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女性用風俗のセラピストを沼らせた話③

3回目に会ったときは、動物園へ行った。
手を繋いで、ソフトクリームを食べて歩いた。
初めて見た本物のライオンは、猫みたいにのびて寝そべっていた。
はじめくんは、ゴリラの鼻くそとかいうお菓子をハイテンションで買って大喜びしていた。

わたしたちは、
普通の恋人同士に見えるだろうか。

楽しいな。はじめくんは素直で裏表がない。優しくて、ポジティブのかたまりみたいな人間だ。一緒にいると単純に、ただ、楽しい。

ああ、今日は楽しかったな。

たくさん歩いたから足が痛くなった。帰り際に寄ったホテルのお風呂で、はじめくんはわたしの足をマッサージしてくれると言って、足の指をずっと舐めていた。

またね、と別れてすぐ、鼻くそおいしいよ!とLINEが来て笑った。

翌日にはすぐに会いたくなって、連絡が来ていないかスマホを何度もチェックして。夜は何してるんだろう。仕事に行くのかな。誰かとキスをするのかな。わたし以外の足の指も舐めたりする?

あれ、ヤバい、これはよくない。

わたしは恋に落ちているのだ。
見事に不安と嫉妬に侵食されている。女性用風俗セラピスト、という彼の立場が、わたしの執着心を限りなく増幅していく。
切なさと、不安と、嫉妬と、執着。自分がそうなっていることに耐えられない。コントロールできないのがもどかしい。

そうだ、わたしなしでは生きていけないようにしよう。そうすればこんなに不安にならなくて済む、と思った。

そのやりかたは、よく知っているから。



それから半年経った。

はじめくんからの連絡は、どんどん増していった。

今何してる?
次いつ会える?

ああ、うまくできた……と、わたしは安堵した。

はじめくんは、仕事帰りの少しの時間でも会いに来るようになって、毎週末はわたしの部屋へ泊まりにくる。一緒に住むのは!?と言われたけれど、これ以上は負担が大きすぎるから断った。

いろいろボロが出そうだし、ずっと一緒にいたら、理想のわたしではいられなくなっちゃうんだよ。

はじめくんは、特に変な性癖はないけれど、性欲が強い。
半日お互いに裸で過ごすこともある。暇さえあれば身体をまさぐり始めて、唇の感覚がなくなるほどキスをして、身体中を舐めまわされる。

わたしも性欲の強さはなかなかだけれど、体力が追いつかない。
疲れ果てて、途中でうとうとしてしまうこともある。それでも彼はひとりで満足そうに、わたしの身体をひたすらいじっている。

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