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【シロクマ文芸部】文化祭で恋をして


 文化祭でシュンヤ先輩のクラスでは、メイド&執事喫茶をするんだと親友のナギサが教えてくれた。あたしは、一つ上のシュンヤ先輩の事が好きだ。好きっていっても憧れの方が近いのかなとは思うけど、校内でシュンヤ先輩を見掛けるといつも目で追ってしまう。たまに目が合うと、その日は一日中浮かれてしまう。自分でもバカみたいとは思うけど、こればかりはどうしようもない。

 「ねえ、マナ。シュンヤ先輩のメイド喫茶行くでしょ?メイドも執事もキレイな男女の先輩達がやるらしいから、きっと眼福よ。ほら、シュンヤ先輩だったら絶世の美女よ、絶対!」
 「いやーん。あたし恥ずかしいよ。そんなとこ、行けないよ。あたしなんてさ・・・」
 「もうー、マナったらまたそんな事言う。もっと自信持ちなよー。マナはとてもかわいい子なんだから。優しいしさ」

 ナギサはそう言ってあたしを慰めてくれるけど、ほんとあたしって何の取柄もない。ナギサはかわいくてハキハキしていて頭も良くて、何でそんな子があたしと仲良くしてくれているのか不思議でたまらない。でも、ナギサとは気が合って一緒にいると心地いいからずっと仲良くしていきたいと思っている。

 シュンヤ先輩はとても目を引く顔立ちだ。イケメンさんで、背もすらりと高くて、サッカー部のキャプテンをしている。そのうえ、頭も良くて性格の良さそうな感じもする完璧超人みたいな人だ。そんな人と私は接点がまるでなく、校内ですれ違うのが精一杯だ。だから、今度の文化祭は最接近できるチャンスでもある。

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 「ねえ、ナギサ。あたし思ったんだけどさ」
 お昼休み、お弁当を食べ終わったあたし達は購買で買ったプリンを食べながら文化祭の話をしていた。
 「何?」
 「あのね、あたし、メイド喫茶でシュンヤ先輩に手紙を渡そうと思うんだ」
 その言葉を聞いたナギサはあたしの手を取り満面の笑みを浮かべて言った。ああ、ナギサって笑顔がとてもかわいいなぁ。
 「マナ!!そうよ、手紙渡すのいいと思うよ。きっと上手くいくよ。あたしには分かるの」
 ナギサの目がちょっといたずらっぽく光ったのが気にはなったけど、ナギサに背中を押されて文化祭で頑張ってみようと思った。

 文化祭の前日、あたしは取って置きのレターセットコレクションを棚から取り出した。あたしはかわいいモノに目が無くて、かわいいレターセットもたくさんコレクションしている。シュンヤ先輩に手紙を書くので、やっとこのコレクションを使う事ができる。どれにしようかあれこれ物色して、ようやく決める事ができた。結局選んだのは薄いグリーンの無地のシンプルなモノだった。ありのままの自分を見て欲しいという気持ちも少なからずあったからだ。

 文面は、ナギサにも相談せずにここ数日悩みに悩んで練り上げた。正直、ここ数日はろくに勉強も手につかなかったほどだ。

 ブルーブラックのインクの入った万年筆で手紙を書いた。二回失敗して、三度目の正直でやっと仕上がった。書き上げた手紙を読み直して、最後にLINEのIDを書いておいた。シュンヤ先輩から連絡が来る事は無いと思ったけど、万が一の事をつい思ってしまったから。それに、ナギサが上手くいくって言ったから。

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 文化祭当日、あたしはナギサと真っ先にシュンヤ先輩のクラスに行った。煌びやかに飾り付けられた教室の看板には「メイド&執事喫茶GOGOGO」と書かれていた。いくら3年5組だからといってそのネーミングはないと思う。ちょっと苦笑いしながら中に入ると、そこはまさに眼福の世界だった。イケメンの男の先輩はメイドに、キレイな女の先輩は執事になっている。当然、シュンヤ先輩のメイド姿も美しかった。思わず見惚れていると指名をどうするか聞かれたので、シュンヤ先輩の源氏名のジュンコさんを指名した。

 席に着くと、ジュンコさんがオーダーを取りに来てくれたのでナギサとケーキセットを注文した。ジュンコさんを目で追っていると、ナギサがニヤニヤしてあたしに話しかけた。
 「シュンヤ先輩、きれいねぇ。他の先輩達もみんなステキで目移りしそうね」

