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ひとつでふたつを兼ねる、について考える

ひとつのことにしか使えないものは、とっても便利だったり用の美を極めていたりするが、それにしか使えないものしかないと、家の中は混乱を極めるのではないだろうか。(もちろん元々の絶対数が少なければ話は別だが、果たして専用品ばかりを持っているミニマリストなんて存在するのか?)

もう10年以上前になるが、シャツを畳むためだけの商品を見た時、馬鹿げたものもあるのだなあと思っていたけど、そんな自分のキッチンには、デンマークのフラットメイトの真似をして買った、IKEAのニンニクを潰すだけの鈍器みたいなツールがあった。あれはいつの引っ越しで捨てたのだっけ…



そんなことを考えたのも、一足で二足を兼ねる靴に出会ったのがきっかけ。

2023年10月にカナダで購入したこのブーツは、防水加工のレザー製。
これを買うきっかけは、わたしがすでに持っていた二足のブーツ。




一足目は2016年ごろに購入した、卑弥呼のレザーサイドゴア(チェルシー)ブーツ。何にでも合わせやすく、まさにわたしのタイムレスワードローブのひとつでお気に入りの定番シューズ。

NZに住んでいた時もこれを持っていき、たくさん履いた。(このブーツ、スニーカー、フラットシューズの3足のみで渡航)
クリームを塗ったり、裏を張り替えたりしていたが、2022年冬には経年劣化で足の甲部分がみすぼらしい感じになってきており、買い替えを検討していたので2023年のカナダ暮らしには持っていかず。



もう一足はレインブーツ。以前の職場へは自転車→電車→自転車のできる限り環境負荷の低い通勤をしており、雨の日は自転車が徒歩になるため、レインブーツは必須。大雨が続き、急いで近所で購入したため、天然ゴムなどのこだわりは一切ない、とりあえず足が濡れないためだけの靴。

このレインブーツ、見た目が一足目と似ているので、これ1本に統一もありかな?思っていたけど、やはりレインブーツなのでずっと履いていると蒸れ(これを履いた日は冬でも職場ではスリッパに履き替えていた)、形は似ていても素材が違うのでレザーの上質さはないため断念。



そんな似たような見た目で違う機能を持つブーツを二足持つことに違和感を感じていたところ、出会ったのが冒頭のCROWN VINTAGEのブーツ

レザーブーツは買い替えるつもりでカナダでも常にチェックしていたものの、なかなかこれというものに巡り合えず、もうDr.MartensやBlundstoneでもいいかな…と最後の望みで寄った靴屋、The Shoe Companyで発見。
やはり餅は餅屋、レザーのサイドゴアブーツがたくさん。実際履くと自分にとって履き心地がいいものは少ないものの、出来れば…と思っていた防水加工のレザーブーツが!あきらめなくてよかった…!

ちなみにわたしが求めていた条件はこちら。
・黒のレザー
・チャンキーヒールかゴム底で高さ5cm以内の歩きやすいもの
・ファスナーではなくサイドゴア
・余計なデザインや飾りはなし(黒一色あるいはヒールはダークブラウン)
・ウールの靴下が履ける足幅
・防止加工してあるとなおよし

愛用のブーツより微妙に長くすねに当たる、少しカジュアル度が高くなるなどの気になる点はあるものの、「これなら雨でも多少の雪でも履けるし、レインブーツも処分できるかも」と思い購入。

雨だったのでタグも外さず履き替えて帰宅、早速防水を見せつける


初冬のカナダでも役立ち、その後の旅先アイスランド、イギリスではこのブーツ一足で旅ができた優れもの。底がしっかりしているので何キロでも歩け、ややカジュアルな印象もあるけど、黒いタイツに黒のニットスカートと合わせるとシックなスタイルにも。

11月に入った途端初雪
ロンドンにも馴染む服装に@V&A museum

ちなみに、帰国後少し滞在していた京都でも、突然の軽めトレッキングができたくらいしっかりした靴底。下手なスニーカーより歩きやすい…



改めて、元々の二足と対面。
「もう似たようなブーツを2足も持たなくていいんだな…」と安堵した。


このひとつでふたつを兼ねる、良し悪しは当然ある。
やはり専用商品は目的に達するのが簡単だったり、達成した目的のクオリティも高いことが多いだろう。とはいえ、スペースや重量が限られているなどの場合、頻繁に使用しない限り、それだけにしか使えないものは余計な場所を取ったり、無用の長物になってしまう可能性もある。
その一方で、いくつもの機能を兼ね備えたひとつのものは、全てにおいてそれなりにしか機能しない場合もある。「何にでも使えて便利」は、「何にもうまく使えず不便」の可能性も孕んでいるということだ。
今回のブーツは成功だったけれど、ものの質を見極める目が試される。

話が少し逸れるが、年始の地震と帰国を機に、最近防災グッズの見直しをしている。まさにスペースと重量が限られる極みである防災グッズこそ、ひとつのことにしか使えないものはなるべく避けたい。そして無駄なものは入れたくない(買いたくない)ので、被災経験者から専門家まで、色んな方の記事や動画を見て、少量で最大に使える中身の検討を重ねている。
しかし、ものの質も見極める目もさることながら、結局最後にはわたしたちの知恵やアイディア、想像力が試されるのだろう。




ブーツの箱にあった言葉





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