マガジンのカバー画像

水色

16
運営しているクリエイター

記事一覧

ジュスイ

ジュスイ

壊れかけた貝殻を拾い集める

いつかそれが大切になると信じて

言えなかった想いは

潮騒の中に消えていくのだという

今日は忌々しい雨ではなく

頭が痛くなるような曇りでもない

穏やかな晴れに夕暮れを

日が落ちるのを待っていく

例えば雨の日だったら

わざと押し倒されて水たまりに沈む記憶がある

例えば曇りの日なら

濁ったプールに手足を縛られて落とされた記憶がある

それでも晴れの日なら

もっとみる
Planetarium

Planetarium

見つけてほしい
       その目で

呼んでほしい
       その声で

どこにいるの

      ここにいるよ

プラネタリウム
       独りぼっち

数多の星は
     炭酸水はぜた
        白い鳥がよぎった
すべて僕のもの

すべてを愛さぬまま
         のばした手は

すべてを愛したまま
         何もつかめない

海と俺の夢

海と俺の夢

海に消えてったお前に

渡そうと思っていた指輪を

小瓶に入れて

波に揺れて消えていく小瓶を

いつまでも見続けている

婚約届を破るように

心が張り裂けそうだよ

お前がくれた言葉と気持ちの

置き場所を決めておかなかった

俺の責任でもあるんだ

波は激しく  月はうまく海にうつりこまない

クラゲの調べにお前は喰われ

聴こえてくるよ あいのうた

薬指を差し出して

指輪をはめて

もっとみる
君のそばに

君のそばに

言葉にならない感情は
今は無理に吐き出さなくていい
だから涙は流して
笑顔にならなくていいから

ぼくもそうだった
大人が怖くて 嫌いだった
「大丈夫です」という言葉を信じて
ずっと笑顔だった表面上のぼくを信じて
言葉にならない嫌悪感をずっと抱いてきた

ごめんね ぼくはわからないんだ
君のかぎかっこの外の言葉
地の文の空間に生まれる感情

でも心の檻に君の気持ちを
ずっと閉じ込めていたら
いつか

もっとみる
A Ice

A Ice

氷の世界のように、ここは冷え切っている。
感情の波にさらわれず、すべてが無口で音もなく。
ここが「ふるさと」だと、私は言えるのか?

氷の世界の中で、私はただひたすらに息をする。
鼓動は一定のリズムを、交感神経と副交感神経はバランスを保つ。
先走る情緒もなく、理性がすべてを制御する。
なのにここにいる意味は分からない。

イヤホンに閉ざされた氷の世界で、私は生きていた。
電子音の響くこの世界に、異

もっとみる
激情

激情

心の水が枯れるまで、僕は君を求め続ける。
その腕の血管に流れる血液さえも美しいのだろう。
君の大きな手と、僕の小さくて丸っこい手。
重ね合わせたらどうやって溶け合うだろう。
左手薬指にはめられたゆるい指輪をとったりつけたりする。
それが君の癖。あとよく愛想笑いをする。
そんな癖さえ、愛おしく、僕を狂わせる。
そして、さりげなく見ていることを、僕は知っている。
それでも気づかれないようにと取り繕うの

もっとみる
君になら、いいよ

君になら、いいよ

私ね、知ってたよ。
君が私の両親を殺したってこと。
それを知りながら、私に近づいたこと。
そして、私までも殺そうとしていること……。
ずるいね、ひどいよ。
もう私は、君のやること、否定できないくらい君が愛しくなってる。
君になら、って許してしまうくらいに。
ねぇ、お願い! 最期の私の言葉を、どうか聞いて!
君は、一瞬たりとも、私を好きじゃなかったの?
君がかけてくれた優しい言葉も、意地悪な言葉も、

もっとみる
寝れない夜を

寝れない夜を

笑わないで。

君の気持ちが痛いから。

いい言葉だけ並べないで。

君の言いたいことが見えないから。

人の気持ちなんて推し量らなくていいよ。

君がいい人だってことは知っているから。

自分を押し込めて涙を閉じ込めなくていいよ。

君が眠れない夜を過ごすのは僕もつらいから。

「お願いだから、好きにならないで」

そういった君の本当の気持ち、誰がくみ取ってやれるんだろう。

好きになれば誰かが

もっとみる
アコースティックギター

アコースティックギター

ギターの音色は教えてくれる。
うれしいことがあれば、笑顔で居ていいんだよ、と。
ギターの音色は教えてくれる。
かなしいことがあれば、どうか一人になろうとしないで、と。
甘いシフォンケーキのような音も、辛いカレーのような音も、
すべてを奏でられるこのアコースティックギター。
学校の屋上でこいつと一緒に歌を歌う。
春風だって踊っている。
青空の下、僕らは自由になった。

人魚姫

人魚姫

ここは、海の中よりも息苦しい。

車のガスがどこにいっても広がっていて、

人波がわたしの存在をかき消すみたい。

王子様を探しに来たのに、この世界は広くて、

どこにいるのか見当もつかないわ。

早く、海に戻りたい。

藍におちる

藍におちる

もしも僕が寒くて身体を震わせていたら

そのコートを肩にかけてくれるだろうか

だけど何度震えてもあなたには届かない

あなたが気づいていることを知ってるけど

もしも僕がもう少しできる子なら

頭を優しく撫でてくれるだろうか

だけどいくら器用だろうとあなたには届かない

引かれた線を切ることはできないでしょう

もしも僕が一人泣いていたら

物陰でそっと抱きしめてくれるだろうか

だけどどんな

もっとみる
グラデュエーション

グラデュエーション

一人で体育館にたたずむと、なんだか自分がちっぽけになった気がする。
一人で廊下にたたずむと、なんだか長い人生の道みたいに見えてくる。
一人で教室にたたずむと、なんだかいつもと違う雰囲気でくすぐったくなる。
一人で校庭にたたずむと、なんだか果てしなく続く青い空に手を伸ばしたくなる。

洗い立ての教室に、風が吹く。
紺の制服に映える桃色の花。
瞬きをすると、雫が滑り落ちる。

一瞬の三年間。無限の三年

もっとみる
Where is me?

Where is me?

自分がどこにあるのかわかりますか。
そう問われて、僕はうまく答えられなかった。
こうやって言葉を発する口も。
必死にペンを走らせる手も。
どこかへ連れて行ってくれる足も。
何か考え事をしている頭も。
確かに自分の一部であるけれど、それが本当に自分なのかはわからない。
こういう思考を作り出すのは脳であるし、感情を生み出すのは心なんだろう。
けれど、僕はそれを自分だと断定できる根拠を持ち合わせていない

もっとみる
あなたの世界に嘘はつけない

あなたの世界に嘘はつけない

私、知らなかったの。
音楽番組のあの人は、口パクしてるだけってこと。
メロンソーダの中には、メロンが入っていないってこと。
「好き」って言いながら、陰で悪口を言うってこと。
世界って、とっても広いのね。

だけど、私、知っていたの。
あの人が言う「ありがとう」は、本物だってこと。
にごりきっていたあの川だって、きれいになるってこと。
私が私を嫌いでも、ただひたすらに、私を愛してくれる人がいること。

もっとみる