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小説ですわよ第2部ですわよ

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図解!これがマルチアヌスだ!!

https://note.com/modern_willet907/m/m4569c540eb38 ※↑の趣味小説にて描かれるマルチアヌスという設定を図にしました。

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※↑の続きです。 ※ヘッダー画像は読者様に描いていただきました。いいでしょ!  水原 舞は行きつけの蕎麦屋で相棒と昼食を済ませ、午後の仕事に臨むべく駐車場へ向かおうとしていた。相棒――森川 イチコの黒い長髪から、石鹸と蕎麦つゆの香りがほのかに漂ってきて、なぜだか安心感を覚えた。  色々あったが、舞にとってイチコは間違いなく相棒だ。知人でも恋人でも友達でもない、心から魂を預けられる相棒。だから午後から何があろうと、ふたりで乗り越えられると思っていた。1月の寒さも、心の温もり

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※↑の続きです。 ※神沼重工については、↑をご覧ください。 「この世界が狙われている……?」  イチコは疑問と共に、マサヨへの抱擁を解て一歩下がる。舞はなぜだかホッとした。途端に外気の寒さが身に染みて、蕎麦で温まった体温が冷め始める。  マサヨは猫のように、いたずらっぽい笑みで言う。 「“神沼重工”に気をつけて」 「えっ?」  舞は神沼重工の名に聞き覚えがあった。午前中の仕事で返送した老婆が、神沼重工なる兵器製造会社が支配する世界から帰ってきたと語っていたからだ。 「“

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※↑の続きです。  機械蜘蛛の銃口が、完全にこちらを捉えた。イチコが引きつった笑顔を浮かべる。 「ハハッ、これは……二度目の死かあ?」 「もう死なせませんよ。こうなったら私が!」  舞は相撲の精霊を頼ったが、何度心の内で叫んでも応えてはくれない。イチコと相撲をとって以来、あのクソリプ横綱は舞の心から消えてしまっていた。もう蘇ることはないのだろうか。  そのときカーナビの画面が光り、ナビAIが言葉を紡ぐ。 「こうなれば緊急脱出装置を作動させ、おふたりを上空へ打ち上げたあと、

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※↑の続きです。 ※↑七宝 珊瑚については、こちらをご参照ください。  舞に気づいたイチコが、楽しげに身を乗り出す。 「水原さん、見てたでしょ? マーシーはとってもダンスが上手いんだ!」  マサヨはダンスを終え、勝ち誇ったように犬歯を剥き出しにする。ケモノが獲物を仕留めたときのような、野性味と威圧感。それは本能的に、生物的に、舞に敗北を自覚させた。イチコは、そんな舞に構わず話を続ける。 「マーシーは、ダンスを中心にした演劇ユニットをやってるんだって。だけどそれだけじゃ厳し

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※↑の続きです。 --------------------------------------------------------  昨夜19時ごろ、珍春日市内の路上で異臭騒ぎがありました。近隣住民から「腐ったカレーのような匂いがする」「誰かのオナラが臭すぎる」などの通報を受け、警察と消防が出動しました。  しかし異臭は確認されず、付近でガス漏れなどもないとのことです。また、異臭が発生する前に、爆発音のようなものが連続して聞こえたとの証言がありますが、詳細は不明です。  警察

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※↑の続きです。  視界がホワイトアウトした中、石坂浩二のような語り口でマサヨの声が聞こえてくる。 「これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間の中に入って行くのです」  ただただ純白があたり一面を覆い、声だけが聞こえてくる――普通の人間なら混乱して叫び出しそうなものだが、舞は落ち着いていた。この感覚は相撲の精霊が降臨するときと似ていたからだ。  どうもこれがマサヨの超常能力らしい。相手とビジョンを共有する、あるいは強制的にビジョンを提示するといったとこ

