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こんな今だからこそ戦争の小説を読んでみる。#となり町戦争

きょうの記事は、読書感想文です。

戦争を止める術など、本当はないのかもしれない。最近、どこか達観してしまっている自分が居る。コロナ禍、戦争、災害。自分にすら、永遠の平和の保証は無いのだと、思わざるを得ないことばかり起きる。


話は変わって、最近私は昼休みに本屋に行くようになった。職場の雑然としたオフィスと同僚たちの盛んなお喋り声から遠く離れ、1人静かに本屋の廊下を歩く時間。煩わしいことを何もかも忘れていられる。

職場の近くには古本屋があるのだが
そこで見つけた「となり町戦争」という本。

その本がどうにも気になって
買って読んでみた。80円だった。

小さな田舎町に住む主人公・北原修路。ある日、家に届いた町の広報誌を見て彼は驚く。そこにはハッキリと「隣町と戦争が始まる」と書いてあった。以来、町では何も変わらない日常が続くものの、広報誌には「戦死者」が毎回記載されていく。今が戦時下である、ということをなかなか受け止めきれずにいる北原。そんな彼の元に、今度は役場から「隣町の偵察任務を命ずる」という文章が届いて―――


なんとも安直な感想だが、とても面白かった。グイグイ惹き付けられるリアリティーと、じんわり漂う非現実感。どちらかが行き過ぎることなく、均衡を保っている。このさじ加減がとても絶妙だった。

日常の何でもない時間にふと感じる戦火の余韻。今が戦時下であることを忘れそうになるほど、何も昔と変わらない生活なのに、ただ増えていく戦死者の数だけが事態の深刻さを伝えていく。

なんだかこう、今この世の中を表してると言っても過言ではないぐらいの内容だった。流行り病気もそうだし、遠い異国の戦争すら日本に伝わるころにはただの数字になっている。現地で飛び交う銃声もミサイルの着弾音も悲鳴も何もかもかき消され、「数万人が死んだ戦闘」という事実だけになっている。そのことに違和感を感じつつも、抵抗できない小市民の自分。

北原の姿に自分を重ね合わせながら
どんどん読み進めてしまった。


戦争を止める術など、本当はないのかもしれない。でも、戦争を読んで、知って、考えることは今からでもいくらでも出来る。こんな世の中だからこそ、脅威を、恐怖を、ひとつずつ知っていくことを止めないで欲しい。なぜなら、本当に恐ろしいことは「戦争していることを忘れられてしまう世の中になる」ことなんじゃないだろうか。

って、小市民なりの小さな小さな着地点で
この感想記事を締めたいと思う。



おしまい。



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