見出し画像

文系と理系

ある方と往復書簡を交わしていた時のものをご紹介致します。(もう10年以上前のものになってしまった・・・)
その方はもうこの世にいない。

皆さんは文系?理系?(これ自体愚問ですね。ナンセンスかも?)

平成21年度の流行大賞は「政権交代」に決まったそうだ。
今回の政権交代で大きな注目を集めたのは、予算を組むのに用いられた「事業仕分け」という手法であろう。
さらにこの作業が公開されたということが画期的であった。
「必殺仕分け人」などと面白可笑しく呼ばれた事業の可否を振り分ける側と、事業の重要性を認めさせて予算を獲得したい要求側との、せめぎ合いが注目された。
その中の、スーパーコンピューターなど、最先端科学の係わる討論のなかで、仕分け人から「文系の人間にも解るように説明して下さい」という発言があったと聞いて吹き出しそうになったのと同時に、それが本音だろうなとも思った。
私は元来理系人間であるが、定年後のロスタイムを有効に使いたいと、10年ほど前から川柳の勉強を始めて現在に至っている。
その勉強の過程で、私は逆に「理系の人間にも解るように説明して下さい」と何度悲鳴をあげたことか。
例えば「1+1は2とは限らない」「作者は結論を言ってはならず、読み手に託せ」等々・・・。
文芸の世界には、理系の人間として、素直には理解し難い教養のあることを学んだ。
一人ひとりの人間を「純粋な文系と理系」とに分けることはナンセンスだが、各人の人生観や世界観に、どちらかへの傾斜があることは否定出来ないと思う。
一体、文系・理系というのはどこで分かれるのだろうか。
前者は人文科学;宗教、哲学、法律、文芸など人間の営みを考える系統に属し、後者は自然科学;数学、物理学、化学、生物学など人間の営みを離れた自然現象を考える系統に属している。
人間関与の有無を基準に立てて、どちらの現象を考えるのが好きか、の差が文系と理系を分けていると思われる。
世間で言われているように、子供の頃算数が出来た人が理系になり、逆は文系になるということはないと思う。
また文系の勉強は暗記が主体で、理系は解析が主体だとする傾向があるが、暗記と解析はどんな学問においても必須の技術であろう。
「数学は暗記ものです」と言い切られた塾の先生には脱帽させられた。
なお、文系・理系を分ける要素となっている、人間そのものを研究対象にしながら、理系の手法を使う分野に医学と心理学が挙げられる。
この両分野から、数ある生物種のなかで、ヒト・人間だけと言われる「自殺」に対する成果が早急に出てくることを期待している。
人間も生物の一員であるという主張は、最近広く認められてきたと思う。
それにしても、自然の一員に過ぎない人間が、人間を基準にして、文系・理系という分け方を導くということ自体、人間の自然界における存在が如何に大きいかを示していると思われる。
その偉大な人間が、戦争や自殺によって自滅の道を歩んでいるのは、いかがなものか、と悲しい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?