる人にも、ぜひ読んでほしい。

ちなみに、武相荘もおすすめ。
東京の町田にあり、アクセスは悪いけど、、

かくれ里/1971

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吉野・葛城・伊賀・越前・滋賀・美濃などの山河風物を訪ね、日本の古い歴史、伝承、習俗を伝える。

秘境と呼ぶほど人里離れた山奥ではなく、ほんのちょっと街道筋からそれた所に、ひっそりとした真空地帯があり、そういう所を歩くのが、私は好きなのである。

「世を避けて隠れ忍ぶ村里、かくれ里」

いろんな街に出歩いて、何となくこの街いいなぁと思っても、うまく言葉にできないもやもやのなか「かくれ里」という言葉に出会う。

何となく感じているフワッとした思いを、ハッキリと言語化してくれる気持ちよさ。


近江山河抄/1974

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逢坂、大津、比良山、竹生島、沖の島、鈴鹿、伊吹等の琵琶湖を中心とした日本文化の発生の地、滋賀近江の紀行文。

高度経済成長万博で世の中が浮かれ、貴重な文化が破壊されつつある現状を憂いる言葉も端々にあり、今読むからこそわかることも多々あり。

王朝の盛衰、世阿弥の能の源流、神仏混こうのパターン等々、日本文化の姿、歴史観、自然観の源泉への想いを堪能する。


日本のたくみ/1984

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手仕事のすばらしさを静かに守り抜く日本のたくみを訪ねる。
技術や伝統、さらには使い心地や味わいのよさまで紹介する。

白洲正子は目利きであり、デザイナーである。

染織工芸の店を営んでいたこともあり、自分が求めているものを明確に職人に伝え、正しく物を評価して、出来が悪いものは、はっきり判断する。

モノそのものを魅力的に仕上げるのは職人にまかせるほかない。
しかし、イメージしていることを明確に伝え、注文するのはデザイナーの仕事である。

デザイナーと職人の正しい関係

デザイナーは、人びとが暮らす生活文化のなかで、そこに必要だけど、いまだ存在してはいないモノについて明確にイメージして、言語化する。

それを職人が具現化する。
デザイナーが手を出しても、できないしすべきではない。

そんなことを考えさせてくれる『日本のたくみ』という一冊。

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明けまして、おめでとうございます


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