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さらば、紙よ。~SKAT電子版移行に思う~

SKATが紙じゃなくなった。第59回ぶんから電子版に移行するとのこと。電子版に移行したものが再び紙で出されることは、おそらくほぼない。今後紙が安くなり印刷コストが劇的に下がることでもあればまた検討されるかもしれないが…。

スカっとしないなあ、みたいな感想がおそらくこすり倒されていると思うが、そもそもなぜ紙でなくなったのかを考えてみたい。

SKATとは何か、といえばまあこの話を読むような人はみな知っているだろう。でも一応書いておくと「宣伝会議賞の1次通過以上の応募作が掲載される本」である。
詳しい定価があるのかどうかは知らないが、基本的に1冊2,000円ほどする。まあまあ高いのでろくに興味がない人が試しに買うような本ではない。
基本的にメインターゲットは「自分の応募作が掲載されている人」だと思う。次点で「宣伝会議賞に応募している人、応募したいと思っている人」であろう。重複する部分もあるだろうが。

そもそもSKAT自体がどれくらい売れているのだろうか。

ちなみに、最新の「SKAT20」では、1次通過以上は7102本となっている。これらの人がみんな記念に1冊買うとすると7102冊×2000円=1420万4千円となるところだが、実際には違う。各企業につき一人100点まで応募できるので、一人で複数掲載されている人も多い。しかも受賞常連レベルになってくると数十本以上掲載されている。
仮に1本だけ掲載される人と複数掲載される人の平均値を5本として、再び掲載人数だけ売れるとすると7102÷5=1420冊となり、売上も284万円となる。

この辺りまったく勝手に想像した値なので実情とはかけ離れているだろうが、「掲載点数よりはるかに売れることはなさそう」というのは言えるだろう。なんせマニアックなジャンルなのだ。書店に行っても置いてなかったり、置いてあるとしても最新のものが1冊だけ、とかの実情からすると「あんまり売れてない」というのは容易に想像できる。

ちなみに応募点数は昨年の第59回で約64万通となっているので、64万人が買うのであれば凄まじい金額になるのだが、これまた複数応募されるので変わってくる。そもそも宣伝会議自体の発行部数が55,000部だ。実売部数はもっと下がるだろうから、派生本であるSKATの部数はさらに下がってくると予想される。せいぜい雑誌の10%くらいではなかろうか(根拠なしの数字)。

最近いろんなものが高騰しているが印刷費に関しても例外ではなく、普通に考えると「あんまり売れていないところに印刷費が高くなって採算が合わなくなった」という結論に落ち着く。
しかし結構Twitter上では「紙じゃなくてガッカリ」という声が多い。やはり「自分の名前が本に印刷されている」という特別感は強いし、それをモチベーションにしていた人も多いだろう。それに加えてタイミングが悪い。昔はSKATも出るのが早くてグランプリ発表から熱の冷めないうちに出版、という感じだったのだがどんどん遅くなっていて、そこにも不満の声をよく見た。そして今年はいい加減引っ張って「おいおいもう次の募集始まるぞ」というタイミングでの電子版移行発表である。本に自分の名前が掲載されるのを楽しみにしていた人からするとまさにガッカリ。次へのやる気も削がれようというものだ。ただ、恐らく「本にならなくてガッカリした人が応募しなくなる」というマイナスを含めて考えても出版しないほうがいいほど採算が合わないのだろう。
そもそも応募数が減るかどうかは未知数なのに対して、出版したら印刷コストは確実にかかる。電子版なら在庫を抱えるリスクもないとなるとまぁ…そうなるか。

しかし64万点も応募数が集まる公募なのに関連本が売れないというのは寂しい話ではある。ただ、そもそもこの応募数がどうなのよ?とも思う。逆に多すぎることが応募ハードルではないのか?
ちなみに数年前に「1社あたりの最大応募点数」が50点から100点になったのだが、正直これは悪手だったのではないかと思う。スポンサーが減って応募点数が大幅に減ることを見越しての苦肉の策だったのだろうが、そもそも普通の人からすると1社50点の時点で膨大。それが100点となるともう別世界だ。それでも応募するガチ勢の存在にあぐらをかいていた可能性はないだろうか。
今後またスポンサーが減ったらそれこそ「1社最大200点にします」とか言いかねない。それでは一時期のマニア人気に頼って凋落したプロレスと変わらないのだ。リピーターも大事だがそれと同じくらい新規も開拓しなければ、SKATが紙に戻る可能性などそれこそゼロだろう。

ちなみにSKATが紙で出ないのを残念がり「値上げしても買うのに」という声も見た。気持ちは分かるが実際には無理だろう。例えば100円アップ程度で採算が合うのなら恐らくそうしたはずだ。5000円でもいいのであれば一冊当たりの利益が段違いだが、たぶん大半の人が買わなくなる。通過本数分だけ確実に買われるのであればいいが、それだと50本通過した人は50冊買って10万円払うはめになり応募する側なのに赤字

ということで紙としてのSKATは終わった。せいぜい今持っている数冊を大事にしていこう…って20冊出てるのに数冊しか持ってないんかい!とツッコミが入りそうだが、まあこんなのもいるのであまり売れなかったのかもしれない。

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