 ジュンコさんはあたし達にケーキセットを持って来てくれると、あたしの横に座ってくれた。
 「ケーキセットお待たせしました。今日は指名してくれてありがとう。君達は二年生?」
 ジュンコさんは初見のあたしに気さくに話し掛けてくれた。話もとても面白くて、とてもいい人だとますますハートの目で見てしまう。あっという間に時間が過ぎ15分の持ち時間が終わった。
 「じゃあ15分経ったから、行くね。今日はありがとう。ゆっくりしていってね」
 「せ、先輩っ。これを・・・」
 あたしはミニバッグから手紙を取り出して、ジュンコさんに渡した。ジュンコさんは驚きながらも受け取ってくれた。ジュンコさんの後ろ姿を見ながら、あたしは力が抜けたような気がした。ナギサはそんなあたしを見て、グッジョブのサインをしてくれた。

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 その日の夜、お風呂から上がって部屋でぼんやりしているとLINEの通知が入った。なんとLINEの主はシュンヤ先輩だった。あたしはスマホを握りしめて、茫然としつつも心臓がバクバクしてくるのを感じていた。シュンヤ先輩を登録して恐る恐る画面を開いた。

 「今日はメイド喫茶に来てくれてありがとう。手紙もありがとう。とても嬉しかったからLINEしたよ。」

 というメッセージが入っていた。先輩、どうしてこんなにすぐにLINEくれたんだろう。もしかして、すごい遊び人なのかな。あたしは嬉しいはずなのに、なんだかとても不安な気持ちになってしまった。

 「シュンヤ先輩、今日はどうもありがとうございました。ジュンコさんはとてもおきれいでした!」
 「ありがとう。なんだか自分でもまんざらじゃなかったよ。変な道に目覚めなきゃいいけどw」
 「男でも女でもきれいだから、どっちでもいいですね☆シュンヤ先輩、どうして私にLINEくれたんですか?初めてお会いしたばかりなのに」
 「それはね、僕は君の事が好きだからだよ」

 そのメッセージを見て、あたしはビックリして「はい!?」と大きな声を出してしまった。すると、隣の部屋のお姉ちゃんから「うるさい!」って怒られてしまった。

 「先輩、わたしの事知ってたんですか?」
 「知ってたよ。マナちゃん、ナギサの友達でしょ。僕ね、ナギサの従兄なんだよ。」

 その瞬間、あたしはあの日のナギサのいたずらっぽい目の光を思い出していた。なんて事だ。そんな繋がりがあったなんて。だからナギサはあたしに上手くいくって言っていたんだな。

 「前にマナちゃん、駅でおばあさんを助けていたでしょ。遅刻しそうだったのに、助けてあげていたね。僕はその姿を見て以来、君の事が気になって好きになってしまったんだ」

 たしかに、あたしは駅でおばあさんを助けた事がある。結局、あの日は遅刻してしまったけれど、別にいいやと思ったのだった。その時のあたしを見ていてくれていたなんて。なんとも言い難い気持ちになって、なかなか返信を返せないでいた。すると、今度はナギサからLINEが入った。

 「シュンヤ君から連絡きた?従兄っていう事黙っていてごめんね。あたし、マナには自分の力でがんばって欲しかったの。ほんと、ごめんね。怒ってる?」
 「ナギサ、ビックリしたけど怒ってなんてないよ。あたしの事考えてくれていたんだね。ありがとう。シュンヤ先輩から告られたけど、どうしよう」
 「マナ、良かったね。告白、受けなよ。シュンヤ君は本当にマナの事が好きなんだよ。あたし、相談受けてたから」
 「分かった。ありがとう、ナギサ。今度パフェ奢るね!」
 「うん♡待ってるね。マナ、シュンヤ君は従妹のあたしが言うのもなんだけど、本当にいいヤツだから。シュンヤ君の事よろしくお願いします」

 あたしは、先輩に返信すべく文面を考えようと思ったけれど、心のままに返信する事にした。

 「シュンヤ先輩、わたしも好きです。よろしくお願いします♡」


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小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「文化祭」です。


文化祭、すごく懐かしい言葉です。そうか、もう9月ですからね。

私が通った学校は中学も高校も文化祭はありましたが、どちらも模擬店はもちろんクラス別の出し物なども無く、イマイチ盛り上がりに欠けていたような気がします。
もちろん、劇やバンド演奏などはあったので、そういう出し物は盛り上がっていました。でも、模擬店ですよ、模擬店。模擬店で友達とキャッキャしながら買い食いしたり、怪しげな占いとかお化け屋敷とか体験してみたかったです。

マンガやドラマなどでは当然の様に出てくる模擬店が体験できなかった私は、なんだか青春が消化不良気味なんです。それに、高校を卒業するまでは男っ気が全く無かったので、そういう部分も消化不良です。

それで今回の創作では、模擬店も恋のお話もぶっ込んでみました。自分がやってみたかった事が書けたので、だいぶ満足しました!
それに、コバルト文庫っぽいお話って書くの楽しいんですよね~。


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪


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