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【ショートショート】信州女と青森男

これは信州出身の女性と青森出身の男性が紡ぎ出す、小さな物語である。
 
ある日の事。
快晴だった空が急に曇り出し、雨が降りそうな空になってきた。
信州は山が多いせいか、天候の変化が激しい。
 
女「ちょっといま手放せないから、洗濯物よせといてくれる?」
 
そう言い残し、女は別の家事をしに去って行く。
一人、残された男。
男(は? 寄せる?)
 
男はベランダに干された洗濯物をじっと見つめる。
 
男(寄せる・・・ どっちだ? 右か? 左か?)
 
悩んだ挙句、左側に洗濯物を寄せた男。
きっと、新たな洗濯物を干すのだろうと思って・・・
 
左側に寄せれば出入り口が空くことになり、次が楽になる。
男の心遣いが見て取れる。
 
だが、戻って来た女は左に寄せられた洗濯物を見て声を荒げる。
 
女「ちょっと~~! よせといてって言ったでしょ!」
男「あれ? 違う? もしかして、右だった?」
 
その後、男はボロカスに言われたという。
 
※洗濯物をよせる・・・洗濯物を家の中に取り込む、の意(信州の方言)。

おわり 


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