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知ると面白い!!かんたん生物学:世紀の発明 iPS細胞と再生医療を知る♪

こんにちは。宮﨑です。
今回は、生物学のお話です。
みなさんが興味あるないを配慮できず申し訳ないのですが、わたしのバックグラウンドが生物学ということで、ときどき生物学のことをnoteに書いています。
ただ一つ、言えることは、生物学って不思議なことが多すぎてとっても面白いのです♪
すこしでも、興味をもってもらえたらうれしいです♪

今回は、わたしの専門である「発生生物学」の話です。

世紀の大発見「iPS細胞」の誕生

みなさんは、「iPS細胞」をご存知でしょうか?
2006年に発表されたとき、これまでの発生生物学業界に激震がはしりました!!その翌年、ヒト由来のiPS細胞が発表され、2012年にノーベル賞を受賞したことで一躍有名になりました。
現在、iPS細胞は再生医療における応用の研究が進んでいおり、「心不全」の治療や、目の治療などさまざまな分野で有用されています。

そもそもiPS細胞とは??何がすごいの??

iPS細胞というのは、ざっくりいうと、
ヒトの普通の細胞からつくった、どんな細胞にもなれる細胞(幹細胞)のことです。
基本的に動物の細胞は、受精卵の状態の時は、まだ何にも分化してないので、「どんな細胞にもなれる」のです。
それが、成長していくにつれ、必要な細胞に別れ、他の細胞にはなれなくなります。

その特性から、これまで、
人工的につくられた「幹細胞」は、受精卵からつくられてきました

人に応用すると考えると・・・、もはや倫理的にアウトな状態ですよね。
なので、これまで、動物の受精卵からつくった「幹細胞」を人間にどのように用いるか?という研究がメインでされてきました。

動物由来の細胞なので、拒絶反応への懸念、倫理的な懸念、たくさんの問題を抱えていたことは言うまでもありません。

そこに彗星の如く現れたのが、人の「受精卵」以外の細胞をもちいてつくられた幹細胞である「iPS細胞」でした。
倫理的な側面が解消された、「ヒト」から作られた万能細胞!!
世紀の大発見です!


iPS細胞から、人間の臓器をつくることができるのか??

ヒト由来の幹細胞が発明されたと言うことは、心臓とか、肝臓とか、臓器もそのうちできて、移植できる未来がくるのではないか??
そんな想像をしていませんか??

わたしもそう思っていました!!!

2006年の発表以来、すでに18年たっています。
研究はつづいていますが、今の所、移植可能な臓器までつくることができたという発表はありません。

それはなぜか??

ここで念頭にいれておいてもらいたいのですが、生物学はとても複雑なので、ざっくり書きます(笑)
専門家が読むと怒るかもしれないレベルのざっくりさだと認識して読み進んでいただきたいです。

いまだに移植可能な、完全にヒトiPS細胞幹細胞から臓器がつくれていないのは、臓器として分化していく過程があまりにも複雑だから

ということです。

例えば、心臓をつくろうとしましょう♪
心臓になる前の細胞でiPS細胞をつくります。
それを培養していきましょう!
培養液中に、心臓ができていくイメージだと思いますが、そうなりません。
同じ細胞が分化していくため、
それぞれのiPS細胞たちが、「わたしは心臓の外側の壁」、「わたしは血管」、「わたしは心臓の内部の空洞をつくる」と各々が自分の役割を理解して勝手に別々に分化することがないのです!!

役割を細胞が理解してかたち作るプロセスには、細胞間の相互作用が発生していて、その作用によって発現する遺伝子とタイミングがことなるため、ただ細胞を培養しても臓器の構造をとることができないという。
それだけ人間の臓器がつくられるプログラムは複雑で、まだ再現することができないでいる原因です。

逆に、人間心臓の細胞になりうるiPS細胞を、生きているブタに移植し、ブタの体内で人間由来の心臓をつくろうとした時、細胞間相互作用がはたらいて形はできるそうです。
ただ、血管を構成している細胞が、なんと、ブタ由来の細胞になるらしく、心臓がブタ由来の細胞が混じったものになるため、倫理的に応用が難しいとのこと。

そんな試みが行われているなかで、まだ確立されていない臓器の不思議♪
とってもおもしろくないですか??

現在の再生医療への応用

上記のような話をしていると、iPS細胞の再生医療の応用にネガティブな気持ちになる人がいるかもしれないので、補足させてください。
再生医療はこの18年で劇的に進歩を遂げています。

心不全の治療に用いられているのは、自分由来のiPS細胞のシートで、心臓の働きが悪くなった人に移植することで心臓移植を待つしかなかった患者への治療に貢献しています。

その他、角膜細胞を自分由来のiPS細胞で作る研究もされています。
これからもっと多くの治療への応用が期待されている分野です。

最後に

iPS細胞の発明は世紀の大発見ですが、がん化のリスクやいろいろなリスクを抱えながら未来のために研究開発がすすんでいます。

人の体の細胞はこの1つの細胞をつくることからもわかるように、とてつもなく万能で形作られているのが奇跡!
神様の存在を信じたくなるレベルの複雑さです。

人が生きているのが奇跡だとしたら、その奇跡に近い自分の命をどう扱うか、人生をどう生きるかはとても大事だと感じます♪

こういう記事を通じて、すこしでも生命の奇跡や、生物学や医学に興味をもってもらえたらうれしいです♪




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