流れ星を見た。言語化できないような感情や感覚こそ大事にしたい。
オリオン座はどの時点のわたしも見ていてくれた。離れていても、わたしがあなたを気にかけてずっとおもっていること、どうかあなたに伝わりますように。

もはや会話なんかなくてよかった。その柔らかい雰囲気やペースや温度を感じられるなら。
何を知っていても、知らなくても、もうなんでもよかった。見つめ合っていられる時間があまりに尊いから。
あなたの空気に包まれて、わたしの持つ全てであなたを感じていたかった。もう、それだけでいい。
一緒に過ごす時間は臆病で繊細なわたしを癒した。きみは素敵な人なんだからと、伝わるその態度や言葉の端々。
「きみが大丈夫になるまで、私を利用すれば良いよ」とあの子が言った。そんな風に言わないでとわたしが言うこと、知っているはずなのにそう言ったのはきっと、配慮と信頼。「生きているだけで幸だよ」と笑うあの子が見る世界を、わたしも見たかった。
そして、あなたを通して見る世界を愛したかった。

もはや言葉なんかなくてもよかった。あなたのその表情で、その指先で、愛おしく思ってくれていることが伝わるから。
言葉以上に伝わる気持ちがあった。全てを把握していなくとも同じ景色を見ることで癒される傷があった。
知りたいとかわかってほしいの欲求は溶けて、ただただ心地いい波に身を委ねてしまいたくなる。
あなたと過ごす時間は、過去も未来もなくて、ただふたりの今が永遠になる。

そんな瞬間を重ねていくうちに固まる関係性がある。それは口で交わした約束よりも、揺るぎなくて絶対的なものだろうと思う。
言葉がなくとも伝わってしまうような関係性は、ふたりが今までたくさんの時間を過ごし、相手を思い遣ってきた結果でもある。
そんな風に関係を築いていきたい。約束なんかしなくてよくなりたい。信じ切ってしまいたい。

あなたの温度が心地よくて、わたしはすぐに眠ってしまう。心安らげる人と一緒にいることで心が溶けてふわふわになる。好きだなあと思う人と一緒にいることで自分の中の気持ちがあふれてまた人に優しくできる。
こんな気持ちにさせてくれるあなたにお返しがしたい。ふたりの間に起こる全ての責任は、わたしが全部引き受けるから。

あなたとの約束は、交わした時点でもう果たされていた。
わたしはもうきみ以外はいらないなんて思わない。わたしだけを必要としてくれたらなんて、思わない。
宝箱に詰めた思い出や、おもいが、さらに輝きを放って溢れ出した。

ーーー

夏が大嫌いだったわたしは、少しだけ夏を好きになった。わたしのだいすきな人が夏を愛していたから。その人が見ている夏を、わたしも見たかった。
花を好きになったのは、母親が花を愛しているからだった。お花屋さんに行くたびに、母親はひとつひとつその植物を育てることの難しさや楽しさを教えてくれる。
わたしの嫌いだったものが、興味のなかったものが、それを愛してる人のおかげで少し好きになれることが嬉しい。そうやってわたしの世界が好きなもので溢れる。

憧れだったあの子は今でも変わらずわたしの憧れで居続けてくれる。だけど昔のようにあの子になりたくて追いかけるわけではなく、わたしはわたしのままあの子の世界を覗き見て、わたしのままあの子の世界に浸りたい。

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ちゃんと好きな気持ちを持ったままで離れることができたから。わたしたちの物語はまだ終わっていない。
ずっとおもい続けられる相手がいる。そんな嬉しいことはない。だからこれからもずっとおもい続けられるように、わたしはわたしを律する。痛みを伴いながら。

大丈夫。わたし達はそんなことで壊れる関係性ではない。その距離がまた、愛を深めてくれるから。