現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その28)

 しかし、少し見慣れて落ち着いてくると、これほどの身分の者では聞いたことのない、興醒《きょうざ》めな嫉妬深さが目にあまるようになってきた。自分を見捨てて他の女の家に入り浸るような、体裁が悪く憎らしいことがなくても、ほんの少しよそよそしくしたり、不審に思うような素振《そぶ》りを見せたりするだけで女四宮は我慢できず、今にも死んでしまうかと思うくらいに恨み言をまくし立てるため、「新婚早々、このように苦しむことになるとは思わなかった」と権中納言は思い悩んだ。ただ静かに向かい合っている分には手放したくないと思う魅力で、情が深く、慕わしい女性ではあるが、「同じ女でもこんなに豹変《ひょうへん》するのか」と驚くほどひどく嫉妬し、心の中で思ったことやその日の出来事を逐一報告する羽目になったため、すっかり心が滅入《めい》っていた。

(続く)

 女四宮の欠点が具体的に描写され始めました。黙って座っていれば美しい女性ですが、嫉妬深さは尋常ではなく、少しでも気に入らないことがあるとすぐに暴れるため、一切の隠し事ができず、洗いざらい報告させられています。多少、権中納言に同情したくなる気持ちはありますが、一方で、本命は今でも女三宮(+音羽山の姫君)の上に、結婚前から「女四宮との結婚が嫌で逃げている」と世間で噂されていた事情を考えると、女四宮が疑心暗鬼になるのも仕方ない面はあります。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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