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いい男

いい男ってどういうものだろう。
有名芸能人とか、バチェラーみたいなミスター・パーフェクトなのか。
美輪明宏さんはかつてこう言っていた。
「財、知性、知名度……。不完全な女ほど男に対する要求が多い。殿方は美しければ結構。そう言えるのが一流の女。」
えー?そうかなあ美輪さん?今はそんなお考えではないと思うけれど。
私は若い頃から、それに加えて見てくれもどうでもいい。


もう欠点ばっか❗️と見えるようなひとが、本当はひどく心根が優しいのがバレてしまうことがある。剥がれて見えた地金が、純金の男。
私は、そんな男性にいつも参ってしまった。
醜悪な厚い皮を剥くととてつもなく綺麗な肌をした、美味しい果実。ライチやドラゴンフルーツのような。
上品な甘さとなめらかな舌触り、うっとりする香気。ゆっくり、味わう。毎日、食べたいなと思う。決して飽きることのない天の食べもの。


そういう男性は例外なく名言を言った。
この半世紀生きてきて、きちんとお付き合い(含結婚)した男性は少なくともそうだった。
それは大切な、私の心の宝石。決して色褪せず失くならず盗まれることもない。けれど現実の宝石など比べものにならないほど貴(たっと)い。世に二つとない宝もの。

その言葉はありきたりであってもなくてもいい。
言葉は状況や言う人によって重みや意味合いも変わるものだから。
例えばデートのたびに格言みたいなこと言われたりしても
「松岡修造とか相田みつおの日めくりカレンダーか❗️」
と冷めてしまうことだろう。どういう形であれ下手な『人間失格』的ウケ狙いもきらい。
人と一緒に楽しみたい心持ちの人か、自分だけウケてチヤホヤされたい人かはすぐ分かる。
人格を疑われるような愚かしい話やこっちまで暗くなるようなことを聞かされるのも、もちろんイヤ。とっとと逃げちゃうもん。
そういう男性はたいてい、自分の女性の好みや作法にはうるさいがご自分は傍若無人で無礼だったりする。
ねえ、鏡って持ってらっしゃる?

昔はそんな疲れる食事から帰って、鏡を見た。
何やってるのよバカ水音。あんな下司とごはん食べるようなあんたが醜いのよ。しっかりしなさい。楽しくないことしてたら不細工になるわよ?
恋なんかもういい。楽しんだらいいじゃない。期待なんかもうしない。重たいわ。


ふわり。



言葉を、宝石と思ったことはあるだろうか?
そのように扱い、発し、また受け取ったことは?
それを発するひとは、美醜も知や財のある無しにも関わらず、宝のようではなかった?
あの果実のように美味で、鳥の声や音楽のように優しくなかった?


チラチラまたたく金や銀の木漏れ日。至上の星のひかり。それを有り難く受けるためには茶色い木の肌や黒い土、あいまいなあらゆる色の草や虫たち、時にどぎつい色のものや、恐れ恥ずかしがるものたちをそっと抱いてやっている闇も必要なのだ。光だけでは何も存在しえない。それが森羅万象というものならば。


「You mean a lot to me.」


そう。美しかった。
その時たとえ暗闇にいたとしても、肉体が隔たっていても、私にはその顔が見えた。
その瞬間、金色の大雨が降るように、私は恋に打たれて立ち尽くしていた。
なぜこんな綺麗なものを、私にくださるの?


一番それを沢山、降り注いでくれたひと。
離れても共に在るし、出逢えたことを感謝しています。
あなたに逢えて、好きになって、好きになられて、今後何が起ころうと私は世界一の果報者。
お返しするものがないの。何も持っていない。
けれどあなたはいつも半泣きで笑いながら、光りながら、私を見つめ、長いこと触れている。
笑う練習をしないとね。でも、あんまりたっぷり嬉しすぎると、泣いてしまう。
それすらあなたは分かってるのよね。



いいお酒、買ってあるから。シャンパンも買おうかな。いいでしょう?それくらい。

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