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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.71「日本史の謎は地形で解ける」

歴史の偏差値37の僕が面白いと思える歴史の本は稀有で、そういう意味では間違いなく良書だ。

「人」でははなく「地形」「気象」という「事実」から紐解くことによって、これまで複雑に絡み合っていたものがあっけなくほどけた感覚があった。なるほど、このように解釈すれば良かったのかと、もう一度中学生からやり直したい気分になった。

しかし、人々と社会を支えている下部構造の地形と気象から見ると、思いのほか、ぶれは少なく単純となる。人文社会に任せていた複雑な歴史に、今までにない分かりやすい物語を提供していける。
特に、この比叡山焼き討ちに関しては、大きな疑問が残されたままだ。その疑問とは、なぜ、信長は徹底して僧侶たちを残虐したのか? である。
人文社会の分野では、戦国時代は人々の力関係で説明される。しかし、権力の駆け引きや力バランスからは、あの比叡山僧侶の大虐殺は説明されない。力関係であれば、信長と比叡山の妥協と和睦で済む。しかし、信長は徹底して僧侶を虐殺した。それを説明できないので、原因を信長の狂気に押しつけてしまう。

「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」と喩えられるほど残虐だと言われた信長も、実はそうせざるを得ない理由があり、その理由が地形に込められていたとは。歴史上における事実は資料によるものがほとんどだけれど、地形は今も残っているため、信ぴょう性は高い。

少し話は変わるけれど、「嘘は環境がつかせる」という言葉がある。人は嘘をつきたいのではなく、嘘をつかざるをえない場面において嘘をつく。つまり、人の行動は、その背後にある環境(事情)によって大きく左右されるのだ。

歴史もそうした背景(環境)から紐解くことによって真実が見えてくる気がした。これを機に、歴史の偏差値を40前半くらいまで引き上げたいと思う。

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