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※↑の続きです。  マサヨは黒服たちに、近くに駐車している車へ案内された。一見すると黒いリムジンだが、タイヤはなく車体が浮いている。マサヨの世界では、いわゆるエアカーと呼ばれ、よくある未来世界のイメージに登場するものだ。無数のエアカーが薄暗い都会の中を立体的に交差するような映像を、古い映画の中で観たような気がする。 「マサヨ、乗るナリ」  愛助が後部座席のドアをあけて先に乗りこみ、中から手招きをする。大人しく従い、腰を下ろした。クッションに背を預けたかったが、初対面、それ

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※↑の続きです。 ※↑マルチアヌスについては、こちらをご覧ください。  神々のケツ穴すべてに、浣腸を挿す――  神沼は迷いなく、静かに、力強く目標を語った。 「なにそれ?」 「僕はこの世界に真の平和と幸福をもたらした」  神沼はデスクの引き出しから、丸い飴玉を取り出し、包装紙を剥いて口の中で転がす。そして聞いてもいないのに、自分たちの一族がいかにして世界征服――この男たちにとっては平和的併合だが――を成し遂げたかを語り始めた。内容は単純。巨大な人型兵器を開発し、その圧倒的

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「あたしと、田代まさしの因子が近い? 名前が似てるだけでしょ。子供のころ、よくイジられたわ」 「田代マサヨ。その名を授かった時点で、君と田代まさしは繋がれているのだよ。名は人の運命を決定づける重要な因子だ。君が田代マサヨでなければ、名前をイジラられることもなかった。君も田代まさしを意識することなどなかった」  神沼は飴玉を転がす舌を止めた。頬に飴玉が当たり、ぷっくり膨らんで気持ち悪い。低く落ち着いた声から、真剣に語っているのは確からしい。表情は相変わらず人形みたいな笑顔だが。

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 身体の背面全体に痺れるような冷たさを感じ、マサヨは目を覚ました。鉛色の空が視界を覆っている。そこで自分が地面へ大の字になって気絶していたことを察した。  やや倦怠感はあるものの、怪我を負った形跡も痛みもない。ゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。車輪のついた自動車が行きかい、通行人たちの表情は……普通だ。真顔であったり、外套をまとって身を縮こませたり。マサヨがよく知る世界の風景である。 (もしかして戻ってこられたの?)  しかし、つい今まで乗っていたバイクはない。 「愛助?

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※↑の続きです。  Jリーグカレーを食べたあと、解散となった。ゴールドが街の監視カメラをハックしてマサヨの追跡と、田代まさしの監視を行ってくれるらしい。他の軍団も侍ジャパンとの強化試合を終えたあと、合流するよう連絡してくれるそうだ。特に何も起こらなければ、日曜は休みとなる。 「失礼します。おつかれさまでした」 「おつかれさま~。また月曜にね」  舞の挨拶に、イチコは背を向けたまま返した。事務的に、さりとて冷たくもなく。なにやらカードをテーブルに並べているようだが、舞はなにも

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※↑のつづきです。  綾子からのチャットは、いくつかに分割されていた。 『本調子ではないけど、月曜から復帰するわ。アヌス02の対策は、週明けから本格的に行いましょう』 『ブルーと2代目つんおじはセーフハウスで保護してる。今のところ無事よ。位置情報を共有しておく。警備はシルバーとレッドに任せてある』 『ゴールドの追跡で、マサヨは弟のアパートへ身を寄せているとわかったわ。ちなみにご家族は、数年前に事故で亡くなっている。デリケートな部分だから、マサヨと話すときは慎重にね』

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※↑の続きです。 -------------------------------------------------------------------- 清水沢あすか氏は、珍玉県皮剥市出身の53歳。 反社会勢力 広東包茎連合の構成員として薬物の密輸・密売に関与したのち、今回の市長選挙に立候補しました。 選挙戦で清水沢氏は、ちんたま市を大麻特区にすると掲げ、前知事を脅して全面的な支援を受けました。 その結果、支援を受けた前立腺珍手党、非生産党などの支持層を固め、無党派層