健康と長寿と栄養③炭水化物
ブルーゾーン(Blue Zones)という言葉をご存知でしょうか?日本語では「長寿地域」と言い換えることができ、健康で長生きの人々が多い地域を指します。JIMという医療メディアのシンポジウムにて、ブルーゾーンの人々とそうではない人々になんの違いがあるのかがまとめられた文献が発表されました。文献では、疫学的な観点から考えた健康・長寿を獲得するための食事についてまとめられています。
この文献では、慢性疾患と長寿に影響する食事要因に関する最近の知見を、コホート研究という疫学において用いられる手法で調べられています。調査では被験者を30年以上追跡調査して、食事とライフスタイル要因に関する詳細なデータが2~4年ごとに収集されています。
この文献から、第1回は「カロリー制限と脂質」、第2回「タンパク質」をそれぞれ抜粋してきました。第3回は「炭水化物」について抜粋した情報を紹介したいと思います。
低炭水化物・ケトジェニックダイエットの影響
低炭水化物食またはケトジェニックダイエットが、健康および長寿に及ぼす影響について、動物やヒトを対象にして幅広く研究されています。ケトジェニック食は極端な低炭水化物食であり、身体が主にケトン体をエネルギー源とするケトーシス状態を誘導します。
動物実験によると、ケトジェニック食は以下の効果によって、長寿や健康寿命を増進するとされています。
mTORシグナル伝達の抑制
AMPKおよびSIRT1の活性化
インスリン感受性の改善
慢性炎症の抑制 など
mTOR(エムトール)は酵素の一種で、主に細胞内にシグナルを伝達することで細胞増殖や代謝を調節するとされています。代謝異常やガンなどの症状は、mTORによる調整機能のエラーによて引き起こされると考えられています。mTORシグナル伝達が抑制されることで、ガンリスクそのものが軽減される可能性があるというわけです。
AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)は、細胞や個体の代謝を調整する酵素です。実際、AMPKは体内(細胞内)のエネルギー低下に対して、脂質の代謝やグルコースの代謝を促進します。AMPKの活性化は、低エネルギー、低酸素、虚血といった状態を防ぐことになるため、さまざまな病気の治療に役立つほか、老化を抑制する存在としても注目されています。
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