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[詩]於母影


なあ月の見えない夜は
何を見ればいい
そんな無粋なことはもう聞かないでよ

あからさまなその態度に
不貞腐れている
子供みたいだねほら機嫌直してよ

まばゆい光の矢が解き放たれた
白い病室の中で君は怖がっていた

君の影になりたい
そうすればずっとそばにいれるから
私たちが紡いだナターシャに飾られて
彩られることを望んでいる

坂道を見ると思い出す
暑すぎた春を
転がる石ころみたいに勢いよく降ったね

宝探しみたいな日々を
繰り返していた
積み重ねるごとに研磨される宝石

フラッシュバックする憂愁の記憶が
白いシーツに覆われて隠れてしまったね

君の影になりたい
そうすればずっとそばにいれるから
私たちが紡いだナターシャに飾られて
彩られることを望んでいる

即席の感情は誇りと共に
息を吹き掛ければ飛んでしまいそう
西日に照らされた長い影を
いつまでも目でなぞった

君の影になりたい
そうすればきっと永遠になれるから
私たちが解いたワガママに狂わせて
命が消えることを恐れている
健やかな日々を望めばよかった

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