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出会わないほうが楽だった。だから出会えて嬉しかった。#アートとコピー

大人になってから、なにかに打ち込むということをほとんどしてこなかった。

学生時代、小学生から高校生まで必死に打ち込んできたバスケットボールも、大学進学と同時にほとんどやる機会がなくなっていった。お酒が飲める年齢になれたことが嬉しくて毎日のように飲みに出かけ、たまにバスケットボールをしてもそこに反骨精神なんてものはなかった。
高校生の頃に志した保育士という夢も、ピアノに挫折して、実習も子どものかわいさよりしんどさが勝って、多分向いていないんだなと勝手に決めつけてちがう道を早々に探し始めた大学生時代だった。
新卒での就職は希望していた出版業界に入れず、滑り止めで受けたまったく別業界の会社に入社してからはプライベート重視で、酒かキャンプかエンタメ鑑賞ばかりの週末を過ごしてきた。その時間も、それはそれで楽しいものだった。プライベートが充実するのは何にも代えがたい財産になる。何かに必死にしがみつかなくていい。等身大の自分で、好きな人たちと好きなことをやれていればそれでいい。そんな価値観で仕事は無心でこなし、稼いだお金はひたすら趣味に費やしてきた。

それだって、すばらしい人生のひとつであることは確かだ。けれど私は、それだけでは満足できない人種なのだということに、コピーライターという職種に出会って気づいた。
約2年半前、ひょんなきっかけでコピーライター養成講座に通い始め、キャッチコピーをはじめ言葉全般の奥深さに魅力を感じて転職を志し、昨年の暮れにコピーライター職として制作会社に転職することができた。(あっさり書いているけど本当は紆余曲折あったので、このあたりの詳しい話はまた別の形で書こうと思う)

大人になってはじめて、しっかり自分と向き合って打ち込んできた期間だった。

転職してからは新しいことの連続で、言葉を考える仕事に就けたことが単純に嬉しかった。尊敬できる上司や先輩にも出会うことができて、未経験者の私にとってこれ以上ないくらいすてきな環境で仕事ができている。
でもこれはあくまでもはじまりに過ぎなくて、この世界に入るということはこの先ずっとひたむきに打ち込み続けなければならないことなのだと、入社して数か月で身をもって体感した。ただ与えられた仕事をこなすだけではなく、言葉という武器を使ってもっと広い視野を持って活躍していきたい。そんな風に思っていたタイミングで、「アートとコピー」という講座が始まった。

「アートとコピー」とは、デザイナー・アートディレターとコピーライターがコンビを組んで課題に取り組む、勉強というよりも実戦形式に近い講座。コピーライターとしてだけでなく様々な分野で活躍している阿部広太郎さんが講師を務めることはもちろん、なにより同じような向上心を持つデザイナーに出会えてともに挑戦できるというのがすごく魅力的で、倍率の高い選考だったこともあって受講できること自体がまず嬉しかった。

けれど喜んだのもつかの間、始まってすぐに、私が必死になって打ち込んでいると思っていたその“努力”は、ここに集まる人にとってはひとつのベースに過ぎないことを思い知らされた。努力をすることが当たり前で、そこにとどまらずあらゆる挑戦を寝る間も惜しんでやってのける人たちが何人もいた。「努力は夢中に勝てない」という有名な名言があるけれど、ここに集まる人たちは傍から見ても夢中になってやってのける人たちばかりだった。仕事が忙しいのはみんな一緒で、そのうえで挑戦をやめないために、新しい自分と出会うために一生懸命になることができる人たち。そんな人たちが集う環境にコピーライターになって約3か月で飛び込むことができたのは、すごく幸運なことだと思う。

しかしそれと同時に、否が応でも自分の至らなさを思い知らされた。正直な話、何度も投げ出したくなった。自分には向いていないのかもしれない。そう思うことで自分を甘やかそうとしたこともあった。たとえ評価されることがあっても、それ以上にいいものをつくる人がいる。この講座内だけでもそうなのに、世の中にはきっともっとたくさんすごい人たちがいる。そんな人たちの中で、わざわざ自分が必死になって考える必要なんてあるだろうか。そんなネガティブなことばかりぐるぐる考えることが多かった。

けれどその度に阿部広太郎さんの熱意ある言葉に励まされたり、同期と酒を交しながら話す時間が、投げ出さずにやり続ける活力をくれた。以前デザイナーの黒石さんと一緒につくった記事(→「すべての飲み会に参加してみた結果、どれも冒険そのものだった。」)でも言えることだけど、傍から見たら雲の上のような存在の人でも、酒を交して話してみるとすごく人間味があることを知れる。自分だけが葛藤しているわけではなくて、みんながみんな少なからずしんどさを抱えたなかで逞しく生きていることを知れる。そんなことは元々わかっていたはずだけど、この講座を通して、ここで出会った同期とのかかわりを通して改めて強く感じることができた。

思えば、本当にいろんな人がいた。アート枠もコピー枠も関係なく、ひとりの人間として尊敬できる人ばかりだった。計8回の講義でコンビを組んだ7人のデザイナー・アートディレクターのみなさん、刺激的な時間をともに過ごした同期たち、フォトグラファーのみなさん、そしてなによりも、この講座を実現してくれた阿部広太郎さんと御堂島さん。本当にありがとうございました。みなさんのおかげで、この先の長い人生もまだまだ楽しめそうです。
「出会えたことに感謝」とか、そんな使い古された言葉ですら新鮮に聞こえるくらい、ここでの出会いは私にとって圧倒的でした。きっと、出会わないほうがずっと楽な人生でした。だから出会えてうれしかったです。

講座は終わりだけれど、ここでの出会いはまだ始まったばかり。コンビを組めた人も組めなかった人も、そしてコピーライターのみなさん、フォトグラファーのみなさんも、これからもいろんな形でかかわっていけたら嬉しいです。誘うので誘ってください。公募も企画も、そして飲み会も。先約さえなければ必ず行きます。

本当に刺激的な時間だった。この刺激をできるだけ長続きさせられるように、もっと強いものにできるように、努力をベースにもっともっと打ち込んでいこうと思う。

(昨日のド深夜に缶ビール片手に書いたのですごく恣意的でまとまりもないですが、せっかくなのでほぼ修正せず載せています)

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