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「当事者を増やす」マンガの在り方 【まんが0.1】

日頃私がマンガを作ったり、マンガから生まれたコンテンツから派生した企画を展開したりする際には、数万人から数百万人に届くことを目指して取り組んでいます。
願わくば数千万人、数億人に届くものになってほしい、
そんなふうに思っています。

そうした取り組みはこれからもずっと続けていくつもりです。

一方で、「膨大な人たちに届く」ことだけが正義ではない
マンガの在り方への関心
も、最近強まってきています。

その一つとして取り組んでいるのが、
川崎市 高津区の大山街道エリアの方々との「まちのマンガ企画室」です。


■休日マンガ描きが世界一楽しく過ごせるまちを目指して

マンガの地域での活用として有名なのは「聖地巡礼」的な取り組みです。
それらが「フォロワーを誘致する」活動であるのに対し、
大山街道エリアの方々と取り組む「まちのマンガ企画室」は
当事者を増やす」活動になります。

ヒットコンテンツや人気漫画家に依拠するのではなく、
主役はあくまで一般市民の皆さんです。

まちのみんながプロを目指すでなく、それでも、
日常的にマンガを描き、街中で自分の作品をお互いに見せ合う
そんな文化を生み出したいと思っています。

近しいのは、草野球やテニス、楽器演奏のイメージです。
プロの選手や演奏家になることを目指しているわけではない。
皆が皆、大会や演奏会に出るわけでもない。
それでも、各自が真剣に取り組み、その活動をおおいに楽しんでいる、
そんなマンガ作りの機会もあっていいと思っています。

コミケや同人誌活動に近しい部分はあるかもしれませんが、
もっともっと広く開かれた状態を想定しています。

たとえば、幼い頃からずっとマンガを愛してきた私でも、コミケに参加するときにはいくらかの敷居の高さを感じてしまいます。
一方で、野球やテニスはやったことがある程度の私でも、草野球や友人とのテニスには気楽に参加できます。
プレー自体ももちろん楽しいけれど、その活動を通して、趣味嗜好が全く異なる人たちとのコミュニケーションがとても楽しい。
むしろ大事なのは運動後のビールだったりする。

そんなふうに、「落書きするのは好きだったけど、マンガは描いたことがない」くらいの人が、気楽に参加できるマンガの活動の場を作ってみたいと思っているのです。

スポーツや音楽、ダンスのように、マンガを描くことが、地域の交流のきっかけになり、
大山街道周辺地域が「休日マンガ描きが世界一楽しく過ごせるまち」になったら、
そんな夢を抱いています。

マンガによって地域の「当事者を増やす」活動です。

(※記すまでもないことですが、上記は聖地巡礼のような取り組みやコミケや同人誌活動などに対する批評ではありません。それらとはまた別種の目的を持った取り組みを作っていきたいと考えています)


■子どもにマンガの作り方を身につけてほしい

そうした取り組みの第一弾として、
子どもたちにマンガの作り方を教えるワークショップ
を開催して、私も講師をしました。

子ども向けのイベント運営は本当に久しぶりだったので、本当にたくさんの発見がありました!

子どもの発想の広がりは事前の想定を軽々と超えていくなあ
とつくづく実感した90分間でした。


高校生や大学生向けとは何より違うのは、
各自が実際に手を動かすことから始めないと一瞬で飽きられてしまう、
ということです。

型を教えるよりも、
自分の思いつきをどう転がし、広げていくか、
そのヒントを感じ取ってもらうことが重要なんですよね。

マンガにおいてもデジタルツールが隆盛を極めている昨今です。
だからこそ、
鉛筆を握り、消しゴムのカスが机にたまり、手が汚れていく、
そんなリアルな感触が発想を羽ばたかせていく様子が目の前で繰り広げられていくことの幸福を改めて感じられた時間でもありました。

■「まんが-1.0」あるいは「まんが0.1」

マンガによって地域の「当事者を増やす」活動は
意外と他に例があまりなく、
「マンガ3.0」と標榜しようかと思ったのですが、
進化のかたち、ではないなと立ち止まりました。

むしろ、多くの人が子どもの頃に味わった
白い紙に無心にえんぴつやクレヨンを走らせていく
あの喜びを基本に
したいと思っています。

それは、進化ではなく、初期衝動に近いものだと思っています。

昨今話題の『ゴジラ-1.0』にならって
「マンガ-1.0」も考えたのですが、
退化っぽく見られてしまうのも違うかなと考え直し、
今は「まんが0.1」が一番しっくりきています。

1.0よりも、もっともっと手前の、
ハイハイから立ち上がって歩いたような
一歩目のイメージです。


冒頭にも書いたように、私はこれからも、
100万人、1,000万人、1億人に愛されるコンテンツ作りに
果敢に挑戦していきたいと思っています。

それと同時に、
一見真逆な、でも実際は根本で繋がっている
まんが0.1」もまた増やしていきたいと思っています。


◎追記:初期衝動がほとばしったマンガ『ザ・野性化マン』

そんなこんなを書いていて思い出したのですが、
まさに「まんが0.1」の実践とも言えるマンガ作品を電子書籍化して、Kindleに出しているのでした。

ぼくが小学生のころに、友人の入江くんと合作で作ったマンガです。
傑作です!

Kindle Unlimited 会員は、読み放題のようなので、よろしければご笑納くださいー

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