見出し画像

からくりからくさ 梨木香歩

亡くなった祖母の古民家で、手仕事が好きな若い娘4人が「りかさん」を取り囲むように微笑ましく、慎ましく過ごす日々が描かれた作品。

形式上は寮で、孫の蓉子と美大生の2人と、鍼灸の勉強で日本に来たアメリカ人のマーガレットがひとつ屋根の下で暮らしている。
中近東のキリムという織物に熱中しており、サバサバとした性格と物言いの与希子に、織物が名産の島で生まれ育ち、自らも機織りをする大人びていて物静かな紀久。染織師見習いの主人、蓉子。
四者四様だが、手仕事を愛している点で共通する4人は自然に意気投合してゆく。

網戸を買うための節約として、庭の植物を食べたり育てたり、4人が同じ場所に集い、各々のことを心穏やかに進めて居る情景もまたいい。
蓉子には自然と慈しむ力があり、草花やりかさんや人々を無意識的に癒してあげられるところがあり、りかさんの声が聞こえていたこともある。

この作品の肝である「りかさん」とは、蓉子が祖母から幼い頃に譲り受けた日本人形であり、蓉子の半分のような心を通じて会話ができる救いのような存在の人形である。
祖母の死により、りかさんは喪に服す形で言葉を伝えて来ることもなく抜け殻のような状態であったが、4人の中心として食卓に座ったり着物やワンピースに着替えたりもする。

人形と織物と名も無き女たちの歴史がミステリー調に進んでいき、この4人が集まったことが必然だったのではと思うストーリーとなっており、4人の身に起こる出来事と共にミステリーは明かされていく。

結界の張られた家。
「世の中が凄い勢いで変わっていく、というより攪拌されていくようでめまいがとまらない、けれど、あの家はその渦から外れているようだ…」
家を訪ねた知人がそう表現する4人の住む日本家屋とその暮らしぶりには、つましくも愛しいものがあり、読んでいて心地が良かった。

私自身として離島という田舎に暮らしており、野草が豊富にあるし、この先日本家屋に住む可能性もあるので、4人の暮らしから抽出したいエッセンスが沢山あった。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?