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【オラヴ×みゆ】これもひとつの愛の形【コラボ企画】


⭐️このお話は、オラヴさんのお話の続きとなっています。
先に、オラヴさんのお話をお読みになってからお進み下さいね
😊📕


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 夫はさっきからリビングのソファでスマホをずっといじっている。私はダイニングのテーブルからそれを冷めた目で見ている。きっと夫は運命の人とLINEのやり取りでもしているのだろう。私は別に夫に対して嫉妬の思いなどは微塵も抱いていない。詰めの甘い男だなと思うが、このままもう少し様子を見てみる事にしよう。この事は、ここぞの時の切り札に取っておくのだ。

 夫とは結婚して25年が経ってしまった。子供達は独立して、今は夫と二人暮らしだ。別に仲は悪くないとは思う。身の回りの世話もするし、休日には連れだって出掛ける事もあるし、たまにはセックスだってする。だけど、お互い心ここにあらずの状態だ。夫は運命の人に出会った様で、私から離れたい思いでいる様な気がしている。ただ、決定的な事が無いので別れるに至らないのだろう。

 そんなある時、私の元に弁護士から内容証明が届いた。依頼人は、彼の奥さんだ。夫が運命の人と出会った様に、私も運命の人と出会ってしまっていた。もちろん奥さんがいる人とは知っていたけど、人の気持ちは止められはしないものだ。これが勝手な言い分だというのは百も承知だ。その言い分の代償がこの内容証明なのだから。

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 文面には殊勝な事が書いてあるが、それは本当の事かどうか分かったものではない。彼に聞いていた話とはずいぶん違うからだ。もちろん、私も彼の話だけを一方的に信じるほど世間知らずのお嬢ちゃんではない。

 彼は、いつも疲れ切っていた。私と会っている時だけは楽しそうな笑顔を見せる。私とこうやって会っている時点で誠実な人ではないのかもしれないけど、それでも私にとっては誠実で優しい人だと思っている。彼は仕事も良くできるし、頭も切れる。そのうえ様々な事に造詣も深く身のこなしもスマートだ。彼の奥さんは彼のどこがそんなに不満だというのだろう。

 彼の奥さんは、彼の世話を結婚後長くないうちから放棄しているらしい。そのうえ、子供にまで彼の悪口をある事無い事吹聴しているという。一般的に子供は母親が大好きで全てを信じているものだ。その母親が父親である彼の悪口を言うのだ。彼の子供は、母親の言葉を信じきっていて、彼を憎んでいる様だ。人の家庭に口を出すのは野暮だけど、話を聞く限りでは彼も彼の子供もかわいそうだ。特に子供はよりかわいそうだと思う。

 内容証明の紙切れを手に私はしばし考えた。そして、傍らに置いてあったスマホを手に取った。

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 翌日、私は弁護士事務所を訪ねた。事務所に入ろうとした時、ぴゅうっと爽やかな秋の風が通り抜けて私のスカートをひらりと揺らした。中に入り、受付の若くてかわいい女性に案内されて通された部屋の中にはあの人がいた。あの人とは、昔の彼で今はこの弁護士事務所を開業しているやり手の弁護士だ。

 「久しぶりだね。相変わらず、君はキレイだね。この後食事でもどう?」         
 「もう、そんなお世辞も社交辞令もいらないわ。無駄話をしている時間はないのよ?ここでの相談料は時間で決まるんだから」
 「君は気の強いとこも相変わらずだな。僕は君のそんなとこも好きだけどね。そんな君を敵に回そうとするなんて、相手さんも災難だな」

 私は彼の奥さんの事を話して、彼を助け出したい事、こんな要求はとても飲めない事など事細かに話した。時間は延長になったけれど、この先の話の進め方も大まかに決まった。あの人は、やり手なだけあって任せていれば必ず勝てる、そんな気がした。別れ際、私はあの人に告げた。

 「今日はどうもありがとうございます。先生に全てお任せします。そして、それともう1件お願いしたい事があるの」

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 「私、さっき弁護士事務所に行ってきたわ」
 「そうか。俺のせいで君に迷惑掛けるな」
 「何を言っているの?私は大丈夫、絶対に負けないから。あなたを必ず救い出してあげるから」

 レストランで食事をしながら、彼に今日の弁護士事務所での話をした。今日も彼は疲れた顔をしている。そんな彼を見ていると、私はどこまででも闘志が湧いた。絶対、彼を救い出して一緒になってやるのだ。世間が何と非難しようとも、味方が誰一人いなくなったとしても、私は彼と一緒になってやる。それが運命というものなのだ。

 夫は今日は出張だと言っていた。おそらく、運命の相手と一緒にいるのだろう。楽し気に、いそいそと荷造りをしていたから何をするつもりか丸分かりだ。今頃は夫も運命の相手とお楽しみ中なんだろうと考えたら、なんだかおかしくなってしまった。私達は今、お互いに違う相手と同じ事をしているのだから。

 頭の中から夫の事を追い出し、今は彼との時間を思いきり楽しもう。私は着ていた服を脱ぎ、シャワーを浴びに浴室へ行くと、浴槽にお湯を張った彼がのんびり湯船に浸かっていた。

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 それから、私は調停だ何だかんだと1年程を彼の奥さんとの争いに費やした。それは、なかなか精神的にも参ってしまう期間で、心が折れそうになる事も何度もあった。その度に、弁護士のあの人が有効なアドバイスをくれて助けてくれたし、彼からもたくさん励ましてもらった。それに、彼自身も奥さんとがんばって戦っているのだ。私達は、勝利を手にするべく一丸となって立ち向かっていった。

 三人で一丸となった甲斐があり、見事に私達は勝利を手にした。彼は無事に離婚をする事ができ、私の慰謝料も大きく減額されていた。本当に長い時間を費やしたと思う。だけど、このような大変な思いをしてまでも、私達は一緒になりたかったのだ。彼をあの環境から救い出して、いつも安らいでいて欲しかったし、心からの笑顔を浮かべていて欲しかったのだ。

 弁護士のあの人に、奥さん宛ての慰謝料とあの人への報酬を支払った時、やっと終わったんだと改めて思った。弁護士事務所から外に出ると、初めてここに来た1年前と同じようにぴゅうっと爽やかな秋の風が吹き抜けていった。

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 自宅のリビングでコーヒーを飲んでいると、夫が帰ってきた。上機嫌で手には私が大好きなケーキ屋さんの箱を持っている。

 「お帰りなさい。ケーキを買ってきてくれたの?」
 「ただいま。これ、君が好きなお店だろ?ちょうど通りかかったんだよ」  
 「ありがとう。後でいただくわ。ねぇ、私ね、あなたに見て欲しい物があるの」

 私は、リビングのテーブルにA4の封筒をすっと置いた。


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いかがでしたか?

2人で相談して、ドロドロの恋愛ものを書こう!という事になったんです。
オラヴちゃんから届いたお話を読んだ私、ひえ〜、怖いよぅ😱ってなりました。
私は、相手役の女性目線で物語を書くことになっていましたが、頭の中をドロドロ仕様にして、主人公になりきって書きました笑
熱い気持ちを持っているけど、冷静な部分も持っている強かな女性のつもりで書きました。
今、読み返したんですけど、ちょっとドロドロ具合は控えめだったかなぁ。

愛の形は様々です。
人それぞれ、色々な形があることでしょう。
どんな形であれ、愛は愛なんだなぁと思います。

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8月の終わりに思いつきで始めたコラボ企画でした。
想像していたよりたくさんの方に協力して頂いて、たくさんの面白い記事を書く事ができましたし、面白い記事を読ませて頂く事ができました。


そんなコラボ企画のラストを飾って下さったのはオラヴ153さんです。


オラヴちゃんと最初に知り合ったのは、何でしたっけ?
たしか、みん俳の俳句や短歌の記事だったような気がします。そんな時、オラヴちゃんはタロットカードを引いて、その人を語る企画をなさいました。その時、私は真っ先に手を挙げて語ってもらいました。


これが本当に私にぴったりの物語で、私は心底びっくりしたのでした。

これを機にとても仲良くなったのですが、オラヴちゃんと私は共通点がたくさんあるんです。タロットを引いたり、創作をしたりという事のほかにも、個人的に話をするようになって分かったのですが生き方や考え方が似ているんです。
それに、はるなさんによると私達はホロスコープも似ているんだそうです。
もしかすると、私達、生まれる前から仲良しだったのかもしれませんね♪

オラヴちゃん、今回は遊んで下さってありがとうございます⭐️
また、何かして遊びましょうね。
これからもよろしくお願いします💗


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💚今回コラボして下さった皆さんです


💜 第1弾はTwentyさん

💜 第2弾はももまろさん

💜 第3弾はヒスイさん

💜 第4弾はテルテルてる子さん

💜 第5弾はたゆ・たうひとさん

💜 第6弾は茉叶さん

💜 第7弾はRyéさん


無事にコラボ企画は完走しました。
一緒に遊んで下さったみなさん、並びに記事を読んで下さったみなさん、どうもありがとうございました⭐
とても、とても、楽しかったし、いい経験になりました😊



今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪










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