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【小説】奔波の先に~井上馨と伊藤博文~#151
26 明治14年の政変(5)
海軍卿の榎本武揚の失言とされる出来事が薩摩系の将校と関係の悪化を生んでいた。榎本の処遇については、馨も考えるところがあって、新設された農商務卿にと考えていたが、黒田からフランス公使の意見も出て、薩摩と対立していた。結局宮内省御用掛に落ち着いた。
財政問題もまた再燃してきて、博文には頭の痛いことが続いていた。しかも馨の不在をついて、大隈は輸出促進のための会社を作っ
【小説】奔波の先に~井上馨と伊藤博文~#152
26 明治14年の政変(6)
まず博文は馨と、財政整理で浮かび上がっていた、開拓使の廃止と払い下げについて、進めることにした。
「開拓使は、底なし沼じゃ。北海道は広すぎるし、採算が取れるようにするには、金がかかりすぎるんじゃ。損金切りではないが、ここいらで、打ち切るのも必要なことだと思っちょる」
「だが、黒田にとっては廃止など、考えもしないことだろう。それを、どうやって取り込むか」
「俊輔、わ