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1994年うまれ|スタジアムが大好きです🏟

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  • フットボールを生きる街

    セビージャの街と人々をつなぐ16の物語

最近の記事

フットボールを生きる街 - あとがきにかえて

あとがきにかえて セビージャの地を留学先として選んだのは、ふと地図を眺めていたときに、街の中心地から比較的近いところにふたつの大きなスタジアムを見つけたからでした。なぜか、セビージャという未知の街に呼ばれているような気がして、胸が躍ったのを憶えています。 わたしにあてがわれたセビージャ大学の寮は、そのふたつのスタジアム、つまり、セビージャFCのラモン・サンチェス・ピスフアンと、レアル・ベティス・バロンピエのベニート・ビジャマリンの、ちょうどほぼ真ん中あたりに位置していました

    • フットボールを生きる街 #16 ヒーロー

      16“Tu zurda nos regaló un sueño que cambió nuestras vidas, comenzando desde entonces una de las etapas más gloriosas de nuestro club.” - De toda tu afición 「きみの左足が見せてくれた夢が、僕たちの人生を変えてしまった。あの日から、僕たちのクラブの栄光の時代が始まった。」 - きみの全てのサポーターより クラブ創立からち

      • フットボールを生きる街 #15 夕陽

        15“Quien no ha visto Sevilla, no ha visto maravilla.” 「セビージャを知らない者は、まだ何も知らない」 セビージャは、太陽の似合う街だ。太陽に愛され、太陽を愛する街だ。だからこそ、この街が太陽に別れを告げるひとときもまた、この上なく美しい。強く気高いこの街が一瞬の切なさと儚さをのぞかせる夕暮れに、何度胸を打たれたことか。 サンチェス・ピスフアンのバックスタンドから見る夕焼けが、特別に好きだ。 屋根の淵に切り取られた西

        • フットボールを生きる街 #14 アイデンティティ

          14 “No puedo ser sevillano pero sí, puedo ser sevillista.” - António Alberto Bastos Pimparel “Beto” 「わたしはセビージャで生まれることはできなかったが、セビジスタにはなれた」 彼らにとって「自分」と「他人」の線引きは、国籍や人種や言語によって行われるものではない。 愛するもの、守るべきものを同じくするなら、たとえ外国人でも、ほかにひ

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        • フットボールを生きる街
          18本

        記事

          フットボールを生きる街 #13 ダービー

          13“Las semanas previas a derbi se huele algo especial en la ciudad.” - Ángel 「ダービーを控えた街には、特別な匂いがする。」 ダービーの前の週は、両クラブのライバル関係が最も浮き彫りになる。街は、セマナ・サンタやフェリアを迎えるときと同じように浮き足立つ。 すべてのセビジスタとベティコにとって、ダービーはまさに祭りである。通りはもっぱらダービーの話題に覆いつくされるのだが、やはり両クラブのサポー

          フットボールを生きる街 #13 ダービー

          フットボールを生きる街 #12 世界について

          12“No ciudad, eres orbe. En ti se admira junto cuanto en las otras se derrama; parte de España, mas mejor que el todo.” - Fernando de Herrera 「おまえは街ではなく、世界。おまえの中では、べつの街で落ちこぼれた者もみな賞賛される。おまえはスペインの一部でありながら、そのすべてよりすばらしい。」 2016年5月5日、ヨーロッパリーグ準決

          フットボールを生きる街 #12 世界について

          フットボールを生きる街 #11 三拍子

          11“En ningún sitio suenan mejor los aplausos que en Sevilla, una de las ciudades más musicales que conozco.” - Daniel Barenboim 「セビージャより美しく手拍子が響く街はない。セビージャはわたしが知るかぎり、世界で最も音楽的な街のひとつだ。」 春、セビージャはフェリアの季節。普段は何もない更地に無数のカセタ(テント)が張られ、皆伝統衣装で着飾って、

          フットボールを生きる街 #11 三拍子

          フットボールを生きる街 #10 劇場

          10“El estadio es un espacio místico, espiritual casi.” - Carlos Ramos Cuadra 「スタジアムは神秘的な空間。霊的でさえある」 1833年にプリンシパル劇場が完成したのを皮切りに、セビージャにおける演劇文化は黄金期を迎える。 19世紀のセビージャにおいては皆、人々を見ることや、同等の身分の人々と交流することによって、自らの階級的誇りを保つことを主な目的として夜な夜な劇場に集ったという。当初はブルジョ

          フットボールを生きる街 #10 劇場

          フットボールを生きる街 #09 特別な色

          09“Sevilla tiene un color especial, Sevilla sigue teniendo su duende” - Los del Río “Sevilla tiene un color especial” セビージャには特別な色がある。 セビージャは不思議な魅力を持ち続けている。 セビージャには特別な色がある。 春に咲き乱れる色とりどりの花々。眩しいほど鮮やかな白と黄色で縁取られた数々の路地。イスラム文化が今なお息づくアルカサルの、深い藍の

          フットボールを生きる街 #09 特別な色

          フットボールを生きる街 #08 芸術の都

          08“El arte de su fútbol no tiene rival.” - Himno Centenario del Sevilla FC 「その芸術的なフットボールはほかに類を見ない」 711年の西ゴート王国の滅亡以来、700年以上にわたって、アンダルシア地方はイベリア半島を支配していたイスラム勢力の政治および文化の中心地であった。セビージャにおいては、およそ500年間この支配が継続し、以降の時代にも多様な影響を及ぼしてきた。 1364年にペドロ1世の命によ

          フットボールを生きる街 #08 芸術の都

          フットボールを生きる街 #07 ライバル

          07“Sin hablar de fútbol, puede ser la persona más parecida a ti.” - Juan 「フットボールのことを抜きにしたら、アイツは自分に一番似ている人間かもしれないな」 セビージャ FC の誕生は、1905年の出来事である。そのわずか2年後、学生が中心になり、レアル・ベティス・バロンピエの前身であるセビージャ・バロンピエが結成された。以降100年以上にわたり、セビージャの街は両者とそのサポーターによって二分されて

          フットボールを生きる街 #07 ライバル

          フットボールを生きる街 #06 黒と白

          06“Es como el blanco y el negro. Aquí no hay grises. Es así, no puedes ser de dos cosas a la vez. ” - Laura 「黒か白か、みたいなものよ。ここにはグレーが存在しない。そういうもんなのよ、一度にふたつのものにはなれないの」 悠然と流れるグアダルキビル川が、街全体をふたつの全く表情の異なる地区に分断していることに象徴されるように、セビージャは二元性の街である。セマナ・サン

          フットボールを生きる街 #06 黒と白

          フットボールを生きる街 #05 おまえに会いに

          05“Aquí no vemos un espectáculo; aquí vamos a ver a nuestra vida.” - José María 「いい試合を見るために来たりしない。おれたちは自分の人生そのものに会いに来るんだ」 スタジアムに出かけることを、彼らは、「試合を見に行く」ではなく「チームに会いに行く」と表現する。セビージャFCのイムノ・センテナリオにも、「だから今日もおまえに会いに来た (”Y es por eso que hoy ven

          フットボールを生きる街 #05 おまえに会いに

          フットボールを生きる街 #04 熱気

          04“El sur es más pasional y eso se nota a la hora de vivir el fútbol.” - Alexis 「『南』がいちばん情熱的なんだ。この街でフットボールを生きてみればわかるさ」 セビージャの街は、その猛烈な夏の暑さゆえに「アンダルシアのフライパン」と称されることがある。直射日光にさらされた街頭の気温計が 50°Cを上回ることもしばしばで、たまに吹く風は呼吸がしにくいほどの熱を帯びているし、恵みの雨など滅多に降らな

          フットボールを生きる街 #04 熱気

          フットボールを生きる街 #03 家族

          03“Aun recuerdo la primera vez que fui al Ramón Sanchéz Pizjuán como si fuera ayer.” - Alberto Escobar 「初めてスタジアムに行った日のことを、昨日のことのように覚えている。」 彼らにとって、それはクラブとの思い出であると同時に、家族の大きな背中を見上げて歩いた記憶でもある。 Laura: 父に教えられたこと。クラブを愛すること。守ること。感じること。 Ca

          フットボールを生きる街 #03 家族

          フットボールを生きる街 #02 誇り

          02 “Cuentan las lenguas antiguas que un catorce de octubre nació una ilusión. Su madre fue Sevilla y le prestó su nombre y para defenderlo le dio a una afición” - Himno Centenario del Sevilla FC 「古いことばは語る ある年の10月14日に ひとつの希望が生まれた 生みの

          フットボールを生きる街 #02 誇り