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最近読んだ本の話 vol.118

 「最近読んだ本の話」の第118弾です。雨が降って涼しくなって、いよいよ秋らしくなってきました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。

1、上田 岳弘『最愛の』

「約束して。私のことは跡形もなく忘れる、と。」
久島は、情報も欲望もそつなく処理する「血も涙もない的確な現代人」として日常を生きている。
だが、学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが、人生唯一の愛として、いまだ心を離れない。
望未は手紙の始まりで必ず「最愛の」と呼びかけながらも、常に「私のことは忘れて」と願い、何度も久島の前から姿を消そうとした。
今その願いを叶えるべく、久島は自分のためだけの文章を書き始める――。
愛する人が誰よりも遠い存在になったとき、あらたに言葉が生まれ、もうひとつの物語が始まる。
「永遠の恋人」を描いてきた著者が最高純度で贈る、超越的恋愛小説!

Amazonより引用

 主人公の久島は30代の男性ですが、中学生から大学生までの間、望未という同級生と文通をしていました。久島は今もそのことが頭を離れず、その文通のことを出会った人に話します。レンタルオフィスで知り合った坂城に話すと、誰にも見せない自分だけの文章を書くことを勧められます。
 この小説自体が久島が書いた小説なのかどうなのか、その判断は難しくて私にはわかりません。望未とのやり取りは大学生の頃になんとなく終わったように最初は書かれていましたが、もっといろんなことがあったことが徐々に語られていきます。望未に宛てて久島の書く手紙が素晴らしいです。こんな手紙を私は書けません。「忘れないで」と言われても「忘れてください」と言われても、忘れないだろうと私は思うんだけど、「忘れないで」よりも「忘れてください」の方が残酷かもしれないと初めて気づいてゾッとしました。すごく分厚い本ですが、長さを感じさせない濃密さがあります。読めてよかったなあ。

 

2、花村 萬月『たった独りのための小説教室』

獲るぞ、新人賞!
目指せ、エンタメ作家デビュー!
小説推理新人賞、小説現代新人賞、文學界新人賞……数多くの新人賞の選考委員を務めた作家だけが知っている、新人賞受賞のための一本道! 覚悟を決めた貴方だけに向けた全35講。
「能力や才能といったものを特別扱いしていませんか。バカと鋏は使いようという私に向けたかのような失礼な諺がありますが、これは能力と鋏は使いようとしたほうが正しい。『たった独り』の貴方は能力や才能のあるなしを悩む前に、それらの使い方、用い方を考えましょう。だいじょうぶ。その他大勢でない『たった独り』の貴方にはそれらを自在に使う能力が備わっています。ヒントはこの本にしっかり詰め込んでありますから」(「あとがき」より)

Amazonより引用

 小説の書き方の本というのは書かないのに気になって読んでしまうのですが、この本は面白いです。花村さんの語りにつられてこの本の通りに取り組んだら、もしかすると新人賞がとれるのでは⁉と思わせるような説得力のある実践法だと思います。最初にやることは、噓の日記を1か月毎日書き続ける、というものです。面白そうでやってみたくなって、この本を読み終わってから書き始めました。嘘を書くのが難しくて、結局本当のことしか書いていない普通の日記になっています。道のりは長い。


3、椎名 誠『机の上の動物園』

世界中を旅してきた著者が旅先から持ち帰ったモノや道具を一堂に集めた一冊。フランスのフライパン、パタゴニアのカンナ、アムチトカ島のナイフ、南米の飾り馬とホルスタイン、世界各地の道で拾った石ころ、アメリカ西海岸のなめくじ人形など、何の役にも立たないが、なぜか気になって手放せない愛しきガラクタたちを、旅のエピソードとともに紹介。椎名誠ならではのユニークな旅の流儀が見えてくる。作家生活45周年を迎える著者初の「モノ雑文集」。

Amazonより引用

 眺めているとホッとしそうな本だと思い読んでみました。椎名誠さんが世界中を旅して買ってきたものを紹介しつつ、当時の旅を語る面白い内容です。初めての海外旅行が世界一周の一人旅で、語学ができずにそれをやってのける椎名さんはやっぱりすごい!ワクワクしながら読みました。


 ハロウィンが終わってもう来月はクリスマスです。早いなあ。大掃除は今月やっておいたら年末が楽になる、とわかってはいるのですが、今月は予定を詰め込み過ぎてそんな余裕はなさそうです。毎年そんな感じだけど。最後までお読みくださってありがとうございました。

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