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まだ若いから。


出身高校の偏差値マウント、「俺だって勉強すれば早稲田に行けた」、高い化粧品にブランドのバッグ、元カレの悪口に今カレの惚気、課題が大変だのテストが大変だの、挙句の果てには高校生の時にラブホに行った話に未成年のお酒の話、……ほんとつまらん。みんな口を開けば自分や友達や母校の自慢。張り合ってばかりで聞き手が得られるものなど何もない。こんな遠くに来たのに、高校生の時と何も変わらない。相手を落とすことでしか自分のことをアピールできない、ここにはそんなやつばかり。強いて言えば、同級生に歳上がいるくらい。でも浪人生だって所詮、現役生をガキ扱いするやつばかり。大人ぶった子供ばかり。どうせみんな大人になれば全て黒歴史になるのに。時間に余裕がなくなって、お金にしか目がなくなって、つまらなさが加速していくだけなのに。


12歳で死ぬ、そう思っていた。中学生になりたくなかった。小学校が合併するのが嫌だった。早いとこ事故に遭って死ねねえかな、なんて思っていた。気がついたら、制服の採寸が終わっていた。


15歳で死にたい、そう思っていた。高校受験がだるかった。面接したくなかった。落ちるのが怖かった。だから1番通うのが楽で努力しなくても受かりそうな高校を選んだ。滑り止めは面接がないところを選んだ。


18歳、死んでやる、そう思った。「その大学、C判定って厳しくない?」この一言で、3年間一緒に勉強を頑張ったやつと縁を切った。所詮そいつもただの学歴厨、プライドばかり高くて人のことばかりで、自分のことを棚に上げるくせにメンタルが弱いから少し言われただけですぐ人を嫌いになる、そんな女子高生だった。
実際、私は受験に落ちた。全部落ちた。最初から勉強なんてしてなかった。勉強のサポートをしてくれた先生や先輩に申し訳なくて死にたかった。勉強してないのを隠していた。その罪悪感がさらに私を死にたくさせた。でも、同じクラスの友達が同じように悉く落ちてて、一緒に慰め合った。一緒に卒業式にもちゃんと参加した。彼女のおかげで私は少し生きる決意ができた。


19歳、死ぬか悩んでいる。私は今、必死に生きている。親元を離れて、友達と自由で楽しい生活を送る反面、面倒なことも全て自分でやらなきゃいけないし、将来が見えないし、不安しかないし、何より自分が何も成長していない。それすら「性格変わらないね」って、私のこと全部分かったかのようなことを言われて始めて気がついた。
勉強ができる友達に嫉妬したり、可愛い友達を羨んだり、面倒な同級生を避けたり、全部自分のせいなのに、自分の実力不足なのに、こんなふうに思ってしまう罪悪感や劣等感で何度も死にたくなる。でも、意地悪な言い方をしてくるあいつも、勉強のできるあいつも、可愛いあの子もめんどい知り合いも、本当は大好きで、尊敬していて、みんな大事にしたいと思っている。なのにできない。それが一番つらい。出会った人間全員を裏切ってしまうかもしれない恐怖、そして裏切っても心のどこかで絶対何も気にしていない自分がいる恐怖、私は傷ついた人のことを、弱くてしょうもない存在だと見下すような性格だということ、今1番大事にしている人を傷つけたくてたまらない時があること、私のこの薄情さは治らないこと、それを自覚しているのにそれを自分の個性とすら思っていること。結局、私もただの小さくて弱くてどうでもいい生き物のうちの一匹に過ぎないということ……。


20歳、私は死んだ。
無になった。それはバックアップのできなかった履歴のようなもので、相手の記憶には残っていても、私には何も残らない。記憶という概念すらない。生まれ変わりも来世もない。

私が消えても、保険金がほんの少しおりるだけ。
死体の後始末が少し大変なだけ。
葬式にお金がちょっとかかるだけ。
私のことを追い詰めた誰かがしばらく責任を感じるだけ。
私のことを大切にしてくれた誰かがけっこう泣くだけ。
妹を1人で残してしまってかなり申し訳ないだけ。
好きだったあの人や仲良くしてくれた友達との未来がなくなってすごく悲しいだけ。

ただそれだけ。

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