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おお、本たちよ!

 1994年のインドの地方数学オリンピックにおいて、次の問題が出題された。
“ A leaf is torn from a paperback novel. The sum of the numbers on the remaining pages is 15000. What are the page numbers on the torn leaf? ”
 そもそも問題とはいえ、本を破るなんて。現実的に破れていたら、ドラマ『マイファミリー』よろしく「なんでこうなるんだよ~」と発狂するに違いない。大学時代では、シャーロックホームズシリーズのみに不思議と魅了され、綺麗な装丁の文庫本を探す自転車による旅に出たことがある。自分が読んでいないのに、ページが折れたり、破れていたりするなんてあり得ない。相当な執着心の持ち主、…。
 私には解読不能ともいえる『砂の本』の一節に考えさせられたが、世界にある本が燃えたら果たしてどうなるのだろう。おお、考えただけで気味が悪い。黒煙が上がり、空一面を埋め尽くす。それもそうだが、先代の叡智の結晶が失われてしまうことが末恐ろしい。レイ・ブラッドベリ氏の『華氏451度』においては、本は忌むべき禁制品とされ、本が燃やされる。なんてことだ!
 教科書の類いがなくなれば、喜ぶ人もいるかもしれぬが、漫画、雑誌、写真集など、あらゆる紙が消え失せる。おっと、紙がなければラブレターすら書けない。現代においては紙がないなんて絶対に考えられないことだが、いずれそうなるのかもしれない。ドラマ『持続可能な恋ですか』ではないが、紙文化はいつまで持続可能なのか。はたまた、紙媒体としての“本”は完全に廃れてしまうのか。人間が持つ温かみの感じない、電子機器ですべてが埋め尽くされてしまうのは、些か忍びない。
 読書旬間は素敵な試みである。学生時代、朝の読書は苦痛だったので、不用な時間という認識でしかなく、やる意図を感じなかった。何とも浅薄な考えであり、笑止千万。たった百年程度しか生きられないのだから、一人の人間が考えられることなど、たかが知れている。だからこそ、先代や周りの人の智慧は欠かせず、歴史から学び、生かした方がより深みのある人生を送れるのではないだろうか。情報は電子媒体で得られるが、智慧はそういうものに限った話ではない。ましてや、本は情報を得るもの、趣味や娯楽の範疇なら電子媒体でもいいかもしれないが、紙としての本たちはさまざまな感情feelingsを呼び起こす。匂い、紙質、余白などにも味わいがある。文字としての言葉以上に、そこにあるコトバを味読できる。未知なる世界へと旅立てるし、その世界は自分ひとりでしか味わえない。
 放送中の韓国ドラマ『TIMES~未来からのSOS~』を愉しく観ているが、我々の力では過去を変えることは不可能だ。でも、過去に対する捉え方は変えられる。今ここにあることはすべて自分がやってきた結果であり、善し悪しの評価はない。“古を裂き今を破る”という禅語の教えを糧にして、自分という存在は一人しかいないからこそ、自分の考えを大切にし、目の前の真実を見つめていきたい。
 
문을 하나 만들자 너의 맘 속에다
扉を一つ作る 君の心の中に
         (BTS『Magic Shop』)


🎵 人生相談&哲学対話ほのぼのカフェ 🎵
 
【Q50】どうして1日は24時間しかないのですか。
【A】おそらくこの質問は1日がもっと長ければいいのになあという願いなのでしょうね。その気持ちはよく分かります。私は整理しながら仕事をやるようにしていますが、切羽詰まったときは、もっと時間が欲しいと思いますね。ようするに、これは欲望なのです。たとえば、30時間になれば満足するかというと、さらに長くなればいいのにと思うことでしょう。時間という概念は所詮、人間が勝手に決めたものです。それに捕らわれ過ぎずに生きられたらいいなと思いますが、なかなか難しいですよね。
 生きている時間が永遠だったらいいのにと思うこともありますが、そうなったらどういうふうに生活すると思いますか。明日があるから明日でもいいやってなりそうですよね。生きることに対する魅力というか、輝きがだいぶ薄れてしまうように感じます。一生の時間が短くて儚いからこそ、いのちはかけがえのないものであり、とても尊いものだと捉えるのではないでしょうか。
 因みに、なぜ1日は24時間なのでしょう。人間は“月moon”を見てカレンダーを作りました。30日ほどで元に戻ります。その1周期を12回繰り返すと約1年になります。それをエジプトの人は知っていました。それが基となり、1日の夜と昼を12時間ずつに分け、1日が24時間というように設定したわけです。個人的にいうならロマンチストだなと感じますが、昔の人にとって月や星は「生活(生きること)」に欠かせないものだったのです。
 7月14日は満月(buckmoon)でスーパームーンでした。月は欠けて見えますが、本当に欠けているわけではありません。裏側も見えないだけです。そこを想像する力、発展して、見えていない部分を汲んであげることはときに大事であることを月は教えてくれている気がします。
 
【Q51】この世に数学という学問がなかったらどうなると思いますか。
【A】数千年前の生活と変わらずに狩猟採集時代を続けていて、自然と関わっていることでしょう。でも、「どうして?」という真理を追究する人間的本能からは逃れられないと思いますね。
 
【Q52】理系の人は数学や理科が得意だと当たり前のように言ってくるのはどういうことでしょうか。
【A】ただの偏見ですね。文系なら、英語が得意かというとそんなことはありません。私は理系ですが、物理、生物はからきしダメです。数学だって解けない問題はたくさんあります。それでも教員をやっています。所詮、二元論的に“比較”した表現である「得意」という言葉は捉え方が難しいですね。結局のところ、他人のことを思いやれていない言葉は気にしないのが一番。
 
【Q53】好きな食べ物は何ですか。
【A】逆に質問します。最後の晩餐(食事)では、あなたは何を食べたいですか。私はご飯とお味噌汁です。体調が良くなかったときに、身体がお味噌汁を欲し、具なしで飲みました。生きている感じがしましたね。私はパン、チーズが苦手です。だから、和食最高です!脳が感じて食べたいものではなく、身体が欲しているものを食べることが大切だと身に染みて感じる年代になってきました。
 好きな食べ物は豚カツ(ざっくりと肉類、焼肉食べたい…)、寿司、漬物、アイス、ナッツ、お菓子など。好きな飲み物は温かい緑茶、珈琲、炭酸水。

2022.7.15

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