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面白い本・好きな本|淡々と懸命に暮らす、市井の人々[東京の生活史、忘れられた日本人、武家の女性]

激動の時代の周期、80年説?

2020年代|平成令和
1940年代|戦中戦後
1860年代|幕末維新

2020年の80年前は1940年。さらに80年前は1860年。コロナと共に暮らすことになる2020年代、戦中戦後を経験する1940年代、幕末維新の歴史的転換点を迎える1860年代。

激動の時代は、たまたまなのか80年の周期で繰り返される。人生80年、一度は経験する大変動の中で、それでも淡々と、懸命に暮らす市井の人々。ありふれた日常に、何を感じ、何を思い、日々暮らしているか?

歴史上の人物や、著名な人の物語には興味がない。「人生のすべて」とか「隠された真実」という大それたものを欲しているわけでもない。

普通の人々の、ごくごく一部の人生の切れ端
たまたま語られた記憶の断片

市井の人々の、小さな語りで紡がれる、豊潤な人生の物語を垣間見たい。激動の時代に、たまたま生きる、市井の暮らしでもどうでしょう、という話。

東京の生活史|平成−令和|2020
忘れられた日本人|戦中−戦後|1940
武家の女性|幕末−明治|1860

「風土」と「文化」はどう違う?

風土」は、気候や地勢など,その土地のあり様であり、思想や文化に影響を与える精神的な環境。

文化」は、人々が共有する価値観や行動規範。時代や環境によって変化し、意図的につくり上げることができるもの。

「風土」は環境で、「文化」は価値観

日本の自然の相貌はとっても多様。一つとして同じ海はなく、一つとして同じ山はない。それぞれの環境に、個別の豊かさと魅力が潜んでいる。

そんな豊かな自然が、多様な風土を醸成し、その地に根ざした文化の中で、日々の営みが繰り広げられている。

現代の東京で暮らす人々の生活史
辺境の奥地で黙々と生きる生活史
幕末の武士の家庭と庶民の生活史

東京の生活史|平成−令和

150人が語り、150人が聞いた、東京の人生

一般から公募した「聞き手」によって集められた「東京出身のひと」「東京在住のひと」「東京にやってきたひと」などの膨大な生活史を、ただ並べるだけの本。解説も、説明もない。ただそこには、人びとの人生の語りがあるだけの本。
偶然と必然によって集められた語りが並んでいる。そして、その、偶然と必然によって人びとが隣り合っている、ということそのものが、「東京」を再現しているのである。

あらすじ

語り手の紹介はまったくない。いきなり語り出す。文章を追いながら、この人は男性なのか。40歳くらいかなぁ。あぁ、あそこに住んでる人か、と想像を巡らす。少しずつ、少しずつ語り手の人生を垣間見る読書体験。

人生は、小説よりも奇なり
物語のない人生はない


忘れられた日本人|戦中−戦後

辺境の地で黙々と生きる日本人

昭和14年以来、日本全国をくまなく歩き、各地の民間伝承を克明に調査した著者が、文化を築き支えてきた人々が、どのような環境に生きてきたかを、古老たち自身の語るライフヒストリーをまじえて生き生きと描く。辺境の地で黙々と生きる日本人の存在を歴史の舞台にうかびあがらせた宮本民俗学の代表作。

あらすじ

たった80年前の、無名の人生。歴史の教科書には載らない、本当の日本昔話。記録ではなく、記憶の中で残る文化が、語りを通して継承される。

語り手によって食い違いもあれば、記憶ちがいもあるだろう。そんな断片を紡ぎ上げ、辺境の地で生きる人々の歴史を見事に浮かび上げる。

忘れられた日本人の、忘れられない物語


武家の女性|幕末−明治

滋味溢れる幕末の生活史

幕末の下級武士の家に生れ育った母の昔話をもとに、武士の家庭と女性の日常の暮らしを女性の眼で生き生きと描き出した庶民生活史。動乱に明け暮れる水戸藩で女性たちがどのような躾を受けて暮していたのかが、巧みな筆致で描かれる。女性解放運動の優れた思想家であった著者による滋味溢れる生活史・民俗史。

あらすじ

幕末水戸藩の下級武士の家庭と、女性のたしなみがていねいに描かれてた生活史。

アイロンがない時代、口に水を含み一気に着物に吹きかける。大きな板の間に着物を入れて、しわをとる。
塾を開くのは、相当な学者と藩が認めた場合のみ。なので、代々続く塾は少なく、一代かぎりが多いという。

小説より面白い女性生活史


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