現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その63)

 宮中のしきたりのため、関白は皇后宮《こうごうのみや》の見送りに参列できなかった。名残惜しくも悲しく思う関白は、皇后宮のためと明言しないまま、縁者たちに頼んでしかるべき山や寺で修法《しゅほう》などを始めさせた。つれなく薄情な皇后宮の心だったが、「世にいる間は命の限り声を聞いていたい」と神仏に祈り、病状を案じた。
(続く)

 皇后の容体を心配する関白の姿が描かれています。そもそも二人の密通が心労の始まりですが、皇后を思う気持ちは少なくとも本物のようです。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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