現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その45)

 そうはいっても、男女の関係が絡むと親子の情も薄れてしまうのだろうか。関白は次第に、いっときも女三宮と離れるのが耐え難い気持ちになっていった。言い様もなく浮かれる関白を横目に、権中納言はさりげなく振る舞ってはいたものの、ひどく情けない気分だった。

  あさましや海人《あま》の釣舟《つりふね》漕《こ》ぎ返り
  果ては見慣るる千賀《ちが》の塩竃《しほがま》
 (何とも情けない。海人《あま》が釣り船を漕《こ》いで元の場所に戻るように、あの人が最後には見慣れた家族になってしまうとは)

(続く)

 前回、権中納言は関白と女三宮の関係を受け入れたように見えましたが、浮かれる関白を目にすると心が落ち着かず、まだ心の中でくすぶっています。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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