MLBの読み物

MLBの少しマニアックな話を紹介するブログ”MLBの読み物”を書いています。noteで…

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MLBの少しマニアックな話を紹介するブログ”MLBの読み物”を書いています。noteでは私のオリジナルの記事を中心に更新していきます。

最近の記事

MLBの夏のレンタルトレードのその後を追うと買手が高確率で得をしていた事が判明しました

はじめに 毎年MLBではシーズン中に多くのトレードが成立しますが、今回はそのシーズン中のトレードに関する記事です。 毎年トレードが成立すると有利不利が騒がれますが、数年経って検証される事はあまり多くありません。そこで今回は過去に成立したトレードを使って売手と買手は結局どっちが得しているかを考えていきます。 検証の方法長くなったので、結論を先に知りたい方はこの章を読み飛ばして検証結果の概要の箇所に進んで頂いて大丈夫です。 検証を難しくする4つの論点 検証にはbWARを

    • マリナーズが30球団トップのPull%(引っ張り)を記録した背景とその思わぬ副作用について考察

      マリナーズの選手育成に関する独自路線とSwing%に関する理論 マリナーズの野球部門の責任者であるジェリー・ディポトは数々のトレードでチームを強化してきました。時にトレード狂とも評されるディポトですが、ここ数年は選手育成の場面でも独自色を打ち出しています。 以前スイーパーチェンジについて考察をした記事でもマリナーズの特異性はお伝えしました。下記のツイートにも記載されているように、マリナーズはマイナーリーグでシンカーとスライダーの使用率が最も高いチームです。一方で4シームは

      • レイズが実践する新時代のマネーボールについて考察-アプローチが最悪レベルの野手をレイズが集める理由-

        はじめに 先日のジャイアンツ戦でレイズは新たな記録を作りました。15HR以上の選手が8人並ぶチームとなったのです。彼らの活躍によりレイズはチーム合計で177本のHRを記録し、これはエンゼルスに次いでAL2位の記録となっています。 ところで読者の皆さんは現在のレイズのチーム内HR王が誰かご存じでしょうか。今季絶好調のヤンディ・ディアス?それともWBCでも知名度を上げたランディ・アロザレナ?現在は制限リストに入っているワンダー・フランコ? 残念ながら答えは彼らのいずれでも

        • サンディ・アルカンタラの不振の原因に関する仮説

          昨年のサイヤング賞受賞投手の思わぬ苦戦 昨年ナ・リーグのサイヤング賞を受賞したマーリンズのエースであるサンディ・アルカンタラが苦戦しています。この記事を書いている直近の7月26日のレイズ戦で完投勝利を収めるなど7月は防御率3.31は好投しているようにも見えますが、FIPを見ると4.39でこれは月別の成績では最も悪い成績となっています。今回の記事では昨年までの安定感抜群だったアルカンタラがなぜ不振に陥ったのかについて複数の仮説を提示したいと思います。 まず仮説を提示する前に

        MLBの夏のレンタルトレードのその後を追うと買手が高確率で得をしていた事が判明しました

        • マリナーズが30球団トップのPull%(引っ張り)を記録した背景とその思わぬ副作用について考察

        • レイズが実践する新時代のマネーボールについて考察-アプローチが最悪レベルの野手をレイズが集める理由-

        • サンディ・アルカンタラの不振の原因に関する仮説

          MLBの新たなトレンド?チェンジアップ/スプリットのスイーパー化(横方向の変化量増加)についての考察

          今回は以前から関心のあったチェンジアップ/スプリットがスイーパー化(詳細は後述)しているのではないかという仮説についての記事です。 なお断りがない限り2023年のデータは5月31日までのデータを使用しています。 チェンジアップ/スプリットのスイーパー化とは まずチェンジアップ/スプリットのスイーパー化(以下ではスイーパーチェンジと呼びます)について説明します。スイーパーはWBCで大谷がM・トラウトを打ち取った球種です。 スイーパーの特徴は①一定以上の球速②大きな横変化②

          MLBの新たなトレンド?チェンジアップ/スプリットのスイーパー化(横方向の変化量増加)についての考察

          スイーパー重視のツインズvsスイーパーの弱点を突くカッター重視のガーディアンズ-両者の投手戦略の違いが生み出す球界最高のライバル関係が熱い

          初めに ガーディアンズとツインズ。アメリカンリーグ中地区の優勝を争う両チームだが、両者のライバル関係にヤンキース対レッドソックスやドジャース対ジャイアンツのような歴史はない。だが今季に限れば両チームは上記のライバル関係より注目に値する。そしてその注目は精神的なものではなく、両チームの投手と守備に対する戦略の違いに起因する。 ガーディアンズとツインズは投手編成において現在全く異なるアプローチをしている。今回は両者のチーム編成のアプローチとそのアプローチを採用した背景について

          スイーパー重視のツインズvsスイーパーの弱点を突くカッター重視のガーディアンズ-両者の投手戦略の違いが生み出す球界最高のライバル関係が熱い

          フライボール革命が引き起こした予想外の悲劇-なぜMLBで左打者が10年で5%も減ったのかの意外な答え-

          MLBで左打者が10年で5%減ったという驚愕の事実 WBCが終わるといよいよ2023年シーズンが開幕するMLB。このオフは高額契約が相次いだが、大型契約は無くともブルージェイズのオフは高く評価されている。投手陣ではC・バシットやE・スワンソンといった実力者の獲得に成功。野手に関してはここ数年存在感を示していたL・グリエルとT・ヘルナンデスを放出した一方で、D・バーショとB・ベルト、K・キアマイアーを新たにチームに迎えた。打者に関する動きの報道では、いずれもチームに不足してい

          フライボール革命が引き起こした予想外の悲劇-なぜMLBで左打者が10年で5%も減ったのかの意外な答え-

          センターラインにはレギュラー/控え問わず守備力の優れた選手を優先して、それ以外には打撃力のある選手を優先する編成がメッツの好調の秘訣ではないかという仮説

          はじめに ニューヨーク・メッツが好調を維持しています。120試合を消化した現時点で勝率.642(77勝43敗)はドジャースに次いで両リーグ2位の成績です。今週のブレーブス戦は負け越したものの地区優勝さらにはワールドシリーズ制覇の有力候補といって差し支えないほどの状況です。 メッツといえば球界No.1と目される資金力を誇るスティーブ・コーエンが筆頭オーナーになった2021年も大補強を敢行しましたが、蓋を開ければ期待外れの結果に終わりました。それ以前も優れた選手は多いものの

          センターラインにはレギュラー/控え問わず守備力の優れた選手を優先して、それ以外には打撃力のある選手を優先する編成がメッツの好調の秘訣ではないかという仮説

          ホゼ・ラミレスはなぜ期待値以上の成績を残しているのかについての仮説を検証

          ガーディアンズの主砲であるホゼ・ラミレスは近年でも稀なレベルの不思議なシーズンを送っています。具体的には、今季ラミレスは期待値系の指標と実際の指標に大きな乖離があるのです。7月末までの総投球数が1,000球以上の左打者93人を対象に期待値系の指標と実際の指標の差をとったランキングが以下となります。 ラミレスは打率と打率の期待値で6位。長打率とwOBAに関しては、期待値との差で両方ともに1位になっています。特にwOBAと期待値との差はスタットキャストのデータが残っている201

          ホゼ・ラミレスはなぜ期待値以上の成績を残しているのかについての仮説を検証

          14連敗したエンゼルスが復調すると自信をもって言える3つの理由

          エンゼルスが5月25日から続いていた14連敗を6月9日にストップしました。しかしその期間にチームの勝率は.613(27勝17敗)から.465(27勝31敗)へと大幅に悪化してしまい、首位のアストロズとのゲーム差も拡大してしまいました。4月から5月序盤にかけて好調だっただけにこの失速は多くのファンにとってショックだったと思います。 ではエンゼルスは今後浮上できるのか、そしてプレーオフに出場できるのかが多くの人にとって関心事だと思います。そこで今回はエンゼルスの今後とキープレ

          14連敗したエンゼルスが復調すると自信をもって言える3つの理由

          90マイル前後の速球を投げながら好成績を収める3人のリリーフ投手たちと活躍の秘訣に迫る

          リリーフ投手といえばどのようなイメージがあるでしょうか。人によってイメージは異なると思いますが、ヤンキースのアロルディス・チャップマンのような球速の速いタイプの選手を思い浮かべる人は多いかと思います。実際MLBでもリリーフは先発より平均球速は速い訳ですが、中には90マイル前後の速球を投げながら抜群の成績を残している選手もいます。今回はそんな投手を3人取り上げ、彼らの好投の秘訣に迫りたいと思います。 1人目:カイル・ネルソン(Dバックス) 防御率1.23/FIP1.57

          90マイル前後の速球を投げながら好成績を収める3人のリリーフ投手たちと活躍の秘訣に迫る

          球種の組み合わせを変更したことで、サイヤング賞候補になりつつあるカイル・ライト

          絶好調なカイル・ライト ブレーブスに所属するカイル・ライトが絶好調である。ここまで7試合に登板して防御率は2.79(FIPは2.47)でFIPはナリーグの投手で3番目の数字である。 今回はライトの好調の秘訣を探していきたい。その前にライトのこれまでのキャリアを振り返ってみましょう。 ライトは17年のドラフトで全体5位指名を受けて入団。18年にデビューすると20年にプチブレイクを果たす。2020年ライトは60試合のシーズンが進むにつれてチームからの信頼を獲得していった。8月

          球種の組み合わせを変更したことで、サイヤング賞候補になりつつあるカイル・ライト

          ロッキーズ投手陣が4シームを減らし、シンカーを増やす理由は本拠地にあり。空振りを奪えないクアーズフィールド

          昨年より指標を向上中のロッキーズ投手陣の不思議な傾向 今季下馬評以上の健闘を見せているチームは複数ありますが、その一つがロッキーズでしょう。CJ・クロンやコナー・ジョーなど野手の活躍も光る一方で投手陣も防御率が4.83から4.73に、FIPが4.47から4.11へと改善しているのも好調の要因でしょう。 さらに投手陣について深堀してみると面白いことが見つかりました。それは今季ロッキーズの投手陣が4シームを減らす一方で、シンカーを増やしているということです。 最近の野球界で

          ロッキーズ投手陣が4シームを減らし、シンカーを増やす理由は本拠地にあり。空振りを奪えないクアーズフィールド

          マット・ブラッシュ急失速に対する4つの仮説

          マット・ブラッシュの怒涛の1か月 2022年シーズンの最初の1か月で最も激しい浮き沈みを経験した投手はマリナーズのマット・ブラッシュかもしれない。ブラッシュは昨シーズンから変化量の多いスライダーとカーブを操る投手として一部のファンの間で有名になった。そんな彼が全国区の注目を浴びたのは今年のスプリングトレーニングだ。9.1イニングを1失点に抑えた一方12三振を記録した。 スプリングトレーニング当初は開幕をマイナーで迎えることが有力視されていたブラッシュだが、この活躍を受け

          マット・ブラッシュ急失速に対する4つの仮説

          「シーズンが進めば球速が上がる」は本当か?を検証

          4シームの球速はシーズンが進むと上がるのか?シーズンが開幕して間もなく3週間が経過するMLBですが、当然好調な選手もいれば不調の選手も出てきています。また成績自体は悪くないが今後の調子が心配になる選手もいます。その最たる例は昨シーズンより球速が落ちている投手でしょう。 具体的には私が先週Twitterで投稿したCLEの先発投手陣(S・ビーバー、C・クアントリル、Z・プレサック)やPHIのZ・ウィーラーといった投手は今季昨年より4シームの平均球速が低下しています。 そんな春

          「シーズンが進めば球速が上がる」は本当か?を検証

          新たな打撃コーチのもとで速球を攻略しつつあるフィリーズ打線

          速球を苦手としてきたフィリーズ打線 現在のMLBで速球を得意にしている打者といえば皆さんは誰の顔を思い浮かべますか?(ここでの速球には4シーム、2シーム、シンカー、カットボールが含まれます)どの指標を使うかによって答えは若干変わるものの昨年wOBAで両リーグ1位の.485をマークしたホアン・ソト(WSH)やxwOBAで両リーグ1位の.489をマークしたアーロン・ジャッジ(NYY)は鉄板でしょう。そんな2人と共に球界でも屈指の速球を得意にしている打者がブライス・ハーパー(PH

          新たな打撃コーチのもとで速球を攻略しつつあるフィリーズ打線