「分厚い中間層」の復活をめざすのに、「分厚い中堅企業」を増やすことを目指さない不思議。

最近の様々な選挙の選挙公約で非常に不思議なことがあります。それは、右も左も手厚い中小企業支援を唄い、大企業を叩きたがることです。

自由民主主義・資本主義経済の中において、多くの資本を市場に投資し、かつ数多くの安定した雇用をもたらす大企業と言うのは、本来ありがたい存在であるはずです。また経営の透明性という点においても、経営と労働組合が対等に対峙し、株主と経営が分離することによって、ステークホルダーが様々に絡み合いつつ社会主義国にはない自由な発想のもとイノベーションを発生させ、社会発展に寄与している存在です。

本来、共産主義とか社会主義と言うのは、生産手段を共有し効率化して、構成員は分業化、専業化して生産性を極限まで高めることによって、社会の発展を企図するものであると義務教育のときには私は習った気がします。

しかし、最近の共産党、社民党、立憲民主党などの左派系の政党の街宣カーから聞こえて来るのは、「大企業は儲け過ぎだ、内部留保をため過ぎだ」「中小企業を支援します」という意味内容の言葉ばかりです。

一方で、立憲民主党などは日本の労働者の「一億総中流社会の復活」というようなことも言っているわけです。これが私には全く矛盾した内容に思えるのです。

最近、よく立憲民主党の江田憲司氏が色んなところで主張しているのが、法人税の負担率の問題です。

「分配なくして成長なし」江田憲司経済政策調査会長が経済政策を発表 - 立憲民主党 (cdp-japan.jp)

立憲民主党江田憲司氏の主張

細かいことは上記のリンクに書いてありますが、要は大企業が優遇されすぎているから課税強化すべきと言っているのですが、これが全く理解できません。赤い部分の超巨大企業が実質税率が低くて不公平だ、と言っているのですが、私にはどう見ても中間の1億円~10億円規模の規模の企業の負担率が一番不公平に見えますし、最大の問題に見えます。

そして、この規模の会社こそが、日本の次の発展にもっとも重要な層の企業群だと思うのです。

これまで何度か日本の中小企業のゾンビ化について書いてきましたが、中小企業が事業を拡大せず、資本投下もせず従業員も少なく抑えたほうが税制的にも優遇されて、更に補助金がじゃぶじゃぶもらえるのであれば、資本金を増やしたり従業員を増やそうとする努力はしなくなります。

吉本興業などは資本金だけを減らして、「私ら中小企業ですわ」と言っていますし、コロナ禍で毎日新聞やJTBも減資による中小企業化を行いました。個人的にはこれは、制度の悪用だと思っています。

日本の中小企業は経営がブラックボックスであることが多く、自分たちは赤字企業ですといいながら援助を受けていながら、経営者の懐は潤うような取引が行われていたり、労働組合ができそうになればそれを阻止するというようなことも起こりやすいわけです。

もちろん、アメリカ・イギリスなどの他の自由民主主義国家でも中小企業支援は行われるわけですが、「中小企業」の定義自体が日本の定義よりかなり大きな規模で定義されています。例えば米国では、一般的には中小企業は「従業 員 500 人未満の企業」と定義され、各種統計データで利用されます。

そして、日本では「大企業」に分類される資本金1億円程度以上かつ従業員が250~500人程度の企業が中小企業として支援されるのです。つまり、ちょうど立憲民主党のグラフの中間に当たる部分の企業です。

翻って宮崎です。宮崎の労働者に占める大企業従業者比率は7%に満たない全国最低レベルの状況ですが、おそらくその大部分は資本金1億円から10億円程度の中堅企業に属していて、立憲の資料の一番右に当たる超巨大企業は宮崎銀行程度です。もし中小企業の定義がアメリカの定義だと、宮崎の大企業従事者比率は1~2%ではないでしょうか。

立憲民主党の主張通り宮崎銀行に課税強化を行って、中堅企業の負担は減らさないとなれば、宮崎銀行では当然にリストラが行われて、宮崎経済は大打撃ですし、公共事業などでは取り戻すことができない損失を被るでしょう。

韓国の就業構造と比較してみることでもわかるはずです。韓国では財閥系の超巨大企業に入るか公務員になれなけば、零細企業に勤務するかチキン屋を始めるしかないと言われています。そのような就業構造だと経済も弱くなります。

日本では、アベノミクスによって生産性の低い零細企業にじゃぶじゃぶお金を回しましたが、事業を大きくするというモチベーションを上げにくい制度を固定したままになっていて、最近はゾンビ企業が更に増えていっています。

これからは、既得権者である地方の中小企業団体の言うことを聞くだけではなく、そこから発展して中堅企業へ、更には超巨大企業への拡大を促して行くような政策が特に求められるのではないでしょうